鷲見ヶ原うぐいすの論証 (電撃文庫)

【鷲見ヶ原うぐいすの論証】 久住四季/カツキ 電撃文庫

Amazon
 bk1

やっばいなあ。鷲見ヶ原うぐいすの可愛さが尋常ではない。性格もひねくれてなくて、主人公を虐めたり罵倒したり足蹴にしたりすることもなく、素直に「ゆずさんゆずさん」と懐いてくる。その様子は明らかに小動物系なんだけど、頭の中までお子様というのでは全然なく、むしろ理知的で礼儀正しく落ち着いた物腰で大人びてすらいる。
さすが探偵役だけあって頭脳明晰で知識も潤沢、主人公の足りないお頭では難易度の高い文言がスラスラと出てくる賢人なんだけど、それでいて主人公への態度は胡乱どころかとてもストレート。かといって強引でも押し付けがましくなく、控え目で慎ましくそっと指を絡めてくるような、服の裾をつまんで引っ張るような好意の見せ方が、それはもうとてつもなく可愛いんですよ。もう、メチャクチャ可愛い。
主人公は例にもれずの鈍感野郎なのですが、こうも素直に好きだよ、という態度を見せられたら気づかざるを得ないし、無視もできない。どころか、見事なくらいにパックリと心奪われてしまっているわけですから、いっそ絶妙な匙加減というべきかもしれない。

さて、肝心の本編ですが、これは見事なくらいに直球なミステリー。クローズドサークルにおける殺人事件。いや、ここまでしっかりとしたミステリーの格式を整えて書く人は、ライトノベルのレーベルで書いている人では滅多にいないし、その中でも久住さんはまさに筆頭格と言えるんじゃないだろうか。むしろ、メフィストの方で書いても全く見劣りしないんじゃないかとも思われる。
わりと小じんまりした印象を受けるのは、畳みかけるようなどんでん返しが次々と起こるような展開ではなく、一つの事件の発生とその解明にじっくりと手をかけているからで、むしろ構成の完成度という点を見れば非常に精緻に整えられているとも言えるだろう。
ただ、一度この人の手掛ける、とんでもない大事件、というのを読んでみたい気持ちもある。それには、よほど分厚いページ数を確保するか、それこそ新書の方に進出するか、しかないんだろうけど。



事件に巻き込まれても冷静で取り乱すことなく対処していくんだけれど、強引な行動に出る事も破天荒な奇行に及ぶこともなく、とにかく探偵役としては珍しいくらいに真人間。事件や関係者に対する態度も変にクールだったり厳しかったりするような冷徹さは微塵もなく、非常に柔らかく優しげな物腰なんですよね。