付喪堂骨董店 6―“不思議”取り扱います (電撃文庫 お 9-9)

【“不思議”取り扱います 付喪堂骨董店 6】 御堂彰彦/タケシマサトシ 電撃文庫

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この刻也という男は、最初の最初から。アンティークというものに関わる以前から、本当に大した男だったんだなあ。何故彼がアンティークの所持者となりながら、その魔力に囚われない理由がよくわかった。もしかして、彼の、自分や自分に関わる人間の死を未来視でき、それを覆せる、というアンティークの能力、実はアンティークの能力なのは未来視できるまでで、その確定されたはずの未来を覆せる、というのはそもそも刻也という人間に備わった力だったんじゃないだろうか、と咲と刻也が初めてであった時のエピソードを読んで思ったんですけどね。あの時、まだ刻也はアンティークを持っていなかったわけだし。

この巻にてようやく咲の秘められた過去が明らかになったわけですけど、正直ここまで刻也が咲の人生に深く関わっていたとは予想していませんでした。てっきり、二人の出会いは付喪堂骨董店での事で、咲が先にバイトで勤めていた所に、刻也が付喪堂骨董店に偶然出入りするようになって、という今考えるとテンプレそのままだよなー、という流れで出会っていたものだと思い込んでたんですよね。少なくとも、刻也はまだ咲の過去について深く関わるような立場にいないものだと。
だからこそ、前の5巻の感想で二人の間には隔たれた断絶めいたものがあるかのように書いてしまったわけです。
しかし、この二人の出会いのエピソードを読む限り、刻也は既に咲の過去に深く関わり、彼女の人生の岐路に大きく影響を与えているわけです。こうなってくると、咲が抱える大きな闇の要素には、刻也に対する負い目のようなものも含まれてくるんですよね。それこそが、もしかしたら咲に一歩踏み込むことをためらわせる要因だったのかもしれないのか。
なるほど、そうなると五巻で彼が咲に示した強引すぎるほどの態度は、考えてみるならばまさしく正解そのものだったと言えるのか。優しいけれど、傲慢だ、という咲のセリフに共感を覚え、いささか強引過ぎると言う印象があったんだが、こりゃあこの際、咲の意見は却下してもいいですね。刻也には咲に対して傲慢に振舞う理由も資格も覚悟もあるんだから。あそこで腰を引かず、強引にでも咲の手を掴んだ彼の選択は勇敢であり、また正しかったと思いたい。

ただここで、二人の過去と現在の立ち位置が明らかになったことで、逆に未来への見通しが一気に不穏な空気を帯びてきたんですよね。
アンティークを蒐集し、それらを使って次々と事件を引き起こす謎の二人の男女。その対決を通じて、アンティークという不思議な品物の持つ本質的な在り様というものが明らかになっていくのですが、そこで浮き彫りになるアンティークというものへのそれぞれのスタンス。
おそらく初めてと言っていいはずの、付喪堂骨董店のぐうたら店主・都和子が直接現場に出張っての、語られるはアンティークを集める理由。それほど積極的に集めているわけではなさそうだった彼女の(偽物を集めて喜んでたくらいですしね)語る理由はどこか切実さを含んだ誠実なもので、その時点では何の疑いも抱かず、今までにない直接的な悪意による危地に陥った咲と刻也を、彼女は単純に助けに来てくれたものだと、思ったんですが。

この巻の最後らへんに唐突に挟まれた幕間が、全部吹き飛ばしていきましたよ。
なんてこったい。
思えば、これまでアンティークを求める人々にばらまいていたのが誰なのか、という問題がずっとこの物語には横たわっていたんですね。
てっきり、付喪堂骨董店の姉妹店みたいなものがあって、そちらではアンティークの拡散を、そして都和子の営む付喪堂骨董店では姉妹店がばらまいたアンティークの収集に努めているものだとばかり思っていたけれど………これは疑惑・疑念が募るばかりですよ。
まさかまさかの展開に至っての、次回は最終巻。咲と刻也、二人の行く末と同時に、今後の展開がまったく読めないクライマックスが気になって仕方ない。早々の発刊を待ち望むばかりだが、次で終わりというのも寂しいんだよなあ。二人のイチャイチャラブラブが見られなくなるというのも、また。