疾走れ、撃て 4 (MF文庫J)

【疾走れ、撃て! 4】 神野オキナ/refeia MF文庫J

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せっかく獲得した小隊の長期休暇も、虎紅と理宇、それにミズキの三人は海軍のプログラムに参加していたお陰でちゃんと消化することは出来なかったのだけれど、最後の四日間だけ宿舎に早めに帰還してキャンプを組むことに。三人だけのキャンプのはずが、そこに色々な珍客が訪れたり、他の仲間も何人か早めに帰ってきたことで、賑やかな休日が繰り広げられることに。
なんだかんだと前回も怒涛の展開だっただけに、ちょっとした息抜きの幕間回と言ったところでしょうか。どうやら、次回以降はまた過酷な戦局が待ち受けているような気配があるし。
得てして、こういう幕間回の方がより人間関係が動いたりするんですよね。忙しさから開放されたのんびりとした休日だからこそ、じっくりと個々のキャラについて描ける部分もありますし、登場人物たちも落ち着いた状況で自分を省みたり、他人との距離についても踏み込んでいける余裕がありますしね。
理宇と虎紅とミズキの三人のみならず、様々な人間模様がいろんなところで織り成されていて、幕間回と言えど、非常に面白いことになっていたように思う。
特に、やっぱりというべきか、メインとなる三人の三角関係が思わぬ方向に発展してきたと言うか、予想通りの方向に進捗してきたと言うか、いい感じになってきましたよ。
愉快なことに、このつかの間の休日を逃さず、理宇との関係を一気に勧めようと企む虎紅とミズキなんですけど、肝心の理宇との距離はまったく何も起きないまま、何故か恋敵である相手の方との関係が、妙な形で変化、いや進展していってしまうのある。
面白いのはこの二人、恋の相手である理宇に対しては、とても好きであり、どうやって恋人関係になるか、という非常にシンプルな構図で矢印が向いているのに対して、恋敵である相手に対しては非常に複雑にいりくみからみ合った感情が交錯しているのである。
元々は自分の好きな相手にちょっかいを出してくる排除すべき敵、に過ぎなかったのが、同じ部隊の上官と部下として付き合ううちに、相手が自分にないものをたくさん持っているコンプレックスの対象となっていく。
恋敵と言うのは不思議なもので、相手を出しぬくため、あるいは出し抜かれないために、ある意味恋する相手よりもより注意深く、丹念に、注目して、その人となりや性格、言動などを観察してしまう場合がある。それは、つまり普通に付き合うよりも遥かに相手のことを深く知ってしまうという事でもあるわけだ。
そして、知れば知るほど、相手が好ましい人物だと分かってしまえばどうなるか。
端的に言うなら、虎紅とミズキ、二人ともお互いのことをいつの間にか、とても好きになってるんですよね。相手は理宇を奪おうとする恋敵だ、と頭では分かっているものの、それ以上に相手が好ましく尊敬出来る人だと言う想いがいつの間にか根づいてしまっている。おまけに、お互い鈍感で女心をわかってくれない理宇の被害者という意味で、言葉にならない次元で通じ合った同志みたいな共感も抱いてしまっているわけで。
知らず知らず、ある意味理宇との繋がりよりも遥かに濃く太い絆が、二人の間に形成されだしてるんですよね。
この作品が面白いのは、そこまで繋がりが育まれていながら、虎紅とミズキって馴れ合おうとはしないんだよなあ。でも、これぞ正しい「好敵手」って感じで、私はこの二人の関係、かなり好きなんですよね。
でも、お互いここまで気持ちが通じ合ってしまうと、逆にはっきり白黒勝敗をつけてしまうことに壮絶な居心地の悪さを感じてしまいだしちゃうんですよね。本来なら恋なんてものは奪ったもの勝ちみたいなものなのに、好きなことを独り占めすることに罪悪感を感じてしまうようになる。
そこまで来ると、三角関係はイイ意味で熟成食べごろ状態と言っていいのかも。と、ぬるいことを言っている状況でもないんですけどね。
最後のミズキの決断は、本人も重々承知しているように自分の都合で部隊全体を危険に晒しかねないものである。それでも、ミズキは恋を優先し、虎紅はそれを受け入れた。二人とも、責任感は人並み以上あるしっかりとした女性たちだ。自分たちの我侭で本当に部隊の仲間たちが死地に立つことのないよう、死に物狂いで自分の為せる以上の事を成し遂げようという覚悟を以て、まだ発芽もしていない微妙な三角関係を維持する方を選択したはずである。まったく、とんでもない女性たちだ。
彼女たちが、それだけの覚悟に見合うだけの報いを受けられたらいいんだけど、理宇はどうしようもない朴念仁だからなあ。女性が強い世界だけど、それだけに苦労も強いられているようである。
朴念仁の先達であるところの伊達教官の暴虐に振り回されている加藤教官の悲惨さを思えば、まだ二人は若い分、希望に溢れていると言ってもいいかもしれないけど。あの大人組は、ほんと悲惨だもんなあ(苦笑
ただ、加藤教官はイイ大人なんだから、そんな遠まわし遠まわしにアプローチしても埒が明かないのは分かっているだろうにw 伊達教官の場合、歳喰ってる分、むしろ理宇よりも酷いことになってるもんなあ。そんな相手には、直球を頭に危険球くらいの勢いで投げるしかないでしょうw

さて、表紙にもなっている新キャラ、虎紅の妹虎鈴は、また強烈だったなあ(笑
双子でこれだけ成長度がちがうって、作中でも何ども繰り返し描写されてるけど、虎紅から吸い取ったとしか思えん(笑
しかも、胸なんぞミズキよりも大きいのかよ。ミズキって相当物凄いって話だったのに、それ以上って。性格もあっけらかんとした人懐っこい大型犬みたいな娘で、ええいっ、愛玩的な意味でかわいいなあ、おう。この性格だったらたぶん、ミズキと意気投合するだろうなー、と思ってたら案の定仲良くなってるし。お姉ちゃん大好きっ娘でありながら、二人の恋路には茶々を入れずに両方応援、というスタンスからもわかるように、人懐っこい娘ながらもベタベタはしてないんですよね。基本的に気持ちいいお嬢さんだわ。

夏が去り、秋が来る。出るべき人も大方出揃った。再び、戦争の季節だ。