俺の妹がこんなに可愛いわけがない〈4〉 (電撃文庫)

【俺の妹がこんなに可愛いわけがない 4】 伏見つかさ/かんざきひろ 電撃文庫

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うん、面白かった。二巻、三巻では一巻の焼き直し、というか同型パターンの繰り返しになっていて、どうにも登場人物の行動も予定されたシナリオに縛られてか、在り方が中途半端で窮屈そうに見えていたのだけれど、今回に関してはその固定された流れから脱却し、キャラがそれぞれ伸び伸びと動いていたように見えたせいか、非常に楽しく読めたように思う。
面白いのは、一巻の感想であれだけ褒めた、桐乃の在り方をはじめとする、作品のそこかしこに漂っていた生々しさ、リアリティある妹像が、この四巻に至って見事なくらいに消え去ってるんですよね。桐乃だけじゃなく、黒猫や京介、沙織やあやせ、加奈子ら、登場するキャラクターからは、あの一巻にあった生々しさが消却されて、文字通り、<ライトノベルのキャラクター>として立脚してしまっている。
それが悪いのかと言うとそんなことはなく、スッキリとキャラクターとして描かれるようになったことで、それまでにあったどっちつかずの中途半端な気持ち悪さが消化され、さらにストーリー展開もテンプレの頚木から逃れたことで、しっかりとしたドラバタ日常コメディ、ラブコメ風味として立ち上がることに成功している。
意図してか、書いてるうちに自然にこうなったかはわかりませんけど、がんじがらめになってつぶれるより、よほどこの変転は良かったと思いますよ。なかなか途中からこうやって、根幹部分からテコ入れするのは難しいはずですから、やっぱり著者氏は元からこういうドタバタ賑やかな話は巧いんだという事なのではないでしょうか。だから、【十三番目のアリス】、バトル展開は抜きでいいから、ラブコメ中心でいいから、もういっぺんやりましょうよw

さて、内容の方ですけど、結論から言うと、京介は結局妹の事はあんまり理解できていなかったんだなあ、ということが良くわかったラストの展開。
兄や黒猫たちオタ仲間に見せている顔こそが、素の顔であり、学校の友達に見せてる顔は猫被ってる、みたいに京介は思っていたみたいだけれど、結局のところ、あの傍若無人な顔ですらも、単なる一面にすぎなかったわけだ。オタクとしての妹はよく知っているつもりでも、陸上選手としての桐乃については、何も知らなかったわけだし。彼女の中で、どんな葛藤があり、将来と未来をどんな風に見据えているか。京介は想像すらしていないし、桐乃がそういう事を考えているということすら思いもよらず、ただ見えている範囲の彼女の事しか見ていなかったわけだ。
もちろん、見ている範囲って言っても、肝心な時、大事な時、この男はよく妹の感情や気持ちを良く見てるんだけどね、感心するくらいに。そして口では何とか云いつつも、妹の良いところはちゃんと見つけ、認めている。
その意味では、この男は正しく兄貴していたのかもしれないね。妹を大事にし、慮りつつ、妹として以上の興味も関心も、桐乃には抱いていなかったんだろう。
翻って、桐乃はどうだったんだろうね。
こればっかりは、あの兄貴視点の物語からは読み取ることは難しい。
もしかしたら、桐乃本人にもわかっていなかったのかもしれない。複雑で形容しがたい、素直に表に出そうとしても、どう出していいものかわからないものだったのかもしれない。本人、ちょっとズレてる部分もあるみたいだし。
ただ、一巻の時点ならともかく、この四巻では甘えているとしか思えない態度も多々見受けられたわけで、あの自分の根幹に関わる大事な想い出を語り(語らず?)、それを預けたのを見れば、少なくとも兄貴の事を、自分の掛け替えのないものを託すに足る人と見ているのは確かで、それは普通の兄妹の関係よりもよほど踏み込んだ関係なんじゃないだろうか。
それが親愛か、それとは違う感情なのかは不明のままだけれど。

今後の展開については、傍観で。
私の場合、基本、本については受け身、というか書き手が書きたいと思うものを読みたいタイプなので、あんまりこういうのが読みたい! ってのは無いんですよね。
……と、そんな事を澄まし顔で述べている私だが、
「なんであの娘がメインヒロインじゃないんだーー!!」
などと言う類いの妄言を、しょっちゅう叫んでいる気もする。
まあ、きっと気のせいだ。

いやまあ、本気で黒猫ルートに流れるのなら、中途半端じゃ不満ですよ。麻奈美の座を本気で奪い取るくらいじゃないと。
それなら、かなり見たいかも。