漂う書庫のヴェルテ・テラ2(富士見ファンタジア文庫)

【漂う書庫のヴェルテ・テラ 2】 川口士/雛祭桃子 富士見ファンタジア文庫

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レジィナとリシェルの女同士の鬩ぎ合いが、バチバチと火花飛び散る壮絶な戦いで、怖い怖い!(笑
この作者って、地味だけど独特の味わいのある良質のファンタジー書きというのが主だった定評だと思うんですけど、何気に修羅場作家としても屈指の強者なんじゃないですかね。富士見F文庫での前作「ライタークロイス」でのファリスとイングリドの女の争いもアレ、相当なものだったし。
ラブコメ作家という方向性で認知されないのが、女性陣のマジ度が茶化せないレベルで真剣かつ苛烈ゆえなのか。
好意を持ってる男の歓心を買うために張り合うというよりも、自分の方が立場が上だと相手の女に見せつけよう、認めさせようとして衝突しているという点も見逃せない。
まさに女同士の意地の張り合い、プライドの激突、相いれぬ大敵との譲れぬ戦いなのである。この、明らかに潰しに掛かっている乙女二人の闘争が、たまらなく面白い。怖いもの見たさというかなんというか(笑
リシェルもレジィナも、別にジグウォルが好きで取り合っている、という訳じゃないんですよね、今のところ。まあ、二人とも彼に好意を抱いているのは丸わかりなのですけど、今のところは二人とも自分で自分の感情を受け入れているわけでも認めているわけでも、ある意味気づいてすらもいないわけですが、それがリシェルとレジィナ、ジグウォルを挟んで向き合った途端、この男は私のものだからてめえなんぞが手を出すんじゃねえ、とばかりに牙をひん剥いてガルルルル!と唸りだすんですよねw
ジグウォルが鈍感とかそういう話でもないわけで。なにしろ、彼が預かり知らぬところで行われている軍事衝突だからなあ。彼女たちの彼に接する態度は、まあ渦中で多少不自然なアプローチはあったとは言え、いつもと変わらないといえば変わらないものだったし。

あんまり、というか殆どまったくそういうイメージが湧かないのですが、ジグウォルってかなりモテモテなんですよね。出てくる登場人物は多かれ少なかれ彼に好意を抱いてますし。それこそ、性別の区別なく(笑
さり気なくハーレム主人公なのかと思うくらいに、好意は寄せられているのです。なのに、不思議とそういう感じがしないのは、好意を持っていてもみんな別にジグウォルに迫ったり積極的にアプローチを仕掛けてくる訳じゃないからか。好き、という感情は感情として持ちつつも、彼に好意を抱いている人たちは、その好意に無闇に流されたり、押し付けようとしたりしてないんですよね。きっちりと自分の立場や役割に徹していて、揺るがない。好きだけど、それはそれ、これはこれ、ってな感じで非常に律せられている。大人、というべきか。勿論、好意ゆえに便宜を図ったり、ある程度融通はきかせたり、色々と目をつぶったり、という部分はありますけどね。
ジグウォル本人が、色恋方面にまるでガツガツしていない、というのもあるんでしょうけど。こいつの関心は、殆どが本の方に偏っちゃってるからなあ。エロ小僧という設定のわりには、女性に対する関心はあんまりないように見える。セクハラ行為に、あまりエロさを感じないんだよなあ。敢えてそういう風に振舞っているのか、と思うくらいに。サッパリあっさりしすぎてて、リビドーが足りないとですよw 
それに対して、本に対する情熱というか欲望というか、本を読みたい読みたいと欲する熱は、これでもかってくらいにひしひしと伝わってくる。この書痴っぷり、狂熱的ビブリオマニアはやっぱりいいなあ。これに関しては読子・リードマンクラスと評してもいいくらい。
この本が好きで好きで仕方ない、という姿には非常に共感を覚えてしまう。

こうした登場人物にしても物語の進行にしても、やっぱり派手さはなくどうしても地味な感じがしてしまうんですが、ただ単に地味と言うにはこの人の作風には他に類を見ない味があるんだよなあ。噛めば噛むほど味わいが出てくるような妙味が全体に根づいているというか。
なので、読んでいると、思わぬ展開に大興奮したりとか掛け合いに悶えたりという大波はないんだけれど、ストーリー展開にしても、登場人物の会話にしても妙に楽しい。ついつい没頭してしまうようなところがある。
このシリーズ、一巻はライトノベルらしい話を心がけようとしていたのか、どうにも四苦八苦して歯車が噛みあっていないチグハグな感じがしたのだけれど、二巻になって作品そのものを掌握したのかグンと面白くなった、というかこの作者らしい作品になったというべきか。それも、元に戻ったというわけでもなく、新しくやろうとしたことがちゃんと身になりつつ、と言った感じで。
出来れば、無茶せずこのままの方向で行って欲しいなあ。