アクセル・ワールド〈4〉―蒼空への飛翔 (電撃文庫)

【アクセル・ワールド 4.蒼空への飛翔】 川原礫/HIMA 電撃文庫

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うぬぬぬ、おのれーー。
どうも私、この人の作品に対しては何故か冷静に立ち向かえないんですよね。なぜだか、こう、メラメラっと反抗心が芽生えてしまう。ふんっ、そう簡単に認めると思うなよ、にゃろめ! みたいな感じで読む前に構えちゃうんですよね。何の抵抗もなく受け入れてしまうのは、何か負けたような気持ちになってしまう。
さながらそれは、娘が連れてきた彼氏を前にしたお父さんの気持ち、みたいな? いや、われながら意味不明なんですが。
だいたい、そういう感覚になる根拠もないし、かなり理不尽な話だという自覚はあるのですが、こればっかりは感情やら相性やらの問題なので如何ともしがたいのです。

で、そんな色々とみっともないものを剥き出しの私が、何を冒頭から「うぬぬぬ」だの「おのれー」だのと唸っているのかというと……端的に言ってしまうと、なんというかその。
面白くてケチのつけようがねぇ!!
という、まあどうしようもないオチでして。はい。

ち、ちきしょー、面白いじゃねえかこのヤロゥ(涙目
ツンデレですか、これ?

個人的には、今まで刊行された作者の作品の中で、これが一番面白かった。相変わらず敵は卑劣な小悪党で、まあぶっちゃけ程度の知れた小物というのがいささか物足りないのですが、その分、タクムやチユをはじめとした主人公のハルユキの周辺の人達の描き方が今までになく充実してきてるんですよね。キャラが立ってきただけではなく、ハルユキや黒雪姫たちと同じ地平で物語を支え紡いで行くだけの存在感を確立してきた、とでも言うべきか。
そのお陰で、単純な設定部分の作り込みに基づく奥深さとはまた別に、登場人物たちの人間関係の深化と拡大によって、作品の世界観がググッと広がった感じがするんですよね。これまではまだ、主人公のハルユキの視野に基づくかなり限定された狭い範囲に縛られたような窮屈さがあったのですが、ハルユキの視野と人間関係が広がっていくと同時に、視点が他の登場人物に移るわけじゃないんですが、それぞれの考え方や思惑、生き様や在り方がわかってくることで、彼らの見ている世界にも理解が通じて、それを踏まえて読んでいるこっちも見える部分がどんどん広がってきた、というかなんというか。
ちょっと面倒くさい表現をするならば、読み手にだいぶ自由度が増えた、とでも言うんでしょうか。のびのびと読めるようになったって感じ?

今回明らかになった、心意システムとブレインバーストの在り方、それそのものは決して珍しいものではないので、特に驚かされたというのはないんですが、それぞれのアバターへの反映のされ方が上手いなあ、と感心させられた。まあ、最初からきっちりとこの辺の設定群を作りこんでいたんでしょうから、いまさら感心することじゃないんだろうけど、ハルユキとタクムのアバターが、本人と正反対に近いムキムキタイプというのには、ちゃんとそれなりの理由というものがあったわけだ。てっきり、タクムなんかは二巻でキャラの方向性を煮詰めたんだと思い込んでたんだが、結局のところ最初から小動もしていなかったのか。その割には、一巻でイメージを掴みにくかったのですけどね。
この、各々が抱えた闇、というのは別に深ければ深いほど強くなれる、とかいうんじゃないよなあ。それだと、悩みも何もなく平穏に過ごせているタイプの子は、強くなれないってことでなんか酷いし。でも、ブレインバーストがある種の探求に基づき稼働しているものなら、トラウマやそれに準じる闇を持つ子供たち以外の子は、かなりどうでもいい対象と最初から設定されているなら、この不公平は順当なものなのか。
なんにせよ、このシステムが明らかになって面白いな、と思ったのはチユの能力ですよね。
彼女の力が明らかになって、その意味を考えてみると、なるほどなーと至極納得させられたわけで。彼女に関しては、本当に最初の最初からそういう方向性の願望を持っている事は、折にふれて強調されていたわけだし。
さらに言うと、チユは今回の一件で、一巻の段階で既に失っていて、その後もある程度修復しながらも元の形には戻っていなかったものを、完全な形ではないにしろ取り戻すことが出来たわけだ。……ある程度の充足を得たとしても、一旦手に入れた能力は別に喪失したりはしないんだよなあ。トラウマの克服もある意味、充足と捉えることが出来るなら、タクムも乗り越えた上で新たな力を獲得しているわけだし。まあ、タクムとチユでは、内面の変革と現実における状況の変化という、明らかな違いがあるわけで、チユが果たして心意システムに踏み込むケースが訪れるのか、訪れたとしてそれがどういう形で発現するのかは、ちょっと想像が難しいところですけど。
それにしても、今回はほんと、チユとタクムの回だった気がするなあ。チユなんかは、特にちょっと舐めてたかもしれん。気の強さとは裏腹の弱い面をかなり見せられていたから、ここまで気丈にがんばれる子だったとは。見直したという以上に、これは惚れるわ。
この幼馴染三人組は、このシリーズの最初から拗れた状態で始まっていて、タクムとの仲が修復されたあとでも、いささかぎこちなさが付きまとっててどうにも不安定だったんですが、こう、なんというか、ほんと、素敵なトリオになってくれそうです。好きだわー。

それでも、全部の締めを持ってってしまう黒雪姫様は、メインヒロインの面目躍如ですけどねw
ハルのあれは、聞きようによってはアレだよなあ。あれほど動揺しまくる黒雪姫はかなり可愛かったですけど。でも、そんな風に受け取っておきながら、承諾しちゃうんですか!!

そんでもって、最後の最後。すれ違っていた二人の再会。くーーー、あざとい! この痒いところにスルッと手を届かせるようなやり口があざとい! 
きぃーー、ここでめっちゃニヤニヤしてしまう自分が悔しいっ、でもにやけちゃうッ。
……キモチワルイので、ホドホドにしておきます。謝。