薔薇のマリア  12.夜に乱雲花々乱れ (角川スニーカー文庫)

【薔薇のマリア 12.夜に乱雲花々乱れ】 十文字青/BUNBUN 角川スニーカー文庫

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君を、この腕で抱いておけばよかった。

ZOOの新メンバー、ルーシー。彼の父親は、あのSIXなのか。マリアたちが息の根を止めたはずのSIXが、生きていたというのか。ルーシーにどう接するべきか戸惑うマリア。そして、真偽を確かめるために第八区へと向かい、SIXらしき男と対峙するアジアン。一方、SIXへの復讐を誓う、≪秩序の番人(モラル・キーパーズ)≫の副長ヨハンは……。「君を一度、この腕で抱けばよかった」――。最も過酷な最後の戦いが幕を開ける! 慟哭の新章、第2弾登場!!


SIX再臨!!
巻を十二にまで数えるようになり、名実ともに長編シリーズとなった薔薇マリだけれど、物語の中で幾多登場した敵の中でも、もっとも凶悪でもっとも邪悪で最悪の鬼畜外道だった男こそSIX。
薔薇のマリアという作品において、まさに悪徳の象徴であり、多くの好漢たちを惨殺し、無数の人々に慟哭の涙を流させ、消えない傷跡を残した最大の大敵であった男こそSIX。
思えば、彼奴がエルデンから退場して以降、この無法都市であったエルデンから、悪徳の気配がごっそりと消え去ったような気がするのは、はたして気のせいだろうか。たった一人の男の存在が、街そのものの在り様そのものを一変させる。それほどの影響力を備えていた男が帰ってきたのだ。エルデンの街の雰囲気には暗雲たちこめ、甘くえずくような腐臭が漂い始める。

ただ、SIXの再登場が即座に倒すべき大敵の帰還という定路をとらないのは捻ってるよなあ。ZOOの新人であるルーシーの父親がSIXではないかという疑惑。ルーシーが語っていた父親の姿は、ちょっと変人入ってるみたいな所はともかくとして、あのSIXの実像とはまるで重ならない。
加えて、腕一本を残して消し墨と化したはずのSIXがなぜ、復活してきたのか。そして、トマトクンと、随分古くから旧知であるらしいという一面。どうやら、トマトクンの正体や秘められた謎にも、これは踏み込んでいく展開になるのではないだろうか。どうも、トマトクンの身体にも異変が起こりつつあるみたいだし。

アジアンは結局、独りで動いているのか。マリアのアジアンへの危惧は的確で、何気によくアジアンのこと見てるよなあ、というのがこっそり伝わってくる。前に邪険にしていたばかりの頃に比べれば、表面上はともかく、内面はやたらと変わっちゃったよなあ。ルーシーが二人のやり取りを見てムッとしているのも仕方ないぞ。
イチャイチャ、といえばユリカと飛燕のそれは、もう素晴らしい領域に。飛燕の誕生日をユリカが密かに祝ってあげてたらしいとか、二人でこっそりデートみたいな事を何度もやってるみたいとか。知らないうちに親密度がえらいことに。飛燕はもう彼氏だー、なんて公言しちゃってるし、ユリカは否定しつつもその態度ときたら巻を重ねるごとに甘くなっている始末。
いいんだいいんだ、ユリカさんはそうやって幸せになればいいんだよー。飛燕はバカだけど、馬鹿であるが故にイイやつなんだし。
そのユリカさん、今回はカラーの口絵でのおめかしがもう、とんでもないことに。絵師のBUNBUNさんがもう神がかってる。可愛いとかそういうレベルじゃねーっ。このあたりはもう、作中のマリアと物凄い勢いでシンクロ。シンクロニティィ!!

久々にベアトリーチェの様子も見えて、非常に満足。少女だった彼女も熟成した美女へと変貌しつつあるのねー。凛として可憐だった彼女だけど、今の充実した振る舞いには以前のような芯の堅さが拭い去られ、いい意味で柔らかくなった気がするなあ。
でも、その彼女もかつてのSIXとの戦いで大きな心の傷を負った身の上。彼女が彼奴に負わされた恥辱と屈辱と恐怖の記憶は、未だ彼女の心身を苛み続けているはずであり、あの男の復活が彼女にどんな影響を及ぼすのか。
マリアを守るのはアジアンであるべきなのかもしれないけど、ベアトリーチェを守る騎士は、やっぱりマリアであって欲しいんですけどね。
ヨハンも、どうも父を喪ったあと、気負ったまま来ているみたいだしなあ。この子には、どうもまだまだ化ける要素が多々見受けられるので、この事件を壁を乗り越えるための踏み台にしてほしいところだけど。もう悲恋は充分なんだから、惚れあった男女は上手い事行って欲しいよ。ちなみに、眼鏡は好し。