ガンパレード・マーチ逆襲の刻 (電撃文庫)

【ガンパレード・マーチ 逆襲の刻 東京動乱】 榊涼介/きむらじゅんこ 電撃ゲーム文庫

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「121作戦」の成功により幻獣王・カーミラとの和平にこぎ着けた日本政府は、長すぎた幻獣との戦争終結を宣言した。しかし、その平和を嫌う、軍需により私腹を肥やしていた軍産複合体と好戦派の面々が、都心部で暗躍しはじめていた。
自衛軍はそうした不穏な動きを察知し、警戒を強めていた。しかし、自衛軍の考えをあざ笑うかのように、予想より数週間も早く反乱軍は都心部で蜂起する。
その日、5121小隊の面々はそれぞれに束の間の平和を謳歌しようと、一切の武装を解いた状態で都内へ繰り出していた。そこに突然の戒厳令が下される……。
舞台を首都・東京に移し「榊ガンパレ」の新シリーズがついに開幕!


クーデターなるものが発生してしまった原因は多様にあるんだけれど、軍の根幹となる中堅将校の多くを動かしてしまった原因は、政府のプロパガンダにあるよなあ、これは。
軍の被害を過少に見積もり、高らかに戦果を強調する。確かに121作戦はとてもじゃないけど公にしてただですむような作戦じゃなかったから、カバーストーリーをでっちあげたのは仕方ないにせよ、山口や九州での運と偶然と莫大な戦死者によって辛うじて手に入れた薄氷の勝利を、大勝利と謳ったのは大本営発表以外のなにものでもない。
現地にいなかった人間は、結局与えられた華美な情報と貧困な現状のギャップに戸惑うほか無く、華やかな戦果を現実に反映できない政府への不満を募らせることになる。
ここで、自分たちに対して都合の良い情報ばかりを信じず、今自分たちが置かれている現実から、真実を見極めることが出来るのならよいのだろうけれど、作中でも冷厳と指摘されているけれど、この国の国民は冷静よりも感情に重きを為し自分たちに都合の良い話を信じたがる傾向がある。
マスコミは視聴率のとりやすい耳障りの良いニュースばかり流し、スポンサーの意向に従って政府の弱腰を攻め立てる。現場で本物の戦争を経験した兵士や住民たちの声は幾ら叫んでも伝わらず、世論は容易に勢いに呑まれて、掛け替えのない血と命によって勝ち取られた平和に不満を漏らし始める。
クーデターとは、決して軍や地位の高いモノたちの権力欲や正義感だけで発生してしまうものじゃないんですよね。絶対に、その下地となる世の空気というものがある。
ゆえに、こうした国家の凶事というものは一部の主犯の愚かさに責任を押し付けてしまっていいものじゃないんですよね。
ラストで舞たちが苦渋とともに吐露していますけど、クーデターとは発生してしまった時点で国家にとって敗北であり、同じ国軍同士が相打つことは、もはや消えない傷を穿ってしまったということ。
幸いにして今回の一件で、東京を中心に中枢に蔓延っていた自衛軍内の強硬的な主戦派が悪役となりこれを排除できたものの、これで世論が和平派に傾き大原首相の政府支持率があがるかというと、クーデターを未然に防げず、一般市民にまで被害を出してしまった時点で、果たしてどうなることやら。
今回の一件で、前線に出さずに予備兵力として置いておくことが出来た首都圏の兵力が軒並みがたがたになり、再編にも時間がかかることになっただろうし、このクーデターでこの国が受けたダメージはかなり深刻なことになってるんじゃないだろうか。
カーミラーとの休戦で一息つき、疲弊し破綻寸前だった国の財政を立て直すはずが、クーデターで国家中枢がぐちゃぐちゃになったところに間をおかず、今度は北から新たな幻獣軍の侵攻がはじまるわけだから、これは本格的にヤバいですよ。
地味に、西郷長官が精神操作を受けてクーデター側の首班となってしまったのが痛い。この人、和平後の経済立て直しの中核となって働くはずだった人だろうし。
山川中将はどう動くのかと思ってたけど、なかなか意外な働きを見せてくれたよなあ、この人は。いやあ、見直した。この状況下で反乱軍側に身を寄せなかったことではなく、政治的に大ダメージを受けてそのまま軍内での力を失いかねなかった状況で、素直に軍人としての清廉さに目覚めるのではなく、シビリアンコントロールに従うと言う軍人としての正統な原則にきっちり従いながら、強かに大原首相に軍内での重要なポストを要求して、これをせしめたところでしょう。
反乱軍が勝っても和平派が勝っても立場がなくなるところだったところを、上手いこと勝ち組に載ってしまうんだから。公のためと個人の権力欲を並列処理してしまったこの人、本物の政治屋だわ。実際、それだけの働きを示したわけでもあるし、ここまでやられてしまうと、ちょっと惚れそうなくらい、もう凄いとしか言いようがないですよ。たいしたもんだ(笑
まあ、その行動を引き出したのは、山川息子の純真な国を憂う気持ちなんですけど。

さすがに人間相手、しかも同じ国軍同士では5121小隊の面々も幻獣相手の大暴れができるはずもなく、戦闘力の発揮という意味では大人しかったものの、戦争の悲惨さを生で知り、平和の尊さ、その価値をなによりも体感している現場の兵の代表のような立場で、和平を否定する世論の空気に憤りと嘆きを示し、その平和を覆そうとする反乱軍への純粋な怒りと現すという意味では、しっかりとみんな主人公やってましたよ。

恐るべきことに、こっからガンパレ新シリーズは四ヶ月連続刊行を敢行するのだという。の、のりに乗ってるなあ、榊先生。
こりゃあ、オーケストラの時期まで一気に話も進みそうだ。


シリーズ感想