火の国、風の国物語7  緑姫憂愁 (富士見ファンタジア文庫)

【火の国、風の国物語 7.緑姫憂愁】 師走トオル/光崎瑠衣 富士見ファンタジア文庫

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ミレスデンの巫女姫の能力が、予想をはるかに上回るもので引っ繰り返ったわっ!!
てっきり、【風の戦乙女】たるミーアと同じ系列の精霊魔法――この作品では黒魔法になるのか――だと思ってたんですよね。だって、ミーアのそれでもたった一人で一個軍に大打撃を与えられるようなものじゃないですか。大地神の類いに仕える巫女さまだったので、局地地震などを駆使するのかと想像してたんですよね。これだと、野戦では敵軍を混乱に陥れて蹴散らすに容易ですし、籠城戦ともなれば一気に崩してしまえるじゃないですか。だから、それでも十分強力だと考えていたのに……そんなレベルじゃなかったという。
あれは、ミレスデン軍の大将が――この人、猛将の類いだけど決して油断や増長で誤判断を下すタイプじゃなく、内面は非常に冷静沈着な将帥なんだが、それでも自分たちに負ける要素がない、と考えていたのも当然だよ。
これまで随分といろんなファンタジー戦記のたぐいを読んできたと思うんだけど、大軍同士がぶつかり合う会戦の中で、未だかつてこれほど反則的なものが投入されたのは見たことがないですよ!!

もう、なんというかあれか。あれがモデルなのか!?

<ワンダと巨像>

大きさ、正確ではないが20間と描写されているので、おおよそ頭頂高まで30メートルくらい? 殆どあれじゃない? サイコガンダムくらいあるんじゃないのか?(調べたらサイコガンダムは40メートルでした、デカっ)
先日までお台場で起立していた1/1サイズ・ガンダムが約18メートルだから、さらにそこから10メートル高く、横幅に至っては体高と同じかそれ以上はあるんではないだろうか、というデカさ。
実際アレを見た人は、実感として大きさが想像できるんじゃないだろうか。ちなみに私は見てないけど。

んなもん、剣と槍と弓しか持たない生身の軍勢が太刀打ちできるもんじゃないだろう。せめて、大砲でもあればわからないが、この作品では砲の類いは存在していない。大砲があっても、榴弾でなければよほど大量の砲門を集中しないと効果なさそうだなあ。

そしてそれに立ち向かうアレスの勇姿たるや……この光景はもう伝説を飛び越えて、神話の域に達しているよなあ。戦功がどうの、というレベルじゃないですよ。
俗人の領域であくせくしているフィリップくんが、なんだかかわいそうになってくるくらいに、立っている位置が違ってる。アレと功績で張り合おうというのが、そもそもの間違いなんだろうけど。
今回は、ハインツ王太子にもイイ所を片っ端から取り上げられて、傲慢にして傲岸であるはずが、ものすごく弱気になって愚痴ってるフィリップくんに、思わず同情してしまったなあ(苦笑
ハインツ王太子、あれを意図的にやってるならかなり性格悪そうだし、意識的じゃないのなら天然ということで、それはそれでタチが悪い。絶妙のタイミングでの口の出し方や論議の誘導の仕方とか、強引さが欠片もないくせに指揮棒を振るように流れを自分のいいように動かしてしまう、あの聡明なやり口は妹のクラウディアそっくりで、あの妹をしてこの兄あり。この兄妹は紛れもない傑物だというのがよくわかった。危険なのは、あまりに出来の良さを見せつけてしまったことなんでしょうけど。貴族の力が大きく王権が小さい権力構造の中で、名君の資質なんてものは排除される要因以外のなにものでもないですからね。実際、フィリップの動向は追い詰められてかなり危険なものになってきていますし。

危険な要素と言えば、ジェレイドもかなり歪んできてるよなあ。前巻で危惧していた彼は傲慢になっているんじゃないか、という不安は、彼自身が自分は酔っているんじゃないだろうか、と自覚し、絶えず罪悪感に心身を蝕まれるほどに苛まれている事がわかってある程度解消されたのですが、どうやらジェレイド氏はその辺に耐えられなくなってきてるんじゃないかな、という兆候が。
解放軍のもう一人の要であるミーアは、もう完全にアレスに魅入られはじめてるし、いざというとき解放軍がどうなるのか。義妹ちゃんのエレナはエレナで、なんか個人的に解放軍内部に影響力及ぼし始めてるみたいだしw

ミレスデン軍こそ撤退に追い込んだものの、未だ北の列強の侵攻は止まず、また国内でも不穏な動きが起こり始め、英雄として確固たる存在感を見せつけたアレスも、ただ目の前の敵を打ち破るだけの戦いだけに没頭できる時期は、もうすぐ終わりを迎えつつあるのかもしれない。解放軍との戦い、そしてミレスデンの姫巫女との束の間の対話を通じて、非常に単純な正義の論理に寄っていたアレスの内面も徐々に変わり始めており、また一瞬とは言え騎士としての立場をかなぐり捨て、クラウディアへの許されざる想いを迸らせた事で、果たして彼が今後どうなっていくのか。結構、予断を許さなくなってきているのかも。
クラウディアはクラウディアで、今回はずっと懊悩しっぱなしだったけど、果たして何について悩みに沈んでいたのか……。
シレーネのあれは意外だったけど。この人、アレスをもっと冷めた目で見てるのかと思ってたw
こうして見ると、いつの間にかアレスの周りもにぎわいだしたことで。
ベアトリスに迫られた時のことで悶々としているあたり、アレスって案外ムッツリなんじゃないかと思える所もあるので、クラウディアに一途なのは間違いないけど、こいつ結構アッサリ色仕掛けとか落ちそうなんだよなあ(苦笑