放課後の魔術師  (5)スパイラル・メッセージ (角川スニーカー文庫 208-5)

【放課後の魔術師 5.スパイラル・メッセージ】 土屋つかさ/ふゆの春秋 角川スニーカー文庫

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そろそろ<完結した円環>の権限を嵩に着た高圧的な態度が我慢ならなくなってきた。これじゃあ、<円環>は魔術師たちを支配する組織で、【蒼】などの氏族はそこに従属させられているようなものじゃないか。
最近の円環のやり口は陰険かつ魔術師一人一人の尊厳を無視して道具のように扱うような感じで、非常に不愉快極まりない。敵対関係にある<鴉>などより余程苛立ちを募らせられる。その挙句に伊代へのあの仕打ち。さらに、彼女がジェシカシステムに組み込まれる原因となった事件には円環の関与すら疑われる始末。ここまでくると、安芸たちにとって円環の存在は害にこそなれ、益になるものは何もないんじゃないかとすら思えてくる。さすがに円環に対して【蒼】は距離を置いているみたいだけれど、今回の査察の件といいジェシカシステムへの介入といい、その影響力は結局無視できないみたいだし、明快な敵相手だと正面から実力行使だろうと権謀術数だろうと戦えるんだろうけど、なまじ味方な分、性質が悪いんだよなあ。
もうここまで蔑ろにされたんなら、円環から離脱しても無理からんところだと思うんだが、実社会との関わり合いを考えるとそれも出来ないんだろうなあ。安芸たちがしているように距離を置くのがギリギリなのかもしれない。それでも、ストレスはたまる一方なんだが。
こうも円環の性質の悪さが明らかになってくると、仄香が必死に自分たちが魔術師であるという事実をひた隠しにしてきた理由も段々と見えてくる。どうやら、両親と仄香は前々から自分たちが【紅】の血族である事は知っていたみたいだし、その上で身の上を隠してたとなると、ねえ。

今回、さらに周藤絵里子の前夫も登場。なんで別れたのかと前々から気にはなってたんだが、単なる愛情の喪失によるものではなく、政治的組織的な複雑な背景があったっぽいなあ。お互い、不仲になっているように見えて、妙に未練が残ってるっぽい描写もあるし。特にお姉ちゃん、ブラコンのくせに元旦那のこと随分と気にしてるじゃないか。名刺の一件を見ると、もしかしたら敵意むき出しの不仲も、そもそも離婚すらもある程度お互いの合意があったんじゃないかという疑いも湧き出てくる所。もっとも、お互いよく話し合った結果とかちゃんと以心伝心している、という風ではないけれど。

今回の再査察を通じて、一番テンパってたのは対象者である遥よりもむしろ安芸の方な感じだったなあ。安芸との関係に悩んで落ち込んだりもしていたけど、何だかんだと遥は根底の所で揺るがず、ピンチに陥ったら逆に安芸をどっしりと信頼して落ち着いてすらいたし。それに対して、円環の圧力にピリピリしていた安芸の方は、過剰なくらいに遥の事を心配していて……いや、そこまで気にしてるなら遥の気持ちにも気付くぐらいしてやれよ、と思うんだがこの鈍感マイスターは無視なんだろうな、そういう察するのは(苦笑
ただ、相手の気持ちに気づくのは無理でも、安芸から遥に向かう矢印の方は着実に濃度が増している感もあるし、関係は進んでるんだろうなあ。とりあえず斎条先生グッドジョブ♪

斎条先生と言えば、この人も立ち位置がかなり不鮮明なんだよなあ。
円環からの監視者のように見えて、鴉からの工作員という線も捨てがたく、もしかしたらまったくの第三勢力の手の者という想像もできなくもない。ただこれだけ露骨に怪しい人物にも関わらず、彼が安芸や遥に対して喋る事柄はだいたい嘘はなさそうなんですよね。特に自分の感情や友人たちに対する想いとか。
前巻での恋人への想いは本当に嘘もないみたいだし、弟弟子である安芸に対する気遣いや本当の弟を見るような優しい視線に偽りはなさそうだし。
この明確な身分の怪しさと、内面の明快な真摯さが捩れに捩れてて、この斎条という人、何かと気になる面白い人になってるんですよね。
今後も動向が気になる処。
さて、次回は英国への修学旅行とな!? 仄香が付いていけないじゃん……って、この娘はいつも電話越しだから、舞台がイギリスだろうと関係ないのか。


追記:ボードゲーム喫茶、滅茶苦茶面白そうではあるんだが、客の回転率は最悪だろうな、これw