シャギードッグIV 人形の鎮魂歌~reborn~ (GA文庫 な 2-4)

【シャギードッグ ? 人形の鎮魂歌〜reborn〜】 七尾あきら/宮城 GA文庫

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どれだけ待たされるかと危惧してたら、たった三ヶ月で出てくれましたよ。良かったーー。
大介をはじめ、登場人物各人に持ちあがっていたそれぞれの問題だけど、思いのほか華麗に片付いてしまったなあ。それぞれかなり面倒な事になっていただけに、それがスルスルと絡まり合った糸がほどけていくみたいに収まっていったのは、いっそ痛快ですらあった。
なんにせよ、主人公である大介の葛藤がこうも見事に解消され、彼の中に確固とした自分の在り方というのが見つかったというのは非常に大きい。今まで大介って、自分の事にかかりっきりで主人公のくせに周りの問題に手出しするような余裕が全然なかったんだもんなあ。
彼に限らず、まりんの葛藤、沙織のヒミツ、亜夜のトラウマ、これらが綺麗に片付けられてしまったのは、最大の案件であるオズにまつわるエトセトラに取り掛かるための態勢を整えるため、とも考えられるけど。と言う事は、次回からはいよいよオズの物語になるのかな。

不思議とこの作品って、どこか群像劇っぽい所があるんですよね。でっかい事件が一つあって、それにみんなで取り組むのではなく、それぞれが抱える問題をそれぞれが独自に解決していっているからなんだろうか。大介の問題についても、結局オズもまりんも深くは介入しなかったものなあ、最後まで。ところが、それがハブられている、という感じがしないのもまた不思議。亜夜によって事情を知らされたうえで、敢えて静観に徹したまりんや、放置を宣言したオズのように、みんな意図的に介入を控えてるんですよね。それでいて、無視しているのでも傍観しているのでもなく、ありのままの大介を受け入れる姿勢を絶えず見せている。それが、事態の中心から疎外されているという雰囲気を塗りつぶし、見守り支えてる雰囲気になってるんですよね。この辺、いいなあ、と思う。
その大介に直接的に喝を入れることになったのは、以前この人妖怪だと嘯いた桂翁。まいった、今回はもうこの人が全部持って行ってしまったかも。
超然としてどこか仙人じみた浮世離れした所のあったじい様だけど、この人がどれだけ人間として壊れ、破綻しているのかをこれでもかと提示したうえで、その化け物であるはずの人から伝わってくるのは、広大無辺の無償の愛。
大介にしても、カイにしても、この桂翁が与えてくれていた愛情の大きさに気付いた時の、男泣きに泣く姿が、もう無茶苦茶胸をつかれました。とてつもなく偉大で、とてつもなく凄い人だからこそ、どこか遠い様な感じがしていたけど、気づかなかっただけで、他人とは表し方が異次元すぎただけで、この爺さんは何時だって自分の懐に入ってしまった子供たちに、自分をなげうつように愛情を与えていたわけだ。久々に、震えるほど感動させられてしまいました。なんかねえ、こういうの、弱いんだ。桂翁は何一つ言動を変えていないんですけどね、人を知るというのは、こういうことを言うんかねえ。
結局、桂翁にしてもカイにしても、その本質は救いようのないバトルマニア。大介もまた、葛藤の末に受け入れた自分の真の望み、偽りのない生き方は、同じ道、戦うことが好きだということ。
自分、これまで戦闘狂の類いというのはもっとシンプルで単純で悩みの少ない人種だと思ってたんだけど、この物語を読んでいると、ただそれだけの事を見つけ、自分の本質だと受け入れる事にもこれだけ悩み、苦しみ、多大な覚悟を必要とし、その上で選び取り勝ち取る生きざまの一つとして、とても尊いもののように思えてくるのが、少し不思議だ。
西平の事を含めて、怒りや怨み、憎悪といった負の感情に苛まれていた関係が、戦うことが好きだ、という深い業を受け入れることで、純粋一途な透明な熱へと昇華していく様は、大介という人間が一回りもふたまわりも大きくなっていく感じがして、凄かったなあ。
それでいて、彼そのものとしては何も変わっていないんですよね。学校に戻っても、そのままとして受けいれられる。変化であり不変である、か。

昇華といえば、まさかここで亜夜先生の内面が整頓されるとは思わんかったなあ。以前からそこはかとなく匂わす所はあったので、まさかとは思ってたんだけど、この人昔はもろに内向的で臆病なくらい大人しいタイプの少女だったのか。どうにも、魔女と呼ばれるほどの知勇才色兼備のやり手のキャリアウーマンにしては、妙に奥手で野暮ったい所があるなーとは思ってたんだが。
この人、なんだかんだと無条件に優しすぎて、見捨てなきゃならない部分を無視できない面のある人だから、異局の刑事という冷酷非情な行為を粛々と実行しなきゃならない立場と、その性格に挟まれて泥沼にはまりそうな危うい所があったんだけど、今回の一件でちょっとは何とかなるんだろうか。ほんとにイイ人なだけに、悪い目にはあって欲しくはないんだが。

畳みかけるように、沙織の秘密まで一気に明かされ、クライマックスに事態を進行させてきたのには驚いた。前回まで散々待たせたのをうっぷん晴らしするみたいだな、ほんとに。それだけタメに溜めてたのかもしれないけど。
ここで、まりんが存在感を見せつける。この娘は散々葛藤や懊悩に浸り込むくせに、ここぞという時は一瞬たりとも迷わないんだよなあ。
わりと迷走しがちな大介や、そもそも各個とした意思を持たないオズたちにとって、この娘の存在は掛け替えのない指針になってるんですよね。
そもそもまりんって、確かに格闘プログラムも持ってないし、沙織のように遺伝子改良もされてない。オズのようなサイキックの類いも持ってない。でも、一般人というには特殊すぎるんですよねえ。むしろ、一般人から逸脱したかなりの天才肌。美術部でその片鱗を如何なく見せてるように、そのメンタリティは芸術家のそれとして非常にトンでる部分があるんだよなあ。その彼女が日常の象徴かと言うと、ちょっと首の傾げどころ。女の子としては、まあパーソナリティはとても普通なんだろうけど。いや、みんなで出かけるにしてもあんなカッコで来る所は自分で自覚してるように普通の女の子としても、ちょっとアレかw

オズは結局、今回は最後まで頬杖ついて眺めてるみたいな感じだったけど、この子も絶対変わってきてるよなあ。また、退屈だのなんだの言ってるけど、さりげない所で変化は強調されてるし。
服飾の色の傾向とか。なんにせよ、まりんに甘いのは間違いないw


周りの問題を片づけた以上、まず以降の物語はオズを中心に回っていくんだろうけど、さて今度こそ続きはいつになりますことやら。
このサイバーパンクにして伝奇モノ、幻想モノっぽいのがまじりあった、これぞ七尾あきらの中身そのもの! という感じのこのシリーズ、ほんとに大好きなので、できればドシドシ出してほしい所ですけど。
そうかー、そういえば四巻以上出るのは初めてなんだ。古墳バスターもちゃっちゃと終わっちゃったもんなあ。風姫も二巻だけだったし。
このまま、長く続いて欲しいなあ。