藍坂素敵な症候群 (電撃文庫)

【藍坂素敵な症候群】 水瀬葉月/東条さかな 電撃文庫

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 bk1

だ、騙された。騙された騙された騙された騙された。
これはタチの悪い宣伝詐欺でしょう(笑
少なくともゆるいタイトルやあらすじや表紙絵や帯の宣伝文句見て、この内容は想像できんですよー。
「しゅじゅちゅします!」
合言葉はフェティシズム! 医術部部長・藍坂素敵のちょっと素敵な物語。
フェチ系美少女学園ストーリー

てっきり、MF文庫Jの【えむえむっ】と同類の似たような話だと思い、あらすじを読んでその認識を新たにし、カラー口絵の美少女たちの紹介文を読んでさらに認識を強固に固め、本分序盤もそのつもりで読んでましたよ。

完全に油断してた。

著者のところに【水瀬葉月】とちゃんと銘打っている事の意味を、不覚ながらまったく意識していなかったのが敗因だった。
そうなんだよなあ。最近忘れてたけど、この人、萌え畑と見せかけつつその実態は根っからの

偏執血みどろグロ畑

の人だったんだよなあ。かなり無防備な心構えの所にポンとグロシーンが飛んできたんで、いい具合にクラってしまった。本来ならそんなに強烈な描写でもなくて、案外ジャブ程度の軽い一撃だったと思うんだけど、全然構えてないとけっこうギョッとなるんですよね。
話も一線を超えた途端、突然様相を変えてしまうし。この切り替わりは、さすがはもうベテランの領域にある作家さんという構成の手際の良さ。
最近、主戦であるところの【C3】が内容的に柔らかくなってきている分の鬱憤を晴らすかのように、グロくてシビアな要素をふんだんにつぎ込んだ、久々に水瀬葉月のスロットルを踏み込んだ感じの話になってるなあ。
ただ、この人の作品の好きなところなんですけど、主だった登場人物の多くが、残虐無道で歪み捻れまくった舞台の上に配されているにも関わらず、その歪みに真っ向から抗うかのような、心根の真っ直ぐな熱くも気持ちのイイ連中だというのが、この作品でも一貫していたのには一安心。特に、メインヒロインたる藍坂素敵はこれ、読むまではキャラクター誤解されるよなあこれは。興奮すると舌っ足らずになったり、冒頭の強引な絡み方を見てると、見た目通りの精神も幼児気質のわがままで傍若無人なキャラクターかと思ったら、思いのほか大人で理知的で他人に気を遣うタイプという、事前の印象とはまるで正反対。その上繊細で傷つきやすい癖に、自分が傷つくことを恐れず前に進むことの出来るとても強い子。正直、かなり好感の持てる子なんですよね。彼女の素顔を知った人たちが、彼女の周りに集まってくるのも宜なる哉。そりゃあ、好かれるし、自然とこの子のことを助けたい、守ってあげたいと思うわなあ。
とはいえ、彼女の抱える秘密と言うのは、実際ナニも知らずに目の当たりにしてしまえば、拒絶してしまうにもまた無理のない話。主人公の浩介の反応はまともだと思うんですよね。こいつの偉いところは、自分が間違ってると思ったら、自己正当化せず即座に行動に移せるところだなあ。最初に素敵の話をまともに聞かなかった時も、彼女の言い分に正当性あり、と判断するや、うだうだと躊躇わず、すぐにもう一度話を聞きに行ってるし。ほどよく熱くて真っ直で、これは気持ちの良い主人公だわ。

単に緩くて語感だけを重視して考えたようなタイトルも(いや、実際それだけにしてもこのタイトルはなかなか印象に残りやすくて結構イイタイトルだとは思ったけど)、実はかなり重要で真摯な意味合いが込められていて、その意味が明らかになった時はタイトルへのイメージが見事に反転させられて、これはなかなかグッとくる体験だった。
って、あとがき読んだら<スーパー変態大戦>って、また(苦笑 いや、間違ってはいないけどさ。

なんか見たことのあるようなパワーのこもったイラストだと思ったら、この人【SHI-NO】の東条さかなさんかー!