お茶が運ばれてくるまでに―A Book At Cafe (メディアワークス文庫)

【お茶が運ばれてくるまでに 〜A Book At Cafe〜】 時雨沢恵一/黒星紅白  メディアワークス文庫

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実のところ、この本、完全に作者買いで内容についてはまったく把握していませんでした。あらすじも見てなかったし。だもんで、届いた時の薄さと本の質感に「????」となりながらページを開いてみたら、これが<絵本>じゃないですか。
ええーー、と拍子抜け、というかガッカリしてしまったんですよね。

そのときは。

ごめんなさい。ガッカリなんかしてごめんなさい。絵本を舐めてました、すみません。
絵本と言うよりも、本来ならこれは詩篇・詩集とカテゴライズするべきなのかもしれない。
18の掌篇。黒星さんの絵も、普段と違う淡いタッチ。
そして紡がれる、短くも濃密で、寡黙なようで雄弁な、言葉の旋律。
元々時雨沢さんって多くの言葉を費やさず、わりと短い言葉で物語や情感を紡ぐスキルを有した特異な人で、キノの旅なんてのはその結晶みたいなものだとこれまでは考えていたのだけれど、あれでまだまだ多弁だったのだなあ、と本当に結晶になるまで純化されたものを前にして感嘆の吐息をついてしまう。
真摯に訴えかける言葉。アイロニーが散りばめられた言葉。物静かにささやかれる言葉。そのどれもが、ムギュッ心を鷲掴みにして、トンと胸を押す。
なるほど、これは確かに喫茶店で注文して、お茶が来るまで軽くページを開いて目を通し、届いたお茶に口をつけて「ほぅ」と息をつく。
そんな至福を想起させられる一冊だ。
歩き続ける人生の中の一時の休息にて、再び歩き続けるための糧となり、新たな歩のリズムを得るための、かけがえのない一冊。
もっとも、お茶はお茶でもこれは紅茶というよりも苦いコーヒーが良く合いそうな気がするなあ。

お気に入りの一編は「りゆう」。内容だけなら、良く目にし、言われている事のはずなのに、たった二行の言葉に、どうしてここまでハッとさせられるのか。
あとは「やりたいこと」「かべ」「きょうのできごと」あたりかなあ。ああ、やっぱり時雨沢さんらしい、と思わされるアイロニーに満ちた内容のものも好きだし、柔らかくも優しい死生観を感じさせる詩もいいなあ。
これは、繰返し繰返し、折を見て読み返すことになりそう。何か心が疲れた時にこれを読んだら、また頑張ろうという気になれそうな気がする。
やっぱり、この二人のコンビは素晴らしいなあ。


それはそれとして、何故描かれている女の子になべて耳が生えているのか、なんか気になる気になるw