カンピオーネ!〈5〉剣の巫女 (集英社スーパーダッシュ文庫)

【カンピオーネ! 5.剣の巫女】 丈月城/シコルスキー スーパーダッシュ文庫

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サブタイトル並びに表紙絵からして祐理と新キャラの恵那の回と見せかけて、これ完全にエリカがメインの回でしたね。
具体的に言うと、今後どれだけハーレム要員が増えようと奥の院の支配権を握る第一夫人はエリカ様ですよ、というのが確定的になったという所でしょうか。確定的になった、というより自明だったものをよりはっきりと明確化させた、というべきか。
前回、偶々別行動になってしまった所を、リリアナに護堂の懐に飛び込まれて、出し抜かれてしまったエリカだけれど、あれは本当に偶々だったというのが今回、良く分かった。ぶっちゃけ、リリアナではエリカには太刀打ちできんわ、これ(苦笑
祐理も今回、護堂との曖昧な関係に躊躇っていた部分を振り切って、はっきりと護堂に女として寄り添う決意を固めて、以前までのぎこちなさを取り払って護堂に自然に侍るようになったけど、彼女、エリカを押しのけて寵愛を独占する気はサラサラなさそうだもんなあ。ちゃんとエリカが護堂にとって大事な存在だと認めたうえで、自分は二号さんで充分という心持でいるし、エリカもことさら祐理を可愛がって護堂の傍に置こうとしているのは能力的な相性もそうだけど、この弁えた性格に基づく所が大きいんだろう。
その点、まったく空気読めてないのがリリアナさん(苦笑
本来ならば、リリアナさんのキャラクタースペックは並みのラブコメならばまずメイン級に食い込んでくる、ラブコメ適性Sクラスの代物のはずなのですが、この【カンピオーネ!】だと思いっきり逆効果になってしまっている。
魔術界において特別な立ち位置にいる草薙護堂の側近としても、エリカを頂点に支配体制が確立している護堂の女性関係にしても、まるで状況を俯瞰的に認識できておらず、初恋に浮かれて自分本位に護堂の周りをフワフワと付きまとっているだけになってしまっている。お陰で騎士としても女としても、いささか邪魔モノになってしまっている。この点は作中でも沙耶宮馨に鋭く指摘されている。
日常生活でも思い込みの強さと不器用さで、護堂をえらい目にあわせてばっかりだし。肝心の大騎士としても、ポカをやりまくって役立たず。
魔王の側近としても、恋人としても、日常生活ですらも、これ以上ないくらい護堂をフォローし、盛りたて、影に日向に助けているエリカのパーフェクトなパートナー振りと比べて、リリアナさんは空気読めない痛い子と言われてもおかしくない所にまで至ってしまっている。
このままだと、本当にハブられかねないので、もうちょっと視野を広くもって頑張らないと(苦笑

しかし、ハーレムものは多々あれど、ここまでヒロインの序列が確立してしまっているものは珍しい。基本、平等並列か、内部で張り合いが起こっているものだけれど、この作品の場合ほぼエリカの管理下に置かれているのだから面白い。同じことを試みるヒロインはいても、大概失敗に終わるケースが多く、エリカのごとく見事に支配体制を確立してしまっているものは、ちょっと記憶に無い。面白い。

面白いといえば、かくいうハーレムの主である魔王・草薙護堂はそのハーレムについては一切タッチしていないのがまた面白い。護堂が関知していないところで、勝手に女性陣で形成してしまっているのだから困ったものである。
実のところ、よく読んでいると護堂の恋愛対象はハーレムどころかほぼエリカに絞られている。辛うじて祐理については性格の相性のよさもあって、異性として強く意識している部分はあるが、ぶっちゃけ護堂の本命はあくまでエリカであって、しかもかなりゾッコン惚れている気配すらうかがえる。というか、今回地の文の心理描写にて明確にエリカの事を愛する人と明言しているのだから、もう言い訳はきかないだろう。
かわいそうだがリリアナは、護堂には恋愛対象として殆ど意識されていないんじゃないだろうか。新キャラの恵那についてもそれは同様だが。
女性に対してはヘタレで勇気なしの意気地なしだから、迫られるとあっさり流されて、キスとかもしてしまうけど(苦笑
でも、護堂の方から、魔術関係なく欲情してるのってエリカだけなんですよね。もしエリカが今みたいにハーレムOKと言わず、独占しようとしたら案外アッサリ受け入れているような気もする。そもそも最後の一線呼ばわりされている肉体関係の方も、エリカが冗談ではなく本気で迫ったら、護堂、たぶん逃げないよな、これ。ラブホ街に連れてこられた時の覚悟完了の様子を見てると…(笑
エリカとのはじめてのちゃんとしたデートでああいう事をしてしまう時点で、護堂の女性との接し方の下手糞さは致命的で修正のしようがないというのが証明されてしまった以上、エリカは面白がって遊んでないでさっさと護堂を上手く誘導してあげた方がいいですよ。この男、エリカに手を出さないんじゃないくて、単にどうしたらいいか全然わからなくてビビッて立ちすくんでるだけだから、エリカの方が手取り足取り一から十まで導いてあげないと二進も三進も行かんですよ、これw
たぶん、その右往左往っぷりを面白がってるんだろうけど、エリカは。タチの悪い女だなあ(苦笑

