ばけてろ  成仏って、したほうがいいですよね? (角川スニーカー文庫 182-51)

【ばけてろ 成仏って、したほうがいいですよね?】 十文字青/みことあけみ 角川スニーカー文庫

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こ、これはまた、主人公がかの【バカとテストと召喚獣】のムッツリーニを上回る逸材だな!!
なんというムッツリスケベエw
エロビの収集が密かな趣味、というのは序の口で(というか、コイツの年齢でそんなもん買い集めてたらダメだろうw)、そもそもムッツリスケベというのは露骨に、もしくはあけっぴろげに自分の性欲をアピールするものではなく、自分はまったくそんな女の子のエッチな事になんか興味がありませんよー、などと取り澄ました顔をしながら、その実内心は鼻息を荒くしてガツガツとエッチな事に喰いついている輩の事を云うのです。
而して、主人公の景敦はというと陰気でやる気なさげなぶっきらぼう、他人を寄せ付けまいとする硬質の狷介さを身にまとった少年なのですが、この野郎、女なんぞあっちいけ、と言わんばかりのそっけない態度をとりながら、霊感のない人間でも霊を見れるようになる方法と称して、ヒロインのおっぱいやおしりをつついたり、自室の秘蔵のDVDを発見されると、拾ったんだ、と言い訳したり、ヒラヒラと翻るスカートからチラチラと見え隠れする下着を、必死に身を低くして覗こうとしたり、ともう握手して肩を叩いてやりたくなるほど見事なムッツリスケベ野郎なのでした。仕方ないじゃない、ナイーブで繊細なお年頃の男の子なんだから(笑

そんな主人公の景敦は、中卒で高校にも行かず、社会とのつながりを絶ってどこか隠遁しているような生活を送っている霊媒師。ただし、霊感はなく肝心の幽霊とか怪異が見えない、というインチキ寸前の代物。でも、金銭には困っていなさそうで、ろくでもない商売をしているという風でもないんですよね。見えないなりに、怪異への対処法はちゃんとしていますし。ただがめつくない分、仕事へのやる気は皆無に等しい。何をするにも面倒くさそうだし。仕事が雑ってわけでもないんですけどね。メルカと千夜子の依頼には何だかんだと真面目に対応してましたし、千夜子が怪異に襲われた時は積極的に助けてくれましたし。人間関係を疎んでいるというよりも、そもそも対人関係に慣れてないのかな。話すとき目を合わそうとしないのも、最初は呪術関係の問題なのかと思ってたら、単に目を合わして話すのが苦手なだけみたいだし。その分、真っすぐ相手の目を見て話すときは真剣度が伝わってくるのですが。もしかしたら、千夜子もメルカもこの真っすぐ見られた時に、コロっと言ったのかも。別段、大して魅力がある振る舞いではないのですけど、ヒロイン二人ともわりと易そうだしw
何だかんだと、遊びに来るメルカたちを邪険にしながら、追い返したりしないわけですし、もしかしたら人恋しい想いをしていたのかも。
ただ、せっかく女の子が遊びに来てるのに、特に何をするでもなくダラダラとテレビ見てるだけ、という対人スキルの無さに思わず拍手(笑 いやもう、女の子が遊びに来てもどうしたらいいのかわからない、というのは分かるんですが、なんとかしろよw
メルカも千夜子も積極的に何かしようと提案もせず、この妙に居たたまれない時間をしばらくとはいえ大人しく甘受してるあたり、相当なんですけど。メルカがキレなければ、千夜子あたりはそのまま無言でテレビ見てたんじゃないのか?(苦笑

かなり惚けたゆるーい空気で転がっていくこんなラブコメって、作者が手がけるのは初めてなんじゃないのかなあ。というか、そもそもラブコメ自体初めてなんじゃないだろうか。この人がこれまで描いてきたラブって、どちらかというと渾身一途な純愛系統ばっかりだったし、そこにコメディの要素が入るのはなかったような。
その意味では新境地だし、結構会話の方に分量割いているのも意図して違う書き方をしている雰囲気。普段はもっと内面の独り言が多いというか、ページ埋め尽くしてるもんね。
自称宇宙人なるミポルなんてキャラまで登場して(これがまた、幼馴染という……)、相当アレなおばかラブコメっぽい要素が揃ってるんですけど、それでもやっぱり十文字青というのは消えてない、とでも言うんでしょうか。妙に生っぽい雰囲気というか空気な、人間関係の距離感といい、お気楽とは程遠そうな主人公のシガラミやら、頭をからっぽにして楽しむタイプのドタバタものでも、恋心の機微に手に汗握るばかりに傾注できるラブものでもなさそう。この不気味でふと視界の途切れた先に得体の知れない恐ろしいものが蠢いていそうな不安感は、正しくオカルトものとしての道を踏襲しているのかもしれない。
その、一つ間違えればまた陰惨になりそうな境界を、メルカや千夜子らの惚けた個性の強いキャラクターでグイグイと押し渡っているのが、この作品の面白いところなんでしょう。
ラブコメとしても、ニヤニヤできるところが多いし、まだ見ぬ十文字青の境地が見れそうで、続きが楽しみでした。