悠久のアンダンテ -荒野とナツメの物語- (GA文庫)

【悠久のアンダンテ 荒野とナツメの物語】 明日香々一/文倉十 GA文庫

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う、うわぁぁぁぁ! うひゃああああ! ひゃっはあああっ!!
もう最高、素晴らしい素晴らしい、やったぜ、ひゃっほい♪

狂喜乱舞である。

いやもう素晴らしかった。完全アッパー状態入りましたよ。
ラブい、尋常じゃなくラブい。なんだよこのラブラブカップル。らぶらぶらぶらぶらぶらぶらぶ〜〜〜。そして、ファンタジーから少し外れた【神話】と呼ぶにふさわしい世界構造。神様と人間の邂逅から始まるラブストーリー。これぞまさしく明日香々一さんの作品そのものですよ。しかも、これはあの【王国神話】よりも確かな上積みがなされてる。デビュー作で感じた足りなさが、見事に払拭されてて、長所の方はぐいぐいと伸びていて、おおよそ五年ぶりの新作となったわけですけど、見事に顕在っぷりを見せてくれて、嬉しいのなんの。
【王国神話】よりも明日香々一らしい作品を読める日が来るなんて。生きるって素晴らしいなあ、ねえ?

どうやら作者にとって、ラブストーリーとは想いが通じ合うまでを言うのではないらしい。愛の存在に気づき、愛を知り、愛を交わし、愛を育み、愛に寄り添い、その末に愛の結晶を儲け、そこからさらに愛を膨らませていく。その過程すべてを包括して、ラブストーリーなのだ。そして、愛は終わることなく連綿と続いていく。
デビュー作の【王国神話】のヒロインだったオルフィナもそうだったけれど、二作続けてヒロインが子供を儲けてお母さんになるとは思わなかったなあ(笑
もう一つの特徴は、これは神様の領域に在る存在が人と愛を交わすことによって、人の領域にまで降りてくるある種の【神話】であるということだ。ここで描かれている神様と言うのは意思と人格が備えている一個人であると同時に、この世を成り立たせている法則そのものを担っている存在でもある。それはこの世を支える礎であると同時に、摂理そのものに蝕まれた存在でもある。
アベルは、その摂理の中核というべき存在に抗いながらも、摂理そのものには逆らう事に思い至ることもできず、神様の一柱であること自体は変わらなかったわけです、ナツメと出会うまでは。
アベル自身が語っていたように、彼は生きているでもなく死んでいないというだけの、ただ在るだけの存在だった。
彼が本当の意味でこの世に在るのではなく、生きる存在になったのは、あの場面。ナツメが彼との間に生まれた子を連れて、アベルのもとを訪れた、あの瞬間だったのでしょう。あのアベルが流した涙は、彼がこの世界に生まれた証、そのものだったのかもしれません。
その意味では、ナツメはある意味アベルの母親にもなるんだよなあ。
そして、アベルは自らの子を儲けたことで半ば摂理に再び強固に取り込まれる事になり、図らずも自らが何者であるかの選択を迫られるわけです。
ここからの展開は、何気に【王国神話】と同じなんだよなあ。似通ってるとか、そういう意味ではなく、神様の国譲りになってるんですよ。神が世を担う柱としてありながら、自らが支える世界の中にいる人間と出会い、愛を育み、その上で世界が既に自らが支えなければ成り立たない脆弱な幼子でない事を理解して、世界には自立するに任せ自らは神の座を降り、愛する人の中に帰っていく。
私がこの人の【神話】をとても好きなのは、神様が世界の管理を手放して、そのあとどこへともなく去っていくのではなく、自らが育んだ世界の中に自ら戻っていき、人の中に帰っていくところなんだと思います。然してその愛情は次世代へと連綿と連なっていく。
あの女神マリアの存在がどう作用するのかと思ってたら、さり気なく思わぬ新たなラブストーリーが生まれ出ていて、最後までニヤニヤさせられてしまいました。

ああ、それにしてもナツメとアベルのラブラブっぷりは、素敵極まりないなあ。その出会いから再会まですらも劇的すぎるのに、そこから何年も逢瀬を重ねて好意を紡ぎあげていった果ての……あの、カラー口絵でも描かれている最強のラブシーン。あれはもう、すごかった。別の意味で七転八倒させられました。
お、おんにゃのこになんちゅうセリフを言わせるんじゃーー。だ
誰だよ、この作品のイラストレーターに文倉さん選んだの。パーフェクトじゃ!!

そして、ナツメがお母さんになってからは、むしろより一層ラブラブっぷりが加速するんですよね。この作者の場合、結ばれたあとの方がまいど凄いような気がする。この会いたくてもなかなか会えない、ともすれば逢瀬の終わりが二度と会えない別れになるかもしれないという切なさが、またラブを盛り上がらせてるんですよね。
ナツメの存在によって自らの在り方そのものを変えることになったアベル。同時に、ナツメもまた、アベルとの出会いによって、アベルと出会い助けられた事によって、この世に生まれ落ちたと言える。それまでの彼女は名前も与えられず、死ぬまで道具のようにこき使われるだけの、人間とは呼べない存在でしかなかったわけです。それが、アベルによって彼女には名前が与えられ、そこで初めてナツメは人間としてこの世に生まれたのでした。
図らずも、この二人はお互いをこの世に産み落とした事になるんですよね。なんか、運命的だよなあ。でも、再会こそ運命ですけど、その後の愛が生まれていくまでは、間違いなくナツメの強靭な意思と努力による結果というのがまた素晴らしい。蟲がはびこる危険な荒野を駆け抜けて、アベルのもとを何年も何年も欠かさず訪れたからこそ結ばれた、そして二人が能動的に求め合うことで得られた最終的な幸せは、とても素敵なハッピーエンド。

ああ、素晴らしき哉、素晴らしき哉。

これを機会に、明日香さんには本格的に作家として復帰して欲しいなあ。これだけ素晴らしいラブストーリーを見せられたら、そりゃあ期待せずにはいられませんよ。デビュー作である【王国神話】のみでフェイドアウトして、もう二度とこの人の書くラブストーリーにはお目にかかれないと諦めていただけに、これほどの作品引っさげての復活は、メチャクチャ嬉しかったです。
ああもう、ニヤニヤがとまらんとまらん♪