天乞-あまごい 1 (電撃コミックス)

【天乞 −あまごい− 1】 ていか小鳩 電撃コミックス

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うおおっ、これはキタ。ぞわわわわっ、と来ましたよ!

現実から異世界に飛ばされてしまう、というのは昔からあるテーマだけど、これは気合入りまくってるなあ。壮大な物語を紡ぎ出してやるという気概に満ち溢れていると言うかなんというか。
妥協している所が見受けられないんですよね。ここは適当でいいや、というのが世界観にしても登場人物の動向にしても、まるで見当たらない。徹底的に突き詰めて、ドラマティックにダイナミックに、物語を走り抜けようという意欲が伝わってきて、なにやら読んでてぞわわわわっ、と毛が逆立つような感覚がきましたよ。

第一話の終りで異世界に飛ばされてしまうのですが、そこまでで十分、小学生の妹の可愛らしさ、愛らしさを伝えきり、さらに同級生との仲間たちの仲の良さ、ヒロインである初瀬川響心との初対面であるような、どうも過去に面識があるような微妙な関係を描き、主人公海老名天の家族や仲間と過ごす日常風景をしっかりと印象づけたところで、第一話終了間際での変転と、第二話冒頭の異世界での衝撃的な展開という畳み掛けるようなコンポ。
この、第二話の展開は凄まじいの一言。見知らぬ異世界に戸惑う暇がないんですよね。巨大なきのこが生え聳え、見知らぬ月が浮かび上がる見たことのない空、地球上にはありえない風景。この異様にして幻想的な世界の空気の描写そのものも、それだけで相当なのに、そこで待ち受けていた光景があまりにも衝撃的で、主人公の天も、読んでるこっちもココはドコだ、いったい何があったんだ、と悠長に困惑してなど言われない。
見つけたのは、妹の杏の無残な亡骸。下半身を引きちぎられ、内臓が垂れ下がるような、筆舌し難い有様に成り果てた妹の姿。
そして、呆然としながら見つけたのは、散乱する死体、散乱する肉片の山。
ここが一番のポイントだというのは、帯の煽り文句からもわかる。
謎の世界で兄が見たのは
散乱する妹の死体だった――

基本、わりと淡いタッチの絵柄なだけに、血まみれのグロテスクなシーンがかなり来るんですよね。惨劇でありながら、どこか幻想的で、それでいて血の匂いが濃厚に漂って来そうな生々しさも兼ね備わってて。
ここから、さらに二転三転と事態が急転し、なかなか息もつかせぬ展開が続いていくわけです。
異世界に飛ばされたのが主人公と妹だけじゃない、ってのも注目点だなあ。ある意味、これって遭難ものでもあるわけだ。言葉が通じなかったり、流れてきた時間が食い違ってりと、十二国記を想起させる要素もあるし。
見知らぬ世界で親切な人に助けられる、というのはやっぱり相当運が良くないとあり得ないことなんですよね。勿論、そういう運に恵まれるヤツもいるけれど、(主人公サイドはやっぱりこれが多い。十二国記の陽子のように主人公であるが故に酷い目に遭う子もいるけれど)、平和な日本では想像も出来ない様な過酷な日々を送ることで、以前のままでは居られない者もいるわけで。
まだ、表にはっきりとは浮かび上がってきていないけれど、その辺もここから段々と露呈してきそうで、待ち受けている軋みに、ドキドキだ。
このまま仲間たちと再会して行くにしても、こりゃあ一筋縄じゃいかなさそう。なにより、天と杏のメインとなるであろう兄妹からして、どうやらこの異世界に因縁があり、そもそも根本的な原因という可能性も高そうだもんなあ。爆弾ばかりが山積みで、展開は読めず、これはまた楽しみなシリーズが立ち上がりましたよ。
これは、腰を据えて付き合えそうだ。