創立!? 三ツ星生徒会3 それでも恋3は終われない

【創立!? 三ツ星生徒会 3.それでも恋3は終われない】 佐々原史緒/大場陽炎 ファミ通文庫

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学園祭目前、大錯綜の多重三角関係ラブコメ第3巻!!

「学校に、行きたくない」夏休み、陽菜に告白→玉砕した恵は憂鬱な2学期を迎えた。陽菜との関係はもちろんギクシャク……でもアレ? 陽菜と鳥越もギクシャクしてるのはなぜ? 一方で鳥越もまどかも向坂水穂(恵×金魚神=性別不詳!)への恋心を隠さない。そんな絡まった恋模様の中、突然文化祭の日程が一カ月も前倒しに。全校大混乱、黒プニ増量&生徒会の仕事も大激増! さらにその陰で蠢く"陰謀"も明らかに!? 多重三角関係、波乱の第3巻!!



この作品の主人公、向坂恵ってなにが凄いのか、三巻まで読み切っても分かんないんですよね。特別な才能もなければ、弁が立つわけでも事務処理能力が高いわけでも、頭の回転が速いわけでもない。本当にただの凡人。いつも愚痴ってるわ、失敗してへこんでるわ、自分の言動を後悔してウジウジしてるわ、と彼の内面を常に目の当たりにしていると、精神的に強いとか言う事も出来ない。むしろ、打たれ弱い。
咄嗟に八つ当たりしてしまうこともあれば、大人げない態度をとってしまう事もある。そうしてやってしまってから、後で頭を抱えてまたへこむ。
間違いなく特別で優秀で才気あふれる鳥越や葛城まどかと比べれば、どうしようもないくらい平凡なんですよ。
ところが、その鳥越もまどかも、恵には一目置いている。前巻で戻ってきてくれた同じ星一の三谷や池部さんも恵に信を置き、物凄く期待している。他の生徒会メンバーも、今となっては何だかんだと恵の事を大いに認めてるんですよね。
ほんと、言葉にして評しようとすると何も出てこないような主人公なんだけど、何か特別なものを持ってたり感じさせたりする所なんて一切ないんだけど。
まったくもって平凡そのものなんだけど。
この文化祭一か月前倒し、という緊急事態の学内大パニックの中で示した恵の働きと言うのは……やっぱり地味で、特別な何かをした、というような派手な事は何もないんだけど。
でも、言葉に変換しがたいんだけれども、確かに鳥越やまどかが一目置き、みんなの信望を集めるにたる、何かがあるんですよね。
皆が心理的に切羽詰まり、追い詰められ、余裕をなくしている中で、恵も例にもれず同じように余裕なんか一切なく、それどころか四月陽菜に振られたショックもあって、精神的にはボロボロのはずなんだけど、それでも仕事を投げ出さず、堅実にこなしていくんですよね。
必死に一生懸命に頑張っているのは皆、同じなんだけど、皆がその自分の一生懸命さに振り回されて、自分たちの足元や周囲の些細な出来事に目を配ることが出来なくなっている中で、恵だけは必死に慌ててバタバタとなりながらも、細かいところまで目を配り、他人の話を蔑ろにせずちゃんと聞き、物事を一つ一つ着実にこなしていくわけです。
凡人だからだろうか、劇的に幾つもの案件をバッサリと片付けるような真似なんて到底できないからこそ、目の前につみあがったものを一つ一つ丁寧に処理していくその地味さ、堅実さが、皆がギリギリの瀬戸際の中で慌てふためいている中で、際立って見えてくる。
前々から、恵のそんな所は同僚である生徒会の面々からは認められていたわけだけど、修羅場となった文化祭準備の中でも、一切ぶれることなく揺るがず、普段以上の堅実な仕事ぶりを見せた、というのはやっぱり凄いことなんだろうなあ。
それまで接点がなかった一般生徒たちにも、恵の存在感は伝わりだしているわけだし。
その誠実さ、真摯さは、確かに彼の得難い資質であり、皆の信望が集まってくる要因なんだろう。
恵の愚痴っぽくへたれまくった内面見てると、なかなか分かりにくいんだけどねえ(苦笑

一方で、玉砕してしまった恋模様の方は、何故だか振った陽菜と、鳥越がギスギスしてしまい、恵の内心は穏やかではないわけで。これ、忙しさにかまける状況じゃなかったら、みんなメンタル的にかなりアップアップな事になってたんじゃないかなあ。その意味では、この修羅場も良かったのかもしれないけど。
目の前でイチャイチャされたらたまらんけど、だからと言って上手くいかないのを見せつけられても、キツいわなあ、恵は。
それでいて、幼なじみ特有の特別な雰囲気や、余人の割り込む余地のない絆を折あるごとに見せつけられてるわけだから、恵の立場は悲痛そのもの。
まさしくこれ、ギャルゲの親友ポディションそのものだよなあ(苦笑
失恋模様のなんという苦しさよ、痛みの辛さよ、てなもんである。
でも、この文化祭の背景で起こっていた鳥越の家庭環境にまつわる問題と、それに対する陽菜の決死の行動。陽菜のピンチに取り乱しながら叫ばれた鳥越の本音。二人の関係は、どう見てもお似合いで、陽菜の一途さは眩しいくらいで、この二人はやっぱりこの二人だからこそいい、という感じなんですよね。恵には可哀想なんだけど。
陽菜のあんな想いを見せられたらねえ。鳥越も、めちゃめちゃイイヤツだし。こいつ、まったく完璧に主人公キャラクタだもんなあ。しかもあんな堅物ひねくれ者のドジっ娘ヒロイン属性持ちだと、嫌味も感じられないし。
病院の一室での一幕は、恵の立場からするとトドメの一撃。告白して振られた時よりも決定的な、完膚なきまでの失恋だったわけだけど、第三者の立場から見ると、ほんとによかったねえ、という甘酸っぱくも微笑ましい気持ちにさせられたわけで。
恵の悲痛な思いと、鳥越や陽菜側。そのどちらにも傾かず、異なる共感を同時に抱かさせる作者のバランス感覚は驚嘆に値する。両者の気持ちが伝わってくるだけに、複雑なんだけど、妙に清々しいんですよね。

まあ、この二人はくっつくだろうな、と予想はしていたので、ラストの展開もまた、ある程度は推測できていたわけだけど。
水穂さんを女性と誤解していた鳥越と違って、まどかの方は男性と認識していたから、齟齬はそれほどじゃなかったわけだしねえ。
でも、今のところ恵は失恋したばかりで他を見る余裕はないだろうし、まどかの方も真実を知って収まりがつくかどうか。
どうやらあと一冊でシリーズ完結するみたいだけど、はたしてこの整理されはじめた多角関係がどう決着するのか。もう一、二波乱があるのか。ううっ、これは完結編が待ち遠しい!