グロリアスドーン10 桜舞い散る空の上、 (HJ文庫)

【グロリアスドーン 10.桜舞い散る空の上、】 庄司卓/四季童子 HJ文庫

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ああ、これは。HELLOの総帥が広大に語った想いは、物凄く共感できる。いつかの遠い未来、人類が一人も残さず滅び去ったとき、人が連綿と繋いできた歴史は誰にも知られる事なく消え失せる。何万年と言う人が築いてきた想いが、何も残らない、無と化してしまう。
その虚しさ、寂しさは想像するだけで途方もなく胸をかきむしる。
でも、そんな歴史を、人々の記憶を、かつてここに人類と言う生命がいて、文明を築き、確かに生きていたのだと、それを覚えていてくれるモノが居たとしたら。それはどれほど救われることなのだろう。
しかも、それらを覚えていてくれるモノたちは、単なる機械のように記録として歴史を記述するのではなく、その歴史にちゃんと人が生きていた事を理解し、実感し、理解してくれるメンタリティを有した知的生命体なのだ。人間と同じ言葉を介し、同じ想いを共有し、同じ視点で同じ景色を見てくれた存在なのだ。
それが、ずっとずっと永遠に、人のことを覚えていてくれる。たとえ、人類がこの宇宙から消えてしまったその先であろうと。
人を見下ろす神ではなく、その時隣に居てくれた隣人として、同じ喜怒哀楽を共にした友人として、自分たちのことをずっとずっと覚えていてくれる。これほど安らぎと嬉しさを抱くことはないだろう。
HELLOの総帥が変節と言われようと、bioクラフトとの友好を受け入れ、それを広大とティセに語った想いは、とてもよくわかる。言わずには居られなかったんだろうなあ。

それと同時に、大地が抱く危惧もまた理解できなくはないのだ。そんな遠大な未来を臨む視点ではなくもっと近似的な未来を観た場合、膨大な時を、殆ど永遠に近い時間の流れを揺蕩うbioクラフトと、およそ百年しか生きない人間とでは生きる時間が違いすぎる。それは、友人として繋がるにはあまりにも大きすぎる違いであり、それは双方に取って禍根を残し、未来を歪める形になりかねない。その危惧は決して間違ってはいないはず。実際、bioクラフトの中にもそれを危険視しているものもいるし、オストネホワールウィンドがそういう考え方に至ったのは実際の経験に基づくもの、それもアイシャに関わるもののようだし。
大地がその思想に至った、というか想い定めた発端となる事件については未だ明かされておらず、広大の母親である広海の正体と合わせても、それ相応の思想が固まるだけの何かがあったのだろう。
それでも、広大に対する一方的な思想の押し付けは、息子を放ったらかしにしておきながら、広大が日々どんな風に過ごしているのかも知らないくせに、勝手な言い草だとムカッと来たけれど。どうも大地の中ではbioクラフトが殆ど人間と変わらないメンタリティを有した、人と変わらない存在である、という考えがないようにも見える。まあ、過去の一件でそう思ってしまうようなことがあったのだろうけれど。

そもそも、bioクラフトと人間の関係と言うのは、他の星の文明とbioクラフトとの関係とは根本から異なっている可能性が、一連の事件を通じて非常に高まってきたようにも思える。ワンダフルプレイスとはなんなのか。本来まったく別の存在であるはずのbioクラフトと人間との近似性の意味は。
そもそも、地球という惑星は、本当に自然発生的に生まれた星なのか。

クライマックスに向けて、情勢は激しく動き、ついに真相へと至る道筋が見えてきた。


と、同時に人間関係の方も進捗を見せてきたんだか、ないんだか。ぶっちゃけ、広大は恵子の異変について幼馴染として気づかなさすぎだ。この手のパターンだと、恋愛方面には鈍感だとしても普段とは違う様子をちょっとでも見せたらすぐにでも気づくのが幼馴染の面目躍如だろうに。
恵子が気づいて欲しそうな素振りを見せていただけに、これは非常に残念な振る舞いだった。あの恵子が、恋愛臭を全く見せないある意味余裕とも言うべき不貞不貞しさを見せつけていた恵子が、殆ど初めて見せた隙であり、誘いであったのに。
ラストの展開からの対応次第では、まだまだ巻き返しの余地はあるとおもうのだけれど。まあ、恋愛方面についてはこのシリーズ、これだけ女の子が一杯いるにも関わらず、その手の浮いた話は広大には全くと云って言いほど浮き上がってないんですけどね。みんなそれなりに好意を見せつつも、それが男性に対する意識の高まり、という程には盛り上がっていってないですし。
ティセたち三姉妹は完全にマスコットだしなあ。やたら愛らしくて可愛いんですが。この姉妹、ティオが普通に一緒に過ごすようになってからの三人セットになってからやたら愛玩動物めいた可愛らしさを獲得しやがったし。ティセ単体でも面白可愛かったけど、三人一緒だとさらに破壊力ましたもんなあ。大人びた風貌のティオがちゃんとティセやティオとそっくりの仕草を魅せてくれるのもギャップ萌えだし。なんだかんだと末妹らしいもんなあ。
やたらととんがっていたのも今は昔。ティオはティセたちと元のように付き合うようになってから、張り詰めていたものが随分と取れたっぽい。桜子が例の一件で暴走状態に陥ったときもその激情に飲まれず、心配そうに引き止めたところなんて以前の彼女じゃ考えられなかったところだし。前だったら、一緒になって煽ってたよなあ。ティオと桜子は一時期からホントにいいパートナーになりましたわ。お互いをちゃんと想いあい助け合えているし、ティセたちとは違う意味で姉妹らしく見えてる。

しかし、相変わらず戦闘シーンのスケール感がハンパないなあ。しかも、今回は地球上から観測出来るものだっただけに、空一面を覆い尽くすようなイメージでのビジュアルは、文字の上からですら度肝を抜かれる。
一度、映像として見てみたい気もするんですよね。ティセのパタパタも含めて。