竜王女は天に舞う―One-seventh Dragon Princess (MF文庫 J) (MF文庫J)

【竜王女は天に舞う One‐seventh Dragon Princess】 北元あきの/近衛乙嗣 MF文庫J

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これはファンタジーとしては非常に強固な土台と骨格で形成された質実剛健な出来栄えの作品ですねえ。基礎部分がしっかしていると、あとで幾らでも手を広げられるからなあ。その点で言えば安易に外装ばかりを今時のテンプレで装ったものに比べて、将来における信頼性で言うならとても堅牢と言える。
もちろんこれ、堅実すぎて地味だと言っている訳じゃない。キャラクターもすぐに下ネタに走る幼馴染に傲岸不遜で律儀モノのお姫様、傍若無人にして自由奔放な歌姫と、ヒロイン陣はツブが揃ってるし、脇を固める陣容も、キレモノで友情に厚い親友と、やる気なさげだけど飛び切り有能なこわもての先生と、隙無く配置されている。こうしたキャラクターの配置と運用、ストーリー展開に基づいた細かい操作性には、非常に細心の注意を払っている様子が随所に伺え、無駄のない脚本にはとても感心させられた。
丹念に練り上げられ、設定として組み込まれた魔術のシステムも、世界観の構築から登場人物それぞれの行動原理や目的、動機、さらには戦闘描写にも極めてロジカルに反映されていて、それがそのまま読み応え、歯ごたえとなって返ってくるのが心地よいくらい。
主人公についても慎重に構築されていて、驚くくらい無能すぎず、特別すぎず、程よく普通に有能な魔術士となっているんですよね。最後まで切り札としてカードを伏せていた能力も、それ単体では特別すごいものじゃなかったもんなあ。
ストーリー展開も無駄なく、とんとんとリズム良く進展し、かと言って直線過ぎず、折を見て急展開、予想もしなかった真相の発覚、と飽きさせる余裕を与えず進んでいくのは、もう巧妙の一言。
続き物として広げる余地を押さえながら、この一冊でやれるだけやってやる、という新人賞を本気でとってやるぞ、という意気込みが、この徹底したロジカルな作り方から透けて見えてきて、思わずニヤニヤ。
普通計算づくの作品だと、あとの発展の余地が見えてこない完璧だけど窮屈というイメージが付きまとうものだけど、これは一冊の完成度と将来性を並列して仕上げている点は、大したものと言ってよいかと。
ただ、多少詰め込みすぎた感はあるかな。ルノアとリラの話を一つの話でやっているので、ルノアがメインヒロインだ! という印象が薄れてしまってるし。最後の展開なんぞ、明らかにリラがメインだもんな。普通だとこれ、リラは第二巻で登場してこの展開、となっててもおかしくないくらいだし。
と、普通の範疇で語るのもつまらないか。話自体は過不足無く、この一冊で見事に広がり収束しているわけだし。
ヴァルハラ舞踏会のルールの盲点を突くようなこの展開も、将来の話の広げ方次第では幾らでも面白くなりそうだ。それに、これは穿った見方だけど、シャルロッテもあれ、幼馴染では収まらん逸材かもですよw