Xの魔王 2 (MF文庫J)

【Xの魔王 2】 伊都工平/万国あゆや MF文庫J

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ファンタジーだと思って読んでいたら、むしろ思いっきりSFだった件について……。
ん? 待てヨ。よく考えてみると、この作者の書く作品って大概ファンタジーの皮を被ったSFだったような。だとしたら、特に不思議でもなんでもないのか。
しかし、世界観を異世界ファンタジーに設定しておきながら、その世界の枠組みをガチガチのSFで構築していたという、ここまでの大技はさすがになかったように思う。
そもそも肝心の魔王や天界人からして、この異世界の人間の概念で理解出来るように解釈された存在に過ぎず、そもそもの在り方というのはその魔王や天界人という闇や光、善悪の観念で括られるようなものではなかったということか。世界を構築するシステムそのものの根幹に関わる介入用のシステムだったとすると、なるほど今回のケースのように魔王が人間化してしまい、人間としての概念や感情を獲得してしまったと言うのは、なおも魔王たらんとするミトラスにとっては苦痛極まりないことだよなあ。魔王としての役割を理解している以上それは放置できないし、さりとてカルセに人として想いを寄せてしまい、勇者アティスにも友情を抱いてしまい、両方を成り立たせなくてはならなくなったという負担。それでいて、カルセは本当は既に亡くなっていて今の彼女は抜け殻の人形。アティスはミトラスに気は許してはいても、ミトラスからのそれと違って、魔王に友情など感じていない。かなり辛い立場なんだよなあ。
その上、今回はついにアティスにカルセが既に死んでいることがバレてしまい、これまでの協力関係までも破綻してしまうわけで。あそこでミトラスはアティスをどうとでも言いくるめることは可能だったはずなんですが、むしろ強圧的にアティスを痛めつけ、突き放してしまうんですが、アティスは何も知らなかったし、これからも何も知らないのだから彼には罪はないんでしょうけど、ミトラスの気持ち考えるとこれは切ないよなあ。友情も、嫉妬も何もかも一方通行。色々なものが報われていない、この絶望感。
それでも、彼が邁進していくのは義務感なのか人になったが故に芽生えた意地なのか。

そんな彼が報われるとしたら、やはりカルセの存在であり、彼女の復活が今後のキーとなるんでしょうけど、復活したらしたでなにやらきな臭い匂いが漂ってきそうな気配だし。
まだこれまではミトラスの目的とカルセたちの存在は矛盾せずに並列として維持できてきたわけだけれど、もしその片方を選ばなければならない事態が起こったらどうなるのか。
それ以前に、このきな臭い匂いからして、ミトラスの存在意義から消失してしまいそうな予感すらあり、天界人の動向次第ではまたぞろとんでもない大どんでん返しが待ち構えていそうで、果たして彼らに安寧など訪れるのか。見通し、暗いなあ。
なんだかんだと、カルセは人類史上最悪か、それとも最高の罪作りな女になりそうだ。