銃姫 11 (MF文庫 J た) (MF文庫J)

【銃姫 10.Little Recurring circle/11.The strongest word in the】 高殿円/エナミカツミ MF文庫J

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うわあ、うわあ、うわあ。なんというスケール! これまでも銃姫の世界とパルメニアワールドとの関連性はそこはかとなく示唆されてきましたけれど、ここまで明確に繋がっていたのか!!
パルメニアワールドの時代性と比べ、此方の世界は銃火器が発展し、地には鉄道が、海には帆の頚木を解かれた艦船が走り、空すら飛空挺が誕生しものすごい勢いで席巻していくという、まさに銃姫の時代は近代への幕を開けた技術発展の時代が到来しつつある事は、この激変していく世界の在り様に置いていかれないように必死な姿によって強調されてきたわけですけど、まさかこの世界がパルメニア世界の遥か古代にあたることになるとは。
いや、古代どころか神話上の時代にあたるわけなんですよね。
エルウィングのあの鋼鉄の脚に【タンクレード】とルビを振ってあったのを見たときは鳥肌たちまくりましたよ。【そのとき】シリーズを読んでいる人なら分かると思いますが、これそのまま考えるなら、セドリックって後世ではあの名前で呼ばれていると言う事になりますし。
他にも遠征王シリーズなどを初めとするパルメニアシリーズ、今シリーズが続いているプリンセスハーツもそうですね。各種シリーズ読んでると、符合するものに多数遭遇して戦慄しっぱなしです。どちらかというと近代寄りの世界観の話を読んでいたはずなのに、これらのシリーズを読んでいると今まさに神話として語られていた、伝説として僅かに伝わっていたものを、今まさに目の前で目撃しているのだという実感が押し寄せてきて……いやはや。
お陰で、魔窟に沈んだ高殿さんの著作を発掘したり、高殿スレを覗いてみたりと、興奮冷めやりません。まだ、プリハの新作積んだまま読んでないんだよなあ。
そうかあ、ジェスさんが作ってたらあれらが、バルビザンデたちだったのか!! うわぁ、あの遠征王で歌われてた話、ジャンヌとヨシュアの顛末なのか!? 星教会って、そうか彼女は神を見つけたのか、それとも見つけられなかったからこその教会だったのか。
こうしてみると、銃姫の物語って小さなエピソードを含めてまで書き始められるその前からある程度形があったってことなんだろうなあ。パルメニアクロニクルって、いったいどこまで具体的に完成しているんだろう。
どうやら、プリハの新作にはもっと具体的に悪神ゼフリートについて語られているみたいで、うん、早く読んでしまおう。

しかし、最後のすさまじいまでのディエス・イレを目の当たりにしてしまうと、セドリックの心の在り様は真っ直ぐだったとしても、その実際に成した事だけを客観的に見るならばそれこそ神話として残るほどの大悪だわなあ、これ。灰海での五万もの軍勢との対峙にしてもそうだし、元々彼はデスパニックでひとつの町を消し飛ばし、無辜の民を生きたまま蒸発させ、恐ろしい数の人間から怨嗟されている存在でもあるんですよね。
その上、結果的に、それこそ礎にされていた人々本人の意思だったとしても、この世界を支えていた礎を崩すきっかけを作ったのは間違いなくセドリックだったわけですし。
世界と愛する人の命、どちらを選ぶのかという選択を迫られるケースというのはもう定番に近いものなんですけど、大体の場合は何だかんだと両方救えてしまうものなのですが、そこで敢えて滅ぼしてしまうあたりは、やっぱり作者は少年系ラノベレーベルを主戦場として書いている人とは一線を画しているんだよなあ。
最後にいたってようやく竜王が何を考えていたのか明らかになったわけですけど、そうか彼はあくまで王として民を守るための責務を果たそうとしていたわけか。彼は間違いなく世界を守るための正義を執行していたのか。それでも、きっと辛かったんだろうなあ。嫌で嫌でたまらなかったんだろうなあ。竜王にミトという二つ目の人格が生まれた理由を、精霊王としての障害と理由付けられていたけれど、それよりもむしろ彼が押し殺さざるを得なかった人間としての良心が、耐え切れなくなって二重人格として発現してしまったという方が真相のように思えてくる。実際、ミトとなった竜王は王としての責務から逃げ出して世界を放浪していたわけだし。
彼は最後行方不明になってたけど、エピローグ直前で闇に光をもたらしていたのはやっぱり彼ですよね。残酷すぎる責務から解かれた彼が、笑えていたのは救いと考えたい。

この物語の核心だった銃姫の謎も怒涛の勢いで明らかとなり、いや銃姫だけではなく様々な複線や人間関係の絡みが怒涛のように収束していき、ぶっちゃけよく収まったと驚嘆するくらいきれいにみんな片付いたんだけど、その怒涛さ加減が凄すぎてちょっとアップアップと溺れそうになたなあ。急展開とか畳みかけたというような無理やりさ加減はそんなになかったかと思うんだけど。いやでも、ここまで見事に広げた風呂敷を畳んじゃったんだから、やっぱり拍手ものですよ。打ち切りや執筆途絶なんかで終わってしまわなくてよかったよー。
オリヴァントことルーカとの関係も見事に消化していたし。なんとなく最初から感じていたというか分かっていたけど、やっぱりオリヴァントってセドリックとそういう関係だったんですねえ。彼とその母親の関係、どんなだったんだろう。垣間見えた回想見る限り、かなりひどいっぽいような気もするんだが。いやだって、あの擬音ってバッキバキのボッコボコじゃね?(笑
どうやら漫画版はセドリックたちではなく、オリヴァントやジェスが主人公の話みたいだし、いつか機会があったら手にとってみようかなあ。

これでめでたしめでたし、のはずではあるんだけれど。あの赤ん坊とか、あとがき読むと、わりと先々穏やかでないことが待ち受けていそうではあるんですよねえ。
エル姉執念の大勝利!! って、具体的にいったいどういうことなんだよ!(苦笑
なんか作中で、魔力を取り戻す手段を取ったときジェス師が言っていた副作用の中に不穏極まりないものがあったことだし、ゼフリートの伝承からしても色々あるんだろうなあ。

あの三兄弟の中で、せめてギースだけでも幸せになれそうだったのは、嬉しかったなあ。ヨシュアにしてもプルートーにしても、そしてギースにしてもあまりにも生き方が不器用で、このまま報いなく終わってしまうにはあまりにも辛いと思わされる人たちでしたし。ヨシュアも、遠征王で歌われた歌だとちょっと怖いんだけど、伝承はあくまで伝承で事実はちょっとでも違っていてほしいなあ。

なんにせよ、実際の歴史と神話との転換というか、現実にこうして生きている人々の時間が、いずれ歴史となり、その果てには伝説に至り、ついには神話となっていく過程と瞬間を目の当たりにしたかのような戦慄は、これはほかではきっと感じられない味わいなんだろうなあ。こればかりは、パルメニアクロニクルとして膨大な年代記を手がけている高殿さんのシリーズを追いかけている身でないと。
あーあー、堪能させていただきました。