ワールド エンド ライツ (HJ文庫)

【ワールドエンドライツ】 花房牧生/植田亮 HJ文庫

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くはーー、アニスの時も思ったけど、やっぱりこの人、純然と上手いわー。恐ろしく自然にグイグイッと話に引き込まれてしまう。特筆すべきところがあんまり見当たらないにも関わらず、べらぼうに面白いんだな、これが。敢えて理由をねじ込んでみるならば、たぶん、人と人との繋がりの描き方が、とんでもなく絶妙なんだわ。お陰で、相互作用もあってそれぞれのキャラクターの存在感が、非常に大きいものになっている。決して飛び抜けて個性的というわけではないのですけど、一人ひとりが一個の作品世界を成り立たせるための強固な柱となっているというべきか。
たとえば、本筋であるMMORPG<ヴァルプルギスナイツ>には参加していない幼馴染の工藤由希菜など、ゲームに参加していないものだから見せ場なんてないはずなのに、日常パートでのキャラの立てっぷりは見事なものだったし(あのほわほわーっとしたキャラ、好きだわー)、本来存在感なんて残せそうにないものなのに、主人公の行動原理となる妹の件での主人公との想いの共有や、オリエとの繋がりなど要所要所で影のキープレイヤー的な立ち位置にいるんですよね。おかげで、ラスト近くの展開には、私はすっかり騙されましたわ。あそこでああいう形で関わってくることに、違和感がなかったし。
地味で目立たないところでは、事故のあと主人公の面倒を見てくれているというオバサンとの、わずかワンシーンの会話など、あれって結構短いのに重要だと思うんですよね。あれで主人公の現実世界における親しい人達の距離感や付き合い方、お互いいだいている感情、あの事故によって妹が行方不明という事実が主人公を含めて周りの人間にどう影を落としているか。その辺を腑に落とすのに、端的でありながら見事な切り口だったし。
あのシーンや、幼馴染とのやりとりがあるとないとでは、主人公のゲームへの執着がどう見えるか、どんな重みがあるかを感じるのに、まるで違ってくるだろうし。

物語における根幹部分の謎も、話にぐいぐいと引き込まれる要因の一つですよね。どうして、交通事故で消息不明になった妹の姿がネットゲームの世界にあるのか。しかも、ゲーム世界におけるボスである三人の魔女の一人として。
実のところ、これもしかして一巻完結の話なのかと途中まで勘ぐっていたのですが、ラストの展開で主人公が追い求めた真相が明らかになると同時に、さらに謎が大きく広がって目に見える形での追い求める対象が、このネットゲームの世界が作られた理由、<ヴァルプルギスナイツ>の世界に秘められた謎を明らかにしないと辿り着けない事が明らかになっていくという、進めば進むほど世界が奥深くへとぶわーーーっと広がっていくような感覚は凄かったなあ。
読み終えて、ようやくこれがまだ序章に過ぎなかったと気付かされる、止めていた息を吐き出すような読後感は、なかなか痛快だった。
痛快だったといえば、主人公がゲームを始めるにおいて負わされた設定。これは読む人によって受け取り方が違うのかも知れないけど、私は痛快だったなあ。てっきり最初は贔屓の引き倒しだと思ってたら、設定が明かされた途端、ひっくり返りましたよ。なんという無理ゲー!! 本気で呪いじゃないですか。そりゃあ、ギルドにも入るのためらうわ。こんなの、見せられないし。一人だけ違うルール、というよりもジャンル? でゲームやらされてるようなもんだし。

なんにせよ、面白かった! ゲーム内でなし崩しにパートナーとなるオリエも、ゲーム内にとどまらず、どうやら現実世界の方でも積極的に関わってくることになりそうだし。そうなると、ユキナもこりゃあ黙っていないよなあ。

そういえば、なんか大人版アニスみたいな女の人出てきてたけど、ああいう妄想脱線娘って主人公だったら別にかわいいなーで済んでたけど、こうして他人として相手する立場から見ると、めちゃくちゃ鬱陶しいっすね(苦笑 アニスでシドがなんであれだけうんざりしていたのか、ものすごくよくわかったw