迷い猫オーバーラン! 6 (集英社スーパーダッシュ文庫 ま 1-6)

【迷い猫オーバーラン! 6.拾った後はどうするの?】 松智洋/ぺこ スーパーダッシュ文庫

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何気にこのサブタイトル、辛辣だよなあ(苦笑
拾った後はどうするの? そう、これは迷い猫を拾った、そのあとの責任と総括のお話。そのサブタイトルが書かれたダンボールに、今回入っているのは委員長。当事者たちから一歩距離を置いた彼女の指摘は、容赦なくなあなあになりそうな巧たちの関係を浮き彫りにする。
結局、文乃たちの協定も外部からの新たな参入者の可能性の前に、もろくも崩れ去ってしまったわけですしね。ぬくぬくとしたぬるま湯の関係を、何時までも無自覚のままに続ける事は難しい。
夏帆の介入は、まさにその隙間を食いちぎるような形で行われたわけですしね。それにしても、夏帆の策謀はおっそろしかったなあ。元来の彼女の思想からしてイカレている上に、それを微塵も察知させずに正論や相手の弱い部分、迷いを突くような言動によって、示唆と教唆を繰り返し、決して前に立たず、表に出ず、自然と皆の意思を誘導していく。皆が夏帆の思惑に気付かず、まるで自発的に思い立ったかのように思いこみながら、夏帆の思い通りに動いていく様は、背筋が寒くなるような不気味さが横たわっていて、夏帆の奸智には身震いさせられた。いやあ、なかなかこんなおっそろしい女、いないっすよ。
正直、こんな女を使用人たちが慕っていたというのが、ちょっと首をかしげざるを得ない。自分たちの名前も覚えるどころか知ろうともせず、そおそも人間として捉えていないような主人に、これほど気持ちを預けられるものなんだろうか。
そんな人間としてどこか壊れている彼女の思惑に気付いた文乃が、今回は健気だったなあ。生来の性格からついつい思っている事と反対の事を口走ってしまう文乃が、必死に本音を語り、真実を叫び、自分をかなぐり捨てて間違った方向へ行こうとする巧に縋りつく姿は、胸を打つものがあった。つっかえつっかえ、慣れない言語を口にするように、思いのたけを叫ぶ文乃。それは舐めらかに虚実入り混じった言葉を紡ぎだす夏帆の口上に比べてば、見っともなく見苦しく支離滅裂で感情のままに吐き出されるだけの代物なのだけれど、それでも、それだからこそ、すべてのモヤモヤを吹き飛ばし、遠ざかろうとする足を止め、胸倉を掴まれるようにその泣き顔に引きずり込まれる、力があった。
普段はそっぽを向いてばっかりの彼女だからこそ、この必死さは魅力なんだよなあ。
誰が何と言おうと、この作品のメインヒロインは文乃で間違いないと思う。希好きだけどw

ところで、乙女姉さんは自信満々に巧が拾ってくれるって明言してたけど、今回夏帆という迷い猫を拾ったのって、巧じゃないよね?(笑
迷い猫同好会というグループそのものに心乱され、文乃の必死さに打ちのめされ、そのまま逃げだそうとした彼女を拾ったのは、確かに家康そのひと。彼の言葉こそが、彼女の混乱と迷いを吹き飛ばしたのは明らか。
散々、巧に粉かけてきた夏帆だけど、これまでの行動は本気の恋からじゃなかったことは明示されたし、そのあとも特に心ひかれた様子も見えなかったし、文乃たちの間に割って入ることはないんじゃないかなあ。それならむしろ、委員長の方が巧の事気にしてる素振りがあるし。
というより、フラグ立ててたのは何の間違いか家康の方に見えるんだけどw 色々と残念な野郎だけど、浮世離れした夏帆だとあんまり気にしなさそうだし、けっこう似合ってると思うんだけどなあ。

みんなの巧への想いが公然のものとなり、対して巧の出した答えは……。
いやいや、そういう問題じゃなくてだね、と頭を抱えたのは自分だけだろうか。その答え方はかなりせこいと思うんだが。