[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)

【[映]アムリタ】 野崎まど メディアワークス文庫

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 bk1

………(絶句)

お、い…おいおいおいおい、なんちゅうもんを書くんだこの新人さんは。
いったい何を考えてこんなものを電撃文庫なんかに投稿したんだ、と首をかしげかけたんだけれど、よく考えると確かにこれは電撃文庫くらいじゃないとハマらないというか入りきらないというか。ただ、電撃文庫の枠内にも収まらなかったからこそ、こうしてメディアワークス文庫なんて新装開店のところに放り込まれたんだろうけど。
ぶっちゃけ、メディアワークス文庫賞って、この作品のために作られたんじゃないのか、なんて妄想を滾らせてしまいことを止められないくらいには、とんでもない作品だった。
呆気にとられる作品だった。

最初読み始めたときは軽妙洒脱な主人公のノリは、森見登美彦っぽいし、これなら一般文芸でもいいんじゃないのか? こういう芸大の大学生が集まって妙なノリで映画作りって、冬目景とかやまむらはじめの漫画で読んでみたいよなあ。などと気楽に読んでいた頃が懐かしい。
ヒロインであるところの最上最早と主人公であるところの二見遭一との粋を凝らしたボケと切れ味たっぷりの即応裁断型ツッコミの応酬は、ノリノリの西尾維新を想起させる愉快さで、大いに笑わせていただいた。遭一くんのツッコミの切れ味は阿良々木くんのそれにも勝るとも劣らず、とだけ票しておこう。もちろん、それを引き出す最早嬢の計算し尽くされたボケに関しては芸術の領域であるからして、もはやツッコミの資質があるならば、それに反応するのは条件反射どころか簡単な物理法則の発露に近しいもの。それは、すなわち最早嬢の意思一つで自由自在にツッコまされている、と言っても過言では無く、ああ、遭一くん、最早嬢に好きなように弄ばれてるなあ、とゲラゲラ笑っていたわけだ。幾重にも囲われた枠の一番内側に囚われていることにも気づかずに。
読み終わる頃にはそんな連想をしていたこと自体に、蒼褪めていたのだけれど。


本物の、真性の、唯一にして無二である、<天才>という生き物。天にすべてを与えられたもの。
それが存在したとして、それが人間の中に紛れていたとして、社会の中に入り込んでいたとして、常人たる普通の人間とかかわることで、いったい何が起こるのか。

神様の手慰み。

彼女は神のごとく悪魔のごとく人を愛し、世界を愛し、故にこそ、思うが儘に弄ぶ。