レイセン  File1:巫女とヒキコと闇少女 (角川スニーカー文庫)

【レイセン File1:巫女とヒキコと闇少女】 林トモアキ/上田夢人 角川スニーカー文庫

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またぞろ最初からすっ飛ばしてぶっ飛んだ展開に突入するのかと思いきや、意外にも就職先で奇態な同僚と慣れない仕事に四苦八苦しながらも普通(?)に日々を送るヒデオくん。
なんと、これ本気でオマケ的な後日譚番外編だったのか、とあとがきで書かれていた話に納得すると同時に、さらりとこのレイセンは前振りで、あとに本番が控えている、という大暴露に大興奮してしまいしたよ。この人はもう、プロットも書かない癖にその頭の中にどれだけ壮大なクロニクルが詰まってんだか。大風呂敷を広げれば広げるほど、さらに大きな風呂敷が詰まっていると言う、この逆マトリョーシカ人形め。
実はマスラヲにアニメ化の話があったというのにも驚いたけど、それを蹴ってたのにはさらに驚いたさ! これはでも、話を聞く限りでは英断でしょう。そりゃ、アニメとして【お・り・が・み】とか【マスラヲ】はそりゃもう見てみたいけど、【マスラヲの皮みたいなのを被ったもの】を見たいとは全然思わないもんなあ。

さて本編ではアリますが、聖魔杯が終わった後も二十社面接を受けて全滅したヒデオ。面接受けにいけるようになっただけ大いに成長しているとも言えるんだろうけど、受からなかったらどうしようもないんだよなあ。それで、鈴蘭や貴瀬のコネで宮内省神霊班、あの長谷部翔香や名護屋河睡蓮がいる対オカルト対策チームに就職することに。
一時期、魔殺商会に務めていた時期もあったけれど、何はともあれこれでようやくヒデオもニート・ヒキコモリから脱却することに。ダウナー属性は未だに脱却出来ておらず、相変わらずマイナス思考になりがちだけれど、それでもちゃんと就職できたんだなあ、おめでとうおめでとう。
と言っても、ヒデオってぶっちゃけ何の特殊能力も持ってないので、実は何も出来ないんですよね。睡蓮からは目付きの悪さが仇となって目の敵にされてしごかれ、聖魔杯をくぐり抜けてきたとはいえ、第三世界のことについては何も知らないヒデオは、四苦八苦することに。まあ、オカルト方面と言う点を除けば、社会人が新しい職場で頭を抱える苦労という点では変わらないんですけどね。
それでも、あの闇の神アンリマユが送り込んできた観覧用端末闇理ノアレや神に昇格したにも関わらず、相変わらずヒョイヒョイ遊びに来るウィル子たちのお陰で、ヒデオは召喚師やら妖精使いだのと勘違いされ、なんだかんだと一目置かれるわけで。まあ、でもヒデオは頼めば闇の力をなんぼでも借りられるし、呼べばウィル子もすぐに助けに来てくれるわけで、精霊使いというのもあながち間違った話じゃないんだよなあ。もっとも、ヒデオの誠実さはやっぱり前のまんまで、そういうチートを利用せず、自分でなんとかしようとするのは相変わらず偉いところ。
いわゆるハッタリで場を乗り越えて行くタイプにも関わらず、ヒデオへの好感度がやたら高いのは、彼は嘘や虚言を弄するタイプではなく、むしろ常に誠実で献身的だからなんだろうなあ。
このシリーズに出てくる大物たちは、大物であるが故にヒデオの本質を鋭く見抜き、見抜くが故に勝手に誤解し、はたまたその言を大げさに解釈し、もしくはその意を疑えないわけだ。騙されている、惑わされている、のとは一線を画してるんだよなあ。
睡蓮が出てくると言うことで、ほむら鬼も【お・り・が・み】以来久々に登場したわけですけど、あの鬼があれほどまともに他人を認め評価するのは初めて見るような気がする。睡蓮はもとより、鈴蘭に対してだってもうちょっとひねくれた態度だったし、評価は辛かったぞ。
ちなみに、ほむらのビジュアルデザイン出たのはこの巻が初めてか。実はもっとムキムキの鬼と言われてすぐに思い浮かぶ典型的な姿を連想していたんだけれど、なるほどこっちタイプだったのか。
ナニゲに後日談と言うことで、人間関係――特に恋愛方面で色々と激変があったんですよね。これはぶっちゃけ驚いた。翔香さん、あなた貴瀬とまさかそういう関係だったとは!!
これはこの巻で一番驚いたかもしれん。たしか、【お・り・が・み】からこっち、翔香と貴瀬が対面している場面、なかったんじゃないか? 幼馴染で、みーこ関連で色々あったという話はあったけどさ。でも、いやそう言えば、伊織貴瀬について話している時の翔香って彼に対してかなり気安い、というかある意味弟に対してよりも身近な相手について口にしているみたいな柔らかさがあったんだよなあ。貴瀬はみーこのモノ、というイメージがくっきり刻み込まれてたんで、みーこ以外ならハズレ籤で鈴蘭? という組み合わせぐらいしか思い浮かんでなかったんで、これはサプライズだった。ちゃんと、みーこもイイと言ってる、とみーこの了解得ているところとか、ホント良くわかってる(笑
翔希は翔希で、真琴と別れてやがるし。う、上手くいかなかったのかよぉ(苦笑
そりゃあ、告白の時からえらい蛋白な対応されてたけど、高校時代からの友達気分が抜けなくて、というのは色々と生々しいw だからと言って、鈴蘭に走るのはある意味バッドエンドだぞ。
意外なカップリングというと、ヒデオも意外だったよなあ。なんか、睡蓮とわりと本気でイイ雰囲気になってきてるし。てっきり、ヒデオに対しては婦警の美奈子が本気でアプローチしてくると思ったんだけどなあ。ヒデオに脈があったかどうかはともかくとして。


書下ろしは、鈴蘭無双というか鈴蘭無法というか。この女、いい加減悪の組織の親玉が似合いすぎて偉いことになるつつあるなあ。貴瀬だってまだマシだったぞw 少なくとも、貴瀬は部下の覆面タイツにノリで実弾ばら撒くとかしなかったから。
出てきた当初は不幸不遇がお似合いの被虐系薄幸メイドヒロインだったはずなのに、今や初代聖魔王とか神殺しとか言う以前に、悪の暴君だもんなあ。
いいぞ、もっとやれw
リップルラップル、とうとうミズノのみならずSSKにまで食手を伸ばしやがったか。マリアエクセルも暇なのか? 最近、普通に地上におりてきて姉妹喧嘩ばかりしてる気がするがw


今のところこれといった大事件は起きていないものの、ヒデオたちが処理してきた案件の裏ではうごめく影があるようで、今のところどちらも相互にその存在に気づかない段階。幾つか接触はあったものの、未だ決定的な所までには至ってはいないが、早晩表面化はしそうなんだよなあ。
こりゃあ、次の巻あたりから自体は大きく動き出すのか。それとも、レイセンでは動かずに終わるのか。このノンビリしたノリも結構好きなので、しばらくはこれで楽しむのもいいなあ。と、あとに真打が控えているのがわかってると、余裕も出てくるな、うんうん。