スクランブル・ウィザード5 (HJ文庫)

【スクランブル・ウィザード 5】 すえばしけん/かぼちゃ HJ文庫

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シリーズ五冊目は短編集。これまで事件事件と殺伐とした展開が続いていたので、ここで一息付いたのはいい構成ではないでしょうか。幕間の何気ない日常の元にいる彼らを描くことで、登場人物の新たな側面に焦点を当てたり、掘り下げが叶いますし。その辺を意識してか、これまで登場したキャラクターを満遍なく短編の主人公として扱ってますしね。
幼い暴君として君臨していた駿介の成長や、十郎との出会いの回想から能勢の在りようなんかにも手を伸ばしていますし、まだまだ色々と描きたい事があるんだろうなあ、というか書けば書くほど描きたい事が増えてってるんだろうなあ、というのがなんとなく伝わってきますね。
能勢と行動を共にするアデルなんかも、今後は重要なキャラクターになってきそうなんですよね。彼女、4巻では意外な行動とってるし、単純な敵として考えるには段々と複雑な内面を獲得しつつある。能勢が自分とカノジョが似ていると感じたことを要にして、またぞろ波及してきそうな感じだ。十郎と能勢の関係というのも、仲が良いとか親密とは程遠いそっけない関係にも関わらず、妙にお互いの存在に引っ張られてる感じのする、なかなか奇妙な関係なんですよね。これも今後が興味深い関係だなあ。
魔法士として世間の注目を浴びるようになってしまった月子。魔法士の社会的立場を向上させるために、敢えて世間の目に自分を晒し、衆目の中を歩む覚悟を決めた月子。小学生でありながら、長い長いこの先の人生の行く先を決めてしまったこの子は、えらいとかそういうのを通り越して、敬服すら覚える。自分が歩む道がどれほど過酷で辛いものかを聡明な彼女ははっきりと自覚しているんですよね。元々は決して気の強くはない繊細なこの子が、その選択を毅然と選んだわけだから、ホント大したもんだわ。その簡単に手折れそうなカノジョの心を頑強な大木と成して支えているのは、十郎の存在そのもので、彼はその重みを本当に自覚しているのか。他人の人生を生涯背負うのは、大変だぞう。もっとも、見てる限りでは充分以上に十郎は支えとしての役割を果たしていると言えるけど。ただ、男性としてではなく先生として、というよりも師としてって感じかな、あの雰囲気では。
ぶっちゃけ、ロリコンの気が一切皆無な成人男性からしたら、小学生の女の子なんて異性として認識しろというほうが無理なんだよね。ゆえに、最後の月子のあの行動には、ぶったまげたんじゃないのか、十郎くんは(苦笑
ろくでもない祖父に駒として利用されているとはいえ、頼もしい父親に守られ、自分がどんな立場に立っても離れずにいてくれる親友たちに囲まれ、何より大切な人に生涯傍にいると誓ってもらえた今の月子には、覚悟によって据わった度胸と勇気が備わって、女の子としても一段も二段も成長してしまって、いやはや。

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