SH@PPLE―しゃっぷる―(7) (富士見ファンタジア文庫)

【SH@PPLE-しゃっぷる- 7】 竹岡葉月/よう太 富士見ファンタジア文庫

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ああっ、こうなっちゃったかーーっ。これはもう、タイミングが悪かったとしか言いようが無い。もしくは、運命的とすら言っていいのかも。お互いに好意を抱きあい、それを両者がちゃんと誤解無く知ることが出来た。それは歴とした両想いのはずなのに、それでも恋が成就しない事はあるんだなあ。いまさらのように、この作品がラブコメであると同時に繊細でガラス細工のように脆く美しい思春期の男女の恋情の機微を描いた青春恋愛劇だというのを思い知らされたようである。
然れども、雪国と蜜の恋路が交わらなかったのは、タイミングが合わなかったのであり、舞姫の余計な手出しがあったからこそなんだけれど、そもそも雪国が舞姫に変装して女子高に忍び込むというこすっからい手段を取った事がそもそもの原因なんですよね。結局彼は自分から自分の正体を明かすことなく最後まで来てしまった。自分が何をしてきたかを言わないまま、自分の想いだけを告げてしまった。そこに、この失恋の要因が横たわっている。
でも、哀しい事にその卑劣ともいえる手段を実行に移さなければ、二人の距離はそもそも縮まることすらなかったとも言える。その手段を実行に移したからこそ、失恋まで行けたのだとも言えてしまうのである。なんとも、ココロ苦しい話じゃないか。
となると、彼の一番大きな失敗はやはり、告白の順番を間違えた事なんだろう。蜜を信じて、自分のすべてを曝け出す事が出来なかった事がそもそもの失敗だったのだろう。残念でかわいそうだが、やはり自業自得だったのだ。

意外だったのが、正体が露見した際にそれほど大騒動にならなかったことか。主要人物にしかバレなかったとはいえ、蜜にしても胡蝶の宮にしてもわりとすんなり受け入れていたのは驚きだった。もっと怒ってもいいと思うのに。雪国と舞姫が結果的に何度も入れ替わりを繰り返すことで彼女らの心を弄んだ事は紛れもない事実なのに。
舞姫も今回は酷かったというか、やらかしちゃったよなあ、これは。舞姫のブラコンが原因と言うより、これは舞姫が恋というものを知らないからこそ無思慮に行えてしまえた暴挙というべきなんだろうけど。だからこそ、あそこは会長が止めておかないと。手伝ってどうするんですかー。恋する少女を応援する魔法使いとしては、これまた致命的な失敗を犯してしまったものです。薄々間違いを悟ってはいたみたいだし、普段の彼ならこういうミスはしないと思うんだけど、誰かに恋する女の子ではなく自分が恋する女の子に目が眩んでしまったが故の錯誤ということか。

そして運命的とも言える、ラストの鳥子との遭遇。この展開にはアッと驚かされると同時に、ガツンと頭をぶん殴られたような衝撃に襲われた。ここで、あんな劇的な失恋があった直後に、こういう展開を持ってくるかーー。普通の失恋の後なら、ただの噛ませにしか見えないところだけれど、これは正直どうなるかまったくわかんなくなってきた。
もしかしたらこの作品、こっから素晴らしい失恋の物語になるのかも。素晴らしい失恋の物語って変な言い回しだけど、ただの失意とネガのスパイラルじゃなくて、失恋もまた人を成長させる大切な経験であり、また恋というものが素晴らしいものだと実感させてくれるような、そんな話という意味での、失恋の物語が始まるんじゃないのかなあ、と思ってみたり。

今回、誰しもがあたふたとみっともなくおぼれていた中で、一人胡蝶の宮の凛として優美な立ち振る舞いに、心奪われました。言わば、この人こそが失恋第一号なんだよなあ。雪国への想いにキッパリと決着をつけたこの人の余裕と優しさ、温かみ。一回り人間が大きくなったような柔らかな存在感は、弱りきった周りの人たちを包み込み、行くべき道を見失った子らの背を、毅然と支え、そっと押すその姿。今、間違いなく一番魅力的なのはこの人ですね。


6巻感想