幻想譚グリモアリスV  天の座に咲け叛逆者 (富士見ファンタジア文庫)

【幻想譚グリモアリス 5.天の座に咲け叛逆者】 海冬レイジ/松竜 富士見ファンタジア文庫

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誓護の冥界での立場と言うのは、アネモネ王家連合軍の軍師という位置にあたるのだろうけど、実際に果たしている役割を見てると、軍師どころじゃないんだよなあ。
彼が動いた時点で戦の勝敗も物事の真贋も、すべてが読み切られ、あとは彼の掌の上で何もかもが転がっていく。少なくとも彼に匹敵する指し手は存在せず、対局相手のいない詰将棋のようなもの。
それはもはや軍師や戦略家といった領域ではなく、占星術師か預言者のようなものだ。ただ、それらと誓護が決定的に違うのは、彼は決まりきった未来を運命のごとく語るわけでも、他人を物事を成就させるための駒扱いするわけでもなく、彼の計画のプロセスはそれに組み込まれた仲間たちが全力を振り絞って割り振られた役割を果すことを、信頼して組み上げられていることだろう。なにより、自分もまたその渦中に飛び込み、自分の組み上げた計画の歯車の一つとして危険の中に飛び込んで行くわけだ。
自分の身命を賭ける覚悟、他人の生命を預り使い尽くす覚悟、そして他人が本分を尽くすことを信じる覚悟。そうした生半可ではない覚悟を背負っているからこそ、アコニットをはじめアネモネ連合軍に加わったものは、彼に絶大な信頼を寄せるわけだ。

ぶっちゃけ、冥界の人々の彼への信頼感は、野放図ですらあるとも思うのだけれど。
もうここまで誓護が皆に認められちゃったら、アコニットと誓護、グリモアリスと人間の種族の違いなんて問題にならないんじゃないのか。
などと楽天的に眺めてたら、このシスコン、なにリヤナにまで粉かけてやがる(笑
だめだこいつ、ナチュラルにキザったらしい口説き文句を吐くのはアコニット限定かと思ってたら、無節操にリヤナにまで要らん事言ってやがる。その大切なお友達宣言はこれまでアコニット専用だったはずなのに、アコニットに知れたら大荒れだぞw
こうなったら早々にアコニットとの仲を<友達>から先に進めないと、色々と悲惨なことになりかねん。何度もいい雰囲気を重ねているわけだから、そろそろ周りの連中が後押ししてやってはくれないものだろうか。

と、二人の仲をどういう言ってる間にも、冥界の情勢はいきなりクライマックス。アネモネとロードデンドロンの連合軍が結成され、アコニットに反逆者の汚名を着せた霊廟への反抗を高らかに謳ったものの、状況はもう少しじっくり描かれると思ってたんですよね。それがまさに怒涛と言う他ない情勢の劇的進行。
もしかして巻きが入ったのか?
なんにせよ、オドラやアザレアたちを含めたこちら側の戦力総動員の総力戦。思わぬ人物までも引っ張り出して来援させたり、仰天の大どんでん返しが待っていたりと、疾走感たっぷりの見所満載な展開でしたけど、でもやっぱり急ぎ足という感じは少々するんですよね。軋軋の件にしても、アコニットのトラウマの解消と成長にしても、うまいこと処理はしているけれど、巻を分けてじっくりとやってくれたら、もっと感慨もひとしおだったんじゃないかと思ってしまう。
次回で最終巻というのは、やっぱり打ち切りなんだろうか。
まだ鈴蘭や千秋たちについての件も残ってるし、あれを一巻で片付けるというのもバタバタな感じがするんだけれど。
個人的には、アコニットと誓護のイチャイチャをもっとじっくりと見たかっただけに、二人の接触そのものが大闘争ということでどうしても少なくなってしまったのは物足りなかったので、次回こそはラストということもあり、バッサリやって欲しいところです。