サクラダリセット2  WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL (角川スニーカー文庫)

【サクラダリセット 2.WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL】 河野裕/椎名優 角川スニーカー文庫

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はぁ…………、いやもうこれは、ため息しか出てこない
なんという圧倒的なノスタルジア。静まり返ったセピア色の世界。舞台は現代日本のはずなのに、恐ろしいほどの追憶に駆られる。それも、牧歌的とか郷愁とはまた別種のノスタルジアだ。既に遠い昔に滅び去ってしまった、今はもうこの世の何処にもない風景を幻燈で映し出しているかのような、優しくも寂しく哀しいどこか虚ろな空気感。
何もかもがあやふやで心もとなく、それでいて世界は普遍的に、当たり前のように一日一日を送り出して行く。
時間に取り残された箱庭のような街・咲良田。
そこで暮らしている人たちは、はたして現実に生きているのか。それとも夢の住人なのか。どこかで、私はこの街の現実感を信じられずにいる。
それは、この街に暮らす人々の持つ能力が、現実を脅かすほどの多様性を内包しているからだろうか。それとも、この街の根幹をなしていたという「魔女」と名乗る初老の女性の人生が、あまりにも途方もないものだったからだろうか。
彼女の人生とは何だったのだろう。翻って、彼女の人生の終着において抱いた想いこそが現実なのだとしたら、彼女の人生がハッピーエンドで締め括られたのだとしたら、そもそも人の人生とは何なのだろう、と考え込んでしまう。

そもそも、この作品って、この物語って何なんだろう?
平易にして普遍性に基づいて成り立っているようなのだが、出来上がったものを読むととてつもない独特さが覆い尽くしている。そもそも、この話って何の話なんだろう? 分からないわけじゃない。感覚としてスッとなんの抵抗もなくこの物語は胸に染み入ってくるのだけれど、具体的にこの物語がどういうものなのかという点においては正直、分からない。
青春モノ? 異能ミステリー? いろんなカテゴリーが思い浮かぶけれど、そのどれもが合っているようで、何かが違う。ズレている。違和感がある。的外れな気がする。
思い出してみると、一巻もそういえば感想をどう書いたらいいものか、取っ掛かりすら得られずに放り出してしまったのだった。
うむむ……。
遠くて近い、手を伸ばしても届かないくせにすぐ近くにゆらゆらと見えている。まるで、蜃気楼みたいな作品だ。幻みたいなのに、ばかみたいに惹き寄られる。目が離せない。
心の何処かを鷲掴みにされたみたいだ。