ベン・トー〈5〉北海道産炭火焼き秋鮭弁当285円 (集英社スーパーダッシュ文庫)

【ベン・トー 5.北海道産炭火焼き秋鮭弁当285円】 アサウラ/柴乃櫂人 スーパーダッシュ文庫

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物凄い暴露記事をあとがきに観た!! この作者、担当とよほど仲がいいか、会社的に抹殺したいほど大好きかのどちらかだな。
初版本にだけついているおみくじしおりは中吉でござんした。これ、デザインは種類一つだけなのかな。着物姿の先輩がなかなか美人さんで可愛らしく、キュートでござんした。裏のアセビの厄除けは、むしろ厄寄せなんじゃないかと恐々ですが。

今回、かなり削ったらしくあとがきでも、話が成り立つかどうかの綱渡りをしてどうにかこうにか、と言っているだけあって、かなりカツカツな感じがするんですよね。もういっそ分冊にしてしまえばいいのに、と思うんだけどなあ。
前々から佐藤たちのいる街は相当の激戦区、レベルの高い地域じゃないのかとは思っていたけれど、大谷や牧といった別地域の狼たちとの交戦を見る限りではやはり相当なんだな。未だ二つ名を持ってない茶髪や坊主、顎髭なんかのいつもの面々だって、あれもう無茶苦茶古強者って感じだし。茶髪さんなんか、未だにガチでやりあったときには、佐藤にまともに勝ちを譲ってないじゃないですか。佐藤はあれ、まだムラがあるとはいえ確かに二つ名レベルの実力を獲得してきているのに、ですよ。茶髪さんは二つ名出てきてもおかしくなさそう。

今回はわりと直球のラブコメをやっているのですが、うーん、やっぱり佐藤の恋愛観ってちょっと他の人とは違う気配がするんだよなあ。丁度、別口のカップルが成立しているのでその違いがわかりやすかったのだけれど、大谷くんのそれは大変わかり易いものだったんですが、佐藤のそれはちょっとズレてるんだよなあ。彼が広部さんが好きで惚れているというのは間違いの無いことだとは思うのだけれど、それが果たして大谷が牧に抱いた想いと同種のものだったのか。
もし、広部蘭が間違わずに佐藤が好きだった素の彼女で彼を引き止めていたら、という問題じゃなくて、佐藤の生き様云々という話じゃなくて、そもそも佐藤の異性への認識、女性との距離感、恋愛に対する想像力が普通の男と違ってしまっているような気がするんですよね。これは、あやめとの付き合いから生じたものだとは思うんだけれど、大谷や二階堂といった他の男と比べてもどうもなんかおかしい。他人の恋愛に対しても、殆ど理解力や認識が及んでいないみたいだし。
その点、あやめはズレてるようで恋愛観はちゃんと普通の女の子らしく持ってるんですよね。故にこそ、あやめは佐藤が他とはズレているのを、ちゃんと把握しているのかも。だから、自分と彼がくっつくことはないと確信しているのかもなあ。でも、最近ちょっとあやめの佐藤への接し方が徐々にだけど変わってきてるんですよね。佐藤も微妙に違和感感じてきているみたいだし。

まあでも、佐藤の恋愛異常と、自身の生き様に対する誠実さとはまた別のお話なわけで。人って賢いやつよりもバカなやつの方が正直に生きることが出来ると言うことなのか。打算や損得勘定で、時に人間は自分が望んでいた生き方をハズレてしまい、ついついより確実と思われる方の道を選んでしまった結果、その正解の中で息を詰まらせ苦しい思いをすることになる。
広部蘭も、猟犬とあった山原も、それぞれが正しいと思って選んだ道で、成功しているはずなのに、何故か苦しい思いに苛まれている。
そんな二人にとって、佐藤という存在は憎悪と憧憬の象徴だったのかもしれない。だから、彼をたたきつぶそうと執心し、彼を自分の場所にまで引きずり降ろそうと、しがみついていたのだろう。
「あたしと半額弁当……どっちが好き?」
この頭の悪い問い掛けを、バカじゃないのかと自分で思いながらも広部は真剣に尋ねるんだけれど、これは彼女が、未だ半額弁当争奪戦の真実の姿を知らないままでありながら、正確に佐藤が持つ魅力を理解し、彼の生き様が自分が捨て去ったものを体現しているのだと認識していたからこそ言えたセリフなんじゃないだろうか。逆に、自分はこのセリフで相当に広部蘭というキャラクターを好きになりましたよ。これは、よっぽど彼女が聡明でないと言えないセリフだもんなあ。本人はこの時点ではわかってないけど、ある意味コレ、今の自分と昔の自分、どちらが好き? と問いかけているようなもんだし。だからこそ、佐藤はあんなふうに答えたんだろうし。
うん、バカは強いよなあ。余計なものにリソースを振り分ける余裕が無いから、脇目もふらず自分の信じた道に好き勝手に突き進める。あとで後悔することも無い。
それはとってもカッコいいことだし、羨ましい。
だから、変態扱いされながらも彼の周りにはライバルでありながら通じ合った友が集まるんだろう。なんだかんだと、佐藤ってこの地域の狼たちの中心核的な存在になりつつもありますしね。ボスだの最強だのというんじゃあないんだけれど、誰もが彼を意識しているわけですし。そろそろ、ホントにあれな二つ名じゃなく、まともなのをつけてあげてもよさそうなもんなんだけどなあ。どうも、犬系のにはなりそうな感じなんだけど。
オルトロス姉妹の再登場は嬉しかったなあ。ダンドーと猟犬群との激戦に、オルトロスが味方側で参戦してきた時には激燃えでしたよ。魔導士を除けば、オルトロス姉妹は間違いなくこれまで出てきた中でも最強クラスの狼なわけですし、それが味方に回るときたら、
八匹の猟犬を引き連れた地獄の狩猟者・ダンドーと、双頭の魔犬を引き連れた魔女。頭数では負けていても、その総力では負けていない。

この口絵の、氷結の魔女とオルトロスが並び立つシーンは、読み始める前だったのに滾ったもんなあ。

そういえば、今回、具体的ではなかったものの、槍水先輩とHP部の過去が段々と明らかになってきてましたよね。前巻の感想でそろそろ、過去のHP部の話もやるのかと穿ってましたけど、次くらい本格的に来そうだよなあ。

弁当の描写も、全く衰えることなく美味そうで美味そうで。自分、豆ご飯とピーマンの肉詰めがあれほど美味しそうに思えた事なんて初めてですよ。どっちも別に好きじゃない類の品なのになあ、滅茶苦茶美味そうだったなあ、はぁ。