疾走(はし)れ、撃て!〈3〉 (MF文庫J)

【疾走れ、撃て! 3】 神野オキナ/refeia  MF文庫J

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表紙は一体誰なのか!? と思ってたら、もしやの太刀風准将大抜擢。
特徴である眼帯を外していたのと、海軍さんの制服と言えばついつい真っ白な第二種軍装を連想してしまうので、太刀風准将とは思わんかったなあ。二巻でちょいちょいっと登場したばかりの人をこうして表紙に持ってくるあたり、よほど作者的にも全面プッシュしたいキャラなんだろうか。
最近、作者の他作品を読んでても、わりとお姉さんな女性が重用されている節もあるし。
しかし、このシリーズの海軍は6割が女性なのかー。まさにガールズネイヴィー。これは日本海軍のみならず、世界的な傾向だそうなのでいささか羨ましい。でも、これって海軍と陸軍の対立、余計に深まっちゃうような気もするなあ。ただ、この第三巻では海軍に招待された理宇と虎紅の二人は終始フレンドリーに賓客として扱われているので、組織間の対立による嫌がらせなどに神経をとがらせる必要もなく、ポワポワーとした気分で読めましたね。最初の懇談会で海軍士官!! というそれらしい人たちでなく、同世代の若い連中ばっかり集めて歓迎してくれた太刀風准将の気遣いのお陰もあるんだろうけど。
まあ、作中でも語られているように、海軍と陸軍の対立は実際この世界でもあるようだけど。

まー、最初こそ賓客扱いだったものの、すぐさま太刀風姐さまによるうら若き少年少女を弄って遊ぼうタイムに入るわけですが。
この姉ちゃん、あまりに下世話すぎるww 仮にも現場たたき上げで将官一歩手前まで二十代で駆け上がった海軍最高の指揮官にして、海軍の未来を担う海中戦闘機構想の開発を任されているという俊英のくせに、何というおばちゃん気質か。
そのくせ、自分の恋愛ごととなると純情一途の箱入り娘と化してしまうんだから、なんともはや。

それでも、女の子だらけの海軍に、水着水着おっぱいおっぱい、というある意味凄まじい状況のもとに居ながら、それほどキャピキャピと浮ついた雰囲気にならないのは、作者の筆の特徴なんでしょう。
海軍への出向という形で二人きりになり、普段よりも上官と部下という立場から解放されて近い距離で接しあえる理宇と虎紅。そこに、在日米軍司令官の父親の力を借りて、空母<ふげん>に乗り込んでくるミズキ。三角関係直接対決、な構図になってるわけですが、それほど強烈に鞘当てをするわけではなく、虎紅とミズキ、それぞれの想い、理宇への気持ちを持て余し、自分以外の女の子との触れ合う距離に悶々とする様子を、どこかしっとりとした空気で描いているんですよね。
この性急すぎない丁寧で慎重な恋心の募る様子の描き方は、神野オキナさんの特徴みたいになってきた感じがする。自分なんかは、こういうゆったりとした空気は大好きなんですけどね。
ミズキも、わざわざ親父の力を借りて乗り込んでくるくらいだから、攻めて攻めて攻めまくるのかと思ったら、何となく女性だらけの周りの雰囲気に圧倒されて足踏みしちゃってるし。気が強いわりに、臆病で心配性なんだよな、ミズキって。その点を理解して彼女に三枚のお札ならぬ、恋愛手引書三通を渡している鳥越深冬は得難い親友、というかなにこの魔法使い。ここぞという時に開けろ、と言われて渡された手紙の中身が、あまりに状況に対して的確すぎて、吹いた(笑
虎紅は虎紅でコンプレックスがいっぱいあって、理宇に対して決定的な態度をとれないでいるあたり、虎紅にしてもミズキにしてもじれったいよなあ。二人とも、互いに隣の芝は青い状態だし。それだけ、お互いの事をよく把握している、という意味にも通じるんだろうけど。理宇にちょっかい出してくる海軍連中に対して共同戦線張ったときの息の合い方は大したものだったし。恋敵、という意味でもこの二人、段々と戦友になってきてるのかも。
でも、最後。あそこでしっかりと理宇の前で泣きじゃくって見せたミズキは、悪友としての自分でも部下として戦場での相棒としての自分でもなく、一人の女の子としての自分の素の顔を見せられた、という意味で、一歩アドバンテージは取れたんじゃないでしょうか。残念ながら、自分の精神的な在り様であって、理宇との関係という意味ではないですけど。

ラブコメ主体で動いていたと思われたこの三巻ですが、クライマックスにて、とてつもない大きな動きが。あれは、ミズキが特別だったんじゃ全然ないんですよね。あくまで、理宇の資質だったわけか。
そういえば、格納庫でもつれ合った際、理宇の血が偶然ミズキの口に入ってしまっていましたっけ。
ミズキのあれは、果たして一時的なものなのか、それとも完全に覚醒してしまったのか。
どちらにせよ、単なる魔導士官の魔術の補助媒体である「杖」でしかなかったはずの存在が、ああいう機能を持っているとなると。ただでさえ、魔導士官の存在は貴重なはずだから、こりゃあ偉い事になりそうだ。