僕は友達が少ない (MF文庫J)

【僕は友達が少ない】 平坂読/ブリキ MF文庫J

Amazon
 bk1

これ、タイトル詐称だろう。この場合、表現に正確を期すならば、タイトルは【僕は友達が少ない】じゃなくて、【僕は友達がいない】じゃないですか。「少ない」と「いない」とでは天と地ほど実像に違いがあるぞ!?
と、このように、いないものを少ないなどと言ってごまかしてしまう残念な小人物が主人公のお話である。ああ、タイトル詐称じゃないな。実に深くも端的で分かりやすい意味のこめられた見事なタイトルじゃないか。

でも、実のところこの友達のいない隣人部の面々。多少エキセントリックで残念な部分はあるものの、性格的にはそれほど突飛な人たちじゃないんですよね……などと言ってしまえる自分は相当ラノベ業界に毒されてしまっている気もするが。でも、漫画やラノベに出てくるキャラクターとしては小鷹にしても夜空にしても、星奈にしてもそれほど突出した変人というわけでもないのである……いや、エア友達とか作っちゃってる時点でも相当突出して残念な気もしてきたが。エア友達はヤバいよなあ、うんヤバいよなあ。
まあ兎も角、この連中が凡百の残念な人々と違う点は、なにより自分たちに友達がいない事を気にしてしまっている点なのだろう。なにしろ、他の作品に出てくる性格的にアレな連中は、性格がアレなせいか自分の周りに友達がいなくても気にしない場合が多かったり、なぜか親友がいたり、友達が多かったりするパターンが多いからな。
残念な性格なくせに友達がいないのを気にしてしまうというのは、なんとも残念な話である。
ちなみに主人公の小鷹はかなり普通の人間に見えるけどね。普通に見えてアレだったりするケースもあるけど、彼の場合は単純に間が悪かったとしか考えられない、まったくの常識人であり普通人。というか、周りのクラスメイトたちの方が少々おかしいんじゃないのか、これ。
まあ、第一印象は外見と言うのは大事なんだよね。身嗜みはきっちり整えておきましょう。ギャルゲプレイして、女の子の攻略無視して親友エンドに突っ込んで大満足してしまっているあたり、どれだけ寂しいんだ、とちょっとマジで泣けてきたけどな。

そんなこんなで友達のいない子たちが友達を作ろうと作った隣人部。そこに集った、現在三名の部員。羽瀬川小鷹、三日月夜空、柏崎星奈の三人。さらに、後後楠幸村を含めて何人か入ってくる事になるみたいだけど、とりあえずは前者三名がメインとなってくるみたい。なんともくだらなく、ばかばかしく、そして切実で一生懸命な三人のやり取りがなんとも笑えて、なんとも微笑ましい。彼らの友達づくり大作戦というのは、もう空回り以前に回ってすらいない状態で、いったい何やってんだこいつら、仲いいな、って感じなんだが、そのドタバタっぷりがなぜだかポカポカと温かいんですよね。賑やかさにぬくもりが感じられる。
私、この作者の作品はデビュー当初に何冊か手を出してるんですが、もっと小賢しさというか、筋立て、話の流れ、キャラクターの挙動に作者の計算高さが透けて見えて、どうにも楽しめなかった記憶があるんですよね。
それでしばらく遠ざかっていたのですが、ラノベ部の評判を聞いて再び手に取ってみて、これが以前までの印象とガラッと変わってて、凄く面白かった。その面白さが、より奔放に伸び伸びとした感じでこの作品からは伝わってくるんですよね。あとがき読むと、わりと趣味満載自由に描いてる、みたいなことを書いてらっしゃるんですが、私はこの人の場合、変にカッチリ考えて書くよりも、この作品みたいに伸び伸びと好き勝手に書いてる方が性に合うのかも。
ただ、あの変名。元ネタのまんま名前出すのは難しいかもしれないけど、ああいう安易な名前の変え方させられると、どうも、ねえ(苦笑
PSとかくらいなら、別にそのままの名前で出しても良さそうなもんなのに。
まあ、あれはマズそうだけどな。聖剣の刀鍛冶とか。いいんですか、あれ。同じレーベルの作品をエロゲにしてしまって。めっちゃ笑ったわw
しかもエロシーンのテキスト、朗読させられてるし。星奈と夜空ってガチンコで渡り合う関係かと思ったら、段々と夜空に好い様に弄られる星奈、という関係になってって、可哀想と言うか爆笑というか。
これで星奈さん、ひどいアダナで呼ばれるの、アダナで呼ばれるの初めてだからってひそかに喜んでたり、何気に夜空と喧嘩するの楽しんでたりと、高飛車な表面とは裏腹の素の顔が妙に初心っぽいのがやたら可愛らしいんですよね。
これで、プールのイベントとかでめっちゃ女の子の顔とか見せてくれてるし、ヒロインとして一気にポイント稼いできてるんだよなあ。
一方で、夜空の方は彼女の方でものすごいアドバンテージをひそかに抱えてるみたいだし。というか、あれ。実は最初から気づいてて小鷹のこと引っ張ったのか? エア友達を見られたのは偶然だろうけど、いやそれも偶然ではないという可能性もあるのか。
ただ、夜空や星奈との関係って、真の友達を手に入れるぜ、という皆の目的からすると、絶対どっかで相容れぬ形でぶつかるはずなんだよなあ。
仲良くなればなるほど、爆弾の導火線は短くなっていくわけだ。何気に、意地が悪いぞ、これ。


とはいえ、ワタクシ的に一番のクリティカルヒットだったのは、妹ちゃんだけどな!!
なにこの子、マジ可愛らしいんですけど! うわーーー、頭撫でてー。
普段の成り切り邪気眼中に病ですらも、一生懸命なりきってる、って感じで、うんうん頑張れー、と幼稚園でハンディカメラ持ってお遊戯撮影している親御さん的な気分で応援したくなる可愛らしさ。
出来れば、擦れずに育ってほしいねえ。くぅ、「あんちゃん!」の呼び方にこれほどクる瞬間がこようとは。
あんまり素の口調で喋るシーンないけど、これって大分か博多あたりの方言なんだろうか。
しかし、小鷹は妹と二人暮らしというのもあるんだろうけど、かなりしっかりお兄ちゃんしてるんだな。シスコンとは程遠い落ち着いた接し方だけど、よく面倒見てるし構いすぎず突き放さず、妹の奇行も変に弄らず、ムキになって治そうとせず、かといって真面目には取り合わず、でもそれなりには相手をしてやっているという、絶妙のバランス感覚。
なかなかスペック高いんだよなあ、小鷹って。いいじゃんもう、友達できなくったってw