そうやって護堂を弄んでるエリカだけど、彼女の護堂への愛情の本質が無辺の献身であるというのが、図らずもエリカ自身が絶体絶命となったときにハッキリと示される。
普段はあれだけ、護堂を振り回し好き勝手している風に見えるけど、その実彼女の行動はすべからく護堂のためなんですよね。自分の事は二の次で、常に護堂を優先に考えている。
それは、身も心も護堂に捧げきっている、と言い換えてもいい。
それこそ自分がもう死ぬという時に、護堂が傍に寄り添っていてくれるだけであれほど幸せそうに、心安らかな様子で嬉しそうに微笑むことが出来る、というだけでいつもエリカがからかうように護堂にささやく愛の言葉が、悪戯心というエッセンスを塗しただけで、何の作意も繕ったものでもない、本心から紡ぎ出されたものだというのが良く分かるはず。
結局、どうしてリリアナが二歩も三歩もエリカに遅れを取ってしまっているのかというと、護堂がエリカを好きだと言うのもあるけれど、何よりリリアナの護堂への接し方は、護堂を守り助けるためではなく、自分の嗜好や恋情を満足させる事を優先していて護堂本人の事は二の次だったりするわけだ。そこが、非常に大きいんだよなあ。

そうして、エリカが死の危機に瀕したとき、護堂が最終的に抱いた感情が、怒り、というのは、意外であると同時にこの護堂という男がなんだかんだと言いつつも、その根本は確かに「魔王」と呼ばれるにふさわしい、荒々しい支配者たるものを秘めているのを如実に示しているんだろう。
エリカを助けるためにとった行動が、そのままエリカを征服するような趣になってしまったのも、彼の本質がそれを指向していたからと言えるのではないだろうか。
それにしても、あの最後のウルスラグナの権能。エリカに力を与えたあれ、完全に擬似的なセックスじゃないか(苦笑
描写の仕方やお互いのセリフが明らかにそれっぽくなってて、エロいことエロいこと。
そしてもう、この後のエリカの幸せそうな姿が可愛いのなんの。元々好意や愛情をまったく隠さない娘だけど、これだけ無防備に甘えてこられると破壊力が半端じゃないや。

と、エリカと護堂のイチャイチャも行くところまで行ってしまった感もあるけれど、それとは別に物語の方も、どうやらこれからが本番、といった要素が幾つも出てきている。
前回、護堂の持つ権能と剣の英雄というキーワードが持ち上がり、護堂のファミリーネームである草薙とあいまって、日本の剣の英雄関連に話が及ぶのかと想像はしていたけれど、これはまたまったく予想外の形で突っ込んでこられたなあ。
一応、今のところ護堂の草薙の姓自体は特に意味はないみたいだけど、草薙の剣とスサノオの存在がまさか、こんな形で絡んでくるとは。スサノウがあんなふうになってるとなると、まつろわぬ神という存在への認識がかなりガラッと変わってしまうんですよね。ある種の台風みたいな時間とともに発生と消滅を繰り返す災害みたいなイメージだったんだけどなあ。となると、アテナに対する見方もかなり変えないといけないかもしれない。
今回は剣の権能のための神様の薀蓄は少なかったけど、それでも少ないなりにかなり興味深い内容だったのも確か。なるほど、あれにはそういう意も含まれてたんだ。
これまで謎な部分があった、日本の魔術組織についても、これまた今までは魔術的には辺境で勢力も小さいような印象だったのが、ガラッと変わってしまいましたよ。日本の魔術組織の体制、世界的に見てもかなり特異なことになってるんじゃないのか?

これまで、ウルスラグナ以外の権能を獲得してこなかった護堂にとって初めてのパワーアップ、プラス、エリカもパワーアップという要素もあり、さらには未だ目覚めぬまでも将来の対決を予想させる敵の存在も示唆され、さらにはライバル再び、みたいな前振りもあり、さあさあ俄然盛り上がって参りましたよ♪

しかし、眠れる虎とか、御子とか、いったい何を示しているのやら。色々とヒントはちりばめられているんだが、うーん、今の段階だと当て推量も難しいな。

既巻感想