ピクシー・ワークス (電撃文庫)

【ピクシー・ワークス】 南井大介/バーニア600 電撃文庫

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すっげええ。もう、これは凄いとしか言いようがない。この作者、何を考えてこんなとんでもない常軌を逸したキャラクターどもを造形したんだ!?
もう、メチャクチャ面白かった。何が面白かったって、コイツラのイカレっぷりですよ。
女子高生女子高生って、こいつらそんな【女子高生】なんて肩書きで語っていい存在じゃないでしょう!? 女子高生なんて甘酸っぱい響きによって結ばれるような人間じゃないよ、こいつらは。こいつらは偶々今高校生というだけで女子高校生という枠組みの範疇に入ってしまっているだけの、化け物どもですよ。こんなのを女子高生なんていったら、普通の女子高生に失礼だ。
女子高生が戦闘機を直して飛ばす青春モノ、なんて風に要約したらこの作品の姿形がまるで違うものになってしまう。
彼女らが優秀だから、尋常ならざる能力を持ってるからそう言ってるんじゃないですよ。能力の問題ではなく、彼女らの人間性とか内面の問題。
青春!? 青春!? 冗談じゃない。これがそんなお話か。
ハッキリ言って、これは頭のネジが二、三本抜けた狂人にして人格破綻者、社会不適合者にして紛うことなきマジもんの悪党、すなわちマッドサイエンティストどもが、己が趣味と好奇心と冒険心と享楽、欲望のままに踊り狂う、魔女の宴、ワルプルギスの夜の物語。

あまりに優秀でありすぎるが故に、彼女たちの視野は自分たちの見える範囲で完結してしまっている。そこには思想も俗欲も公共心も社会に対するモラルもなく、自分と手の届く範囲の仲間たちのためだけに、そのウルトラハイスペックな能力は発揮されるのだ。
彼女らのやってることは、否定しようのないテロルであり、犯罪そのものにも関わらず、彼女らの中に罪悪感というのは欠片もない。
信念や郷愁めいたものも皆無なんですよね。芹香がヴァルティに空に行こうとするのは、死んだ父を身近に感じたいためか、と問われて、一切そんな事を考えていなかった事に気がついて衝撃を受けるシーンがあるんですけど、それが特に象徴的かな。こういうシーンを挟んでくるあたり、彼女らの破綻した部分と言うのはかなり意図的に組まれている気配がうかがえる。
空恐ろしい事に、自らの身体的・社会的危険性をまったく考慮に入れないこの試みを、彼女らはまったくあっさりと娯楽のため、と明言してるですよね。
それがいっそ、痛快であるのが、この物語の面白い所。人によっては、耐えがたい嫌悪を覚えるかもしれないけど。
個人的には、決して無邪気に無思慮無自覚にこういう連中を書いているのではなく、自覚的にイカレ壊れた悪党として描いているようなので、気にはならないけど。
まあ、色々と舐めて生きてる連中であるのは確か。そのうち、痛烈に痛い目を見そうではある。実際、この作中でも痛い目見かけてるし。そうそう甘いもんじゃねえぞゴラァ、というのが怖ぁい大人の人たちによって爪先で鳩尾蹴りあげられるみたいに、一発食らってるし。
その程度で凝りそうにないのも、また確かなんだけど。悪い連中だねえ。悪党だねえ。

環太平洋戦争と呼ばれた戦争から15年。どうやら総力戦ではなかったものの、それに近い大戦争であったようで、インフラその他はほぼ回復しているようではあっても、まだ<戦後>がリアルタイムで進行しているような時代であるが故に、寄って立つべき国家という柱が威信をなくし、社会そのものが撹拌され希薄となり、枠組みとしての意義を取り戻すことがまだ出来ていないような時代だからこそ、このような子供たちが生まれてきたのかもしれないなあ。
なんにせよ、この子らがとてもじゃないけど平和な世界で平和に暮らしていけるような連中でない事は確かだ。この子らはあまりにナチュラルに社会の規範を踏み越えすぎている。秩序が崩壊した世界、それこそ乱世だとか世紀末だとか、そういう世界でこそ勇躍しそうなイカレた連中だもんな。

なんにせよ、面白かった。一言で言うなれば、痛快である。オーヴァー?