とある魔術の禁書目録(インデックス)〈20〉 (電撃文庫)

【とある魔術の禁書目録 20】 鎌池和馬/灰村キヨタカ

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せっかくのヒロインとの手に手を取っての逃避行にも関わらず、打ち止めにしても滝壷にしても、どっちのぐったりくたばっててラブロマンスになりようがないよう(涙
レッサー? なんでこの娘がついてきたのか、最後までわからなかったよ。いや、実際なんでよりにもよって彼女? 最後までまったく必然性が感じられなかったし。これ、単純にお気に入りのキャラだったから登場頻度増やしただけっぽいw

上条さんがトラブルに自ら首を突っ込み、一方通行が修羅のみちを歩むのはいつものこととして、どうして浜面がランボーみたいなことになっているのかがかなり謎。浜面がこんなバリバリの戦闘に巻き込まれる必要性は、彼に関してはなんにもないはずなんですよね。それが、私設軍隊とガチにやりあうハメになってるし。ある意味、上条さんよりも過酷な戦場に立ってるんですが。少なくとも上条さんの方には重火器装備のモラルゼロの兵士も戦闘車両も戦闘ヘリもなかったし。
巻き込まれ方がパねえっす、浜面さん!!
スキルアウトの一員として学園都市の裏路地でそれなりに修羅場を潜ってきた浜面さんではありますが、さすがにガチに兵士の真似事、ランボーだのコマンドーだのの真似事を出来るほどデタラメではない浜面さん。これで何とかしちゃったら、さすがにアレだったもんなあ。
ここでヒーローのごとく現れたのがあの人というのが、またぞろすごいんですが。

いやさいやさ、彼の人に限らず今回焦点となる地ロシアに向かって次々と集結していく主要キャラクターたちに、これは興奮せざるを得ない。なかなか学園都市から外にでない科学側の面々も今回に限ってはクライマックスだからか遠慮なく突っ込んできているし。まさかまさかのビリビリ参戦には、サーセン、正直燃えた。まあ、かなり無茶苦茶な手段で乗り込んでくるあたり、とある科学の超電磁砲での理知的で色々と人生勉強している美琴さんの面影はさっぱりないわけですが(苦笑


今回の見所はやはり、一方通行さんでした。この人に課せられる試練だけは、他とは桁違いと言うか、容赦呵責が一切ない。追い詰める追い詰める。ここまでやるか、というくらいに追い詰める。一万人を虐殺した積みと言うのはそれほどまでに重いと言うことなのか。
ここで一方通行が感じる世界への絶望感というのは凄まじいものであると同時に、強く共感できるものなんですよね。これまで散々見せつけられてきた学園都市の暗部の醜悪さ、その集大成とも言える今回の刺客。こんな世界、もう全部ぶち壊してなかったことにしてしまってもいいんじゃないかという誘惑に駆られるのも無理はない。
学園都市の闇って、個人の力が及ぶようなレベルのものではない、底も広さも見当がつかない代物にも関わらず、その方向性というのはひどく陰険で個に対する悪意が凝縮されたようなものなんですよね。政治的な判断に基づく冷徹さや損得勘定を基板とした論理的な決断、現実主義によって導き出された非情さ、そういった組織的な在り方、より大きな枠組を優先する思考、逆らいがたい必然とはまったく違う感じなのですよ。
無辺の巨大な集合意思にも関わらず、恐ろしく個人的な屈折しねじ曲がった卑小で感情的な悪意が感じられるのです。
今回の一方通行へのやり口とのいうのは、その決定版みたいな代物で、もう虫酸が走るったらありゃしない。本当に一方通行に始末をつけるなら、他に幾らでもやりようはあったはずなのに、わざわざあんなやり口をしてくるんですから。
こんな醜悪なものが存在の根底にあるんだから、学園都市ってどうしても好きになれないんだよなあ。ここに暮らす人々は、自分が住む街を帰るべき故郷と思えることが出来ているんだろうか。
そろそろもう一方通行さんを許してあげてくださいよ。いい加減可哀想になってきた。
もう精神的にも肉体的にもボロボロな一方通行さんを、彼の懇願を、さらに選択を突きつけて返す上条さんはやっぱり厳しいよなあ。

ここでの上条さんのセリフを鑑みても、やはり上条さんの大罪は傲慢なのか。
今回はフィアンマからも突きつけられるように、上条さんの在り方と言うものが改めて問われているのだけれど、彼の行為と言うのはどうしようもなく自己の押し付けであるわけだ。
ただ、この作品の世界観って、巻が二桁を超えたアタリから正義が正義としてまかり通るほど真っ当なものじゃなくなってきてるんですよね。
悪意が蔓延り、善意がねじ曲げられる生きるのが苦しい世界になってきている。そんな中でそれでも右手で幻想を打毀し続ける上条さんという存在は、はっきりと異端であり異形であり異常な存在として描かれているのだ。彼が主人公だから全部うまくいっている、という説明で済ませるにはあまりに異形な存在となってるんですよね、上条さんは。
ここまでくるとね、彼の思想だの行動原理というのは問題じゃなくなってくると思うのだ。このイカレた世界観の中で、上条さんの思い上がった独善は、確かに数多くの人を救っているのだ。もしだのIFだの危険の可能性だのというのは、起こった時に報いを受ければいい。少なくとも彼は今まで、なにより結果を出している。重視されるべきは結果であるのだろう。なにしろ、彼には人の意見など必要ない、忠言など聞き入れない、善人でも正義の味方でもない、ただの異常者であり、自分のやりたいようにやるだけの傲慢を司る悪魔そのものだからだ。その価値観など論じても仕方がない、指摘しても意味がない。悪魔に道理を説いてどうしようというのか。
……ある意味、良い方向性のファラリス信者だよなあ、上条さんってw
ただ、上条さんの属性が傲慢、だというのはおそらく間違っていないと思う。彼の持つ幻想殺しの秘密にも関わるものなんじゃないだろうか。彼の右手が竜と化したのも含めて。
なにしろ、天使が実存する世界だ。翻って悪魔が居ても、おかしくはないだろう?

世界情勢は第三次世界大戦の勃発、ということになっているけど