ダンタリアンの書架4 (角川スニーカー文庫)

【ダンタリアンの書架 4】 三雲岳斗/Gユウスケ 角川スニーカー文庫

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上流階級の令嬢が集まる寄宿学校に招かれたダリアンとヒューイ。目的は、連続殺人犯ディフリングが持ち込んだ幻書を見つけ出すこと――神出鬼没のディフリングに対し、ダリアンの仕掛けた罠とは――!?


「全寮制の女子校の中にいるのは落ち着かないね」などと嘯きながら、中庭のベンチで優雅に昼寝を決め込んでいるヒューイは、やっぱり大物だと思うんだ。

今回も構成は、ダリアンとヒューイが主体の短編が四本に、焚書官がメインの話が一本。そして掌篇が二本というものに。
これ、スニーカーに連載されていた時とは順番が異なっているんですね。かなり話の内容を吟味して選んで、並べ方にも気を使っているみたい。思えば、前巻も同じテーマの話を持ってきていましたしね。今回も、ダリアンたちの使う幻書の使い方や、一途な愛の行き着く果てなど面白い対比があって、確かにこれはよく構成が練られている。
三話では、またあのヒューイの後輩のアルマン君が登場。こいつ、前回でひどい目にあったくせに、全然懲りてないじゃないか(笑 もうこういう役回りのキャラクターということね。うざいなあ、こいつw しかし、あれだけ邪に幻書に関わりながら、ヒューイたちに助けて貰っているとはいえ切り抜けて生き残っているあたり、しぶといというかタフというか。

と、気を抜いて楽しめるばかりじゃないのが、この【ダンタリアンの書架】。悲劇的な結末が多いのは仕方ないとはいえ、これまではまだ、身の程を知らずに幻書に取り憑かれ、その魔力に魅入られて自滅、もしくは自業自得的に破滅していく人が目立っていたのだけれど、今回の特徴は幻書に認められた適格者であり、その魔性に魅入られる事もなく、ちゃんと幻書を使いこなしていたにも関わらず、悲劇的な結末を迎えざるを得なかったと言うことでしょうか。たとえ、本人がどれほど適正に幻書を使いこなしていても、それによって振るわれる力は超常のものであり、周囲の人間の運命を狂わせていき、引いては幻書の使用者の運命をも狂わせてしまう。
特に四話の「調香師」のマイスターは、ヒロイン格でレギュラー化してもおかしくないくらいキャラも立った人格的にも善い娘だっただけに、けっこうキツい。
焚書官が、幻書を内容のいかんに問わず災厄を招くモノだと断罪しているのも、こうなってくると理解できないでもない。でも、焚書官が問答無用で本を焼くのは、本好きとしてはやっぱり嫌なんだよなあ。こいつ、攻撃するたんびに本を爆破するもんだから、その度に反射的に「うわっ」「うわっ」と思ってしまう(苦笑

毎度の事ながら、短編の完成度には目を見張る。このサイズにきっちりと起承転結のメリハリをつけ、ちゃんと毎回のゲストキャラクターにもキャラが立つのを当然としている。短編って、ほんと難しいんですよね。小説家としての技量が、短編には露骨に出るわけで、やっぱり作者は上手いんだなあ、と納得。
ただ、三雲さんって性分として長編向きだよなあ、と思わされるのが、世界観やキャラクターのバックグラウンドを短編連作の作品としてはありえないぐらい細かく煮詰めてる所なんですよね。順調にレギュラーキャラクターも増えてるし。あの叔母さんとか、新ヒロインとして準レギュラー化しそうなジェシカとか、短編連作の作品としてはまず登場しない類の立ち位置ですし。
ぶっちゃけ、次の巻から長編シリーズが始まっても何の問題もないくらいには、既に整備が行き届いているんですよね。
実際、ダリアンの過去を含めて、作品各所にものすごい勢いで散りばめられつつある様々な謎は、それこそ長編に移行しないと収集がつかないというか、物語としてきっちり終わらせるためには、長い話を持ってこないと難しいような気もするんですけどね。
いや、単に長いのも読みたいなあ、と思ってるだけなんですけど。

それはそうと、今回もカミラ姉さん、出番なかったじゃないかー! 掌篇には出てますけど。いや、あの短いシーンだけでカミラが普段どういう生活しているのかが丸分かりになる、というのは凄いと思うけど。姉さん、ホントに天衣無縫だなあ。