逆理の魔女 (集英社スーパーダッシュ文庫 ゆ 6-1)

【逆理の魔女】 雪野静/石川沙絵 スーパーダッシュ文庫

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このタイトル、単純に【逆理】と呼ばれる特殊な魔術大系を操る魔女さんがヒロインだから、というものなんだけど、この作品の巻き込まれ型異能バトルもののテンプレートを真逆に反転したような内容をみると、色々とこのタイトルも意味深に思えてくる罠(笑

いや、もうなんというか、ひっくり返って笑いましたがな。
平凡な(ちょっと特殊な才能あり)一般人の主人公が、魔術師であるちょいとエキセントリックな性格のヒロインと出会う事で、異能の世界に巻き込まれる、というありがちな展開と見せかけて……実はどう見ても巻き込まれてしまったのはヒロインの魔女の側!!(笑
魔術師という特別な存在であり、異能の世界に身を置く人間でありつつも、あくまでそのパーソナリティはかなり普通の(まともというべきか)少女であり、しかもドジッ娘属性まで付与している魔女・逆月雨坏が、戦慄を覚えるほどのぶっとんだキャラクターである主人公姉弟(一般人)と知り合ってしまったのが運の尽き。
異界の存在が見える、という常人とは多少違う力を持っているけれども、主人公のマシロと姉のソラの力は本当にただ見えるだけ。なのだが、その性格がもう凄まじいまでに常軌を逸している。
特にお姉ちゃんのソラに至っては、奇人変人いったいどちらが一般人なのか分からなくなるくらいのエキセントリック。そんな彼女に気に入られてしまった雨坏は、徹底的に振り回され、弄り倒され、翻弄され、強引に引っ張りまわされと、その姿は、おいおいもう程々にしておいてやれよ、とそっと救いの手を差し伸べたくなるほど。
でも、これまで立場もあってまともに人付き合いもなかった雨坏さんは、なんだかんだと人間関係の距離感をスッ飛ばしてベタベタとひっついてくるソラや、飄々と傍らに立ってくれるマシロに、転げ落ちるように心を許してしまっていくわけです。飼い馴らされているようにも見えるんだけどw

にしても、ホントに、このお姉ちゃんは凄まじい。お姉ちゃん無双状態である。
途中、雨坏の持つ珍しい逆理の力を狙って、魔術師がつけ狙ってくる展開があるんだけど、そこでお姉ちゃんのとった行動が凄まじいの一言。異能とか、一般人の世界とは隔絶した魔術師の領域とか、普通の人間が手も足も出ない世界観、というこの手の作品の定番のルールをガン無視(笑
魔術とか超能力とか異能力とか全く使わず関係なしに、もはや蹂躙! としか言いようのない圧倒的なまでの容赦ないやり口で、魔術師をブチ倒すお姉さまの恐ろしい事恐ろしい事。
ハッキリ言ってこの人を一般人と言ってしまうのは大いなる間違いなんだろうけど。イカレた天才ってやつは、特別な能力があろうがなかろうが関係なし、ただソラはソラであるだけで、魔術師だろうが怪異だろうが関係なく、無敵に無双に踏みつけ蹴飛ばし吹き飛ばしていくわけだ。
そんな人間竜巻みたいなソラを、何だかんだと上手くコントロールしているマシロにとって、雨坏みたいな照れ屋で意地っ張りですぐ顔に考えてる事が出る素直な娘なんざ、簡単に手玉に取れるんだろうけど、その真っすぐさは好感度高かったんだろうなあ。いちいち言葉責めして弄って遊ぶくせに、彼女の事おそろしく優しくて手厚く扱ってるんですよね。
この姉と弟の雨坏への野放図なまでの親愛が妙に心地いいんですよね。傍若無人な振る舞いをしているように見せて、決して雨坏を傷つける言動はとらないし、何くれとなく彼女の事を庇護し光のあたる場所に導くように引っ張ってるし。そんな二人の親愛に戸惑い、半ば目を回しながらも、雨坏の寂しさに傷つき縮こまっていた心が解き解され、ときめきウキウキと弾んでいく様子がまた、実に微笑ましい作品でした。
うん、とにかくお姉ちゃんの存在そのものが痛快で、弟くんの飄々として性格の悪い言動が愉快で、そんな二人に振り回されて右往左往して顔を真っ赤にしている雨坏が愛い、なんとも気持ちの良いお話でした。
うんうん、面白かった!!