東方儚月抄 〜Cage in Lunatic Runagate.

【東方儚月抄 〜Cage in Lunatic Runagate.】 ZUN/TOKIAME 一迅社

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先日完結した秋★枝さん作画のコミックス【東方儚月抄 〜 Silent Sinner in Blue.】の裏舞台を描いた、神主ZUN手ずからの小説本。
ロケットを飛ばして月に乗り込もうとする吸血鬼の大騒ぎの裏で、なにやら怪しげに動いていた永遠亭、八雲家、白玉楼の面々。結局、彼女らが真に何をもくろみ、この一連の狂騒の中でどういう役割を果たし、いったい何をやらかしたのか、というのは分からないままだったんですよね。
その彼女らの思惑やらなにやらの一切が詳らかにされているのが、この小説版。背後の黒幕が八雲紫だというのはまあ分かっていたのですが、いったいどういうつもりで動いていたのか。具体的にどういう綱引きを持って事態を動かし誘導していたのか、というのがいまいち見えていなかったのですが……なるほど。単に、過去に痛い目に合わされた月の連中に一泡吹かせるつもりだったのかと、漫画のラストの展開を見て、そう思ってたんですが、むしろ標的は月ではなく……ということだったのか。その発想に至る回路は面白いと思う。なるほど、妖怪の役割と人間の役割ねえ。幻想郷の仕組みについてはたびたび言及されるのでそれなりに理解しているつもりだったけれど、えーりんたちをそういう視点で捉える発想はなかったなあ。
なによりこれは強烈極まりない牽制だわ。
正直、えーりんはあらゆる状況下において、誰よりも一枚も二枚も上手に居る人。紫や幽々子が相手でも、対等以上。過去の一件から上から目線、と思ってたんだが、これはなんとも、ここまで鮮やかに、ねえ。ははー。
いや、それよりも驚いたのは、えーりんにしても輝夜にしても、思ってた以上に地上の人間として生きる覚悟、というか確固とした意思を持っていたことか。地上に逃げてきたとはいえ、それでも月の人という意識があるのかと思ってたけど。もっとも、その変化はどうやら最近のものらしいけど。
永夜抄組の話としては、むしろえーりんたちより興味深かったのは、妹紅の話かもしれない。彼女が不老不死の薬を飲むにいたるエピソード。これほど具体的に聞いたのは初めてだわな。実はかなりエグい話だったんだなあ。
毎度の事ながら、東方の、神様にまつわるお話はいつも薀蓄がドライブ利かしていて面白いなあ。
そういえばもこたん。ゲームでは女性らしい話し方だっちゅうけど、この小説だとわりと男言葉だったなあ。

あと、妖夢はちょっと想像していた以上にアホの子でした。いや、まあ、がんばれ。