偽りのドラグーン 2 (電撃文庫 み 6-25)

【偽りのドラグーン 2】 三上延/椎名優 電撃文庫

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ジャンはイイ奴なのだけれど、粗忽で直情的で考えなしという悪い意味で頭が悪い奴でもあるんですよね。三上さんの手がける作品の主人公っていい意味でも悪い意味でも思慮深いタイプが多かったので、この手の頭の悪いタイプの主人公は初めてなんじゃないだろうか。ただ頭は悪くても愚鈍ではないんですよね。物覚えは悪いし短慮だし結構根に持つタイプだけれど、自分が悪いと理解さえすれば反省するのに躊躇わず、失敗をちゃんと糧に出来、縺れた人間関係にもキチンと踏み込める。その辺は好感度高いんですよね。
すぐに調子に乗る傾向もあるけれど、図に乗って友情をぶち壊しにするようなひどいことはなかったし。
欠点はとても多いんだけれど、生まれ育ちの鬱屈した環境を思えば、根っこの部分が太く真っ直ぐ通っていると言ってイイ。
ある意味その真逆を行っているのがあの生徒会長か。なまじ元の能力が高い分他人を見下し、自分を高めるのではなく他人を貶めることで自分の優位性を確認しようと言う根性が頂けないし、自分の非や失敗を認めないことで、どんどん抜け出せない泥沼に嵌まっていきながら、それすらも認めず順調に破滅の道を辿っている。でも、こういうやからに限って、自分の破滅に他人を巻き込むんですよね、それも盛大に。小物は小物なんですけど、虫唾が走る下種野郎というタイプなので、こいつの末路こそ盛大にやってほしいところです。

一巻はジャンの無能すぎる能力と性格、ヒロインであるティアナの何を考えているか分からない辛らつな言動のお陰でなんか読んでてもストレスたまるばかりだったんですが、一巻の終わりで二人が決定的に決裂した結果、逆にティアナの不鮮明だった内面が良く見えてきたことで、俄然面白くなってきました。
なにより、ティアナとジャンが昔逢っていたというのは、決定的な要素だよなあ。さすがに幼馴染とは言えないけれど、過去に面識があるとないとではだいぶ違うでしょう。
ティアナが抱えたままだった先の戦争の傷跡と罪科。それはなるほど、彼女が戦うことを恐れるには充分な理由だ。ダレが悪いって、ティアナが悪いに決まっているのだけれど。彼女も昔はジャンと同じタイプの粗忽モノだったのか。だからと言って今が良くなったとはいえないんだけれど、逃げ回っているとはいえ自分の過去に痛みを感じ続けているというのは悪いことじゃないんだろう。その源泉が罪悪感であり罪への恐れであろうと、他人の名前を覚えようとしたり、パートナーとしてかつて戦場で心をつぶされた時に出会った少年を選んだのは、なんだかんだと前に向かって歩いていることでもあるんだし。
そんな彼女の真実を知ったとき、ジャンが放った宣言は、なるほど彼が主人公だと思わせるに充分な、背負う覚悟を持った一言だった。
あとは、彼女が彼に預けるばかりでなく、一緒に背負えるだけの強さを手に入れることなんだろうけれど、それはこれからのパートナー関係次第なんでしょう。なんにせよ、これで二人の間に隠し事は何もなくなり、本心からつながることの出来た二人の関係は劇的に進展しそう。逆にまた、劇的に衝突しかねない可能性もあるけれど。二人とも、頭悪いしなあ。
頭悪いといえば、クリスはクリスで完全に色ボケしてるんじゃないかw 二巻の彼女は、かなり危険なことに巻き込まれ自分の身も危ういことになってるのに、ジャンのことばっかり考えてるし。一巻のときはまだ普通に男の子に見えてたのに、この巻の彼女はもう乙女モード真っ盛りじゃないですか。とはいえ、報われそうにはないんだけど。
竜と人間とが異性として付き合うのはタブーとされているらしいので、ティアナとジャンとの間には恋愛に関しては大きな壁が立ち塞がっているので、そちらから攻めるケースはありそうだけれど。

ラストはまた、驚愕の新事実が明らかに。一巻でもそうだったけど、何気に巻末に仰天物が用意されてるな、このシリーズ。さすがにこれは、全然予想していなかった。そうする理由が全然見当たらないもんなあ。どうも彼の目的も含めて、この竜が存在する世界そのものに、物語の根幹が関わってきそうな感じ。そういえば、三上さんの作品でこれだけスケールが大きいのも初めてだなあ。わりと今までは地元密着的なものだったし。現代怪異モノと異世界ファンタジーの違いはあるんだろうけど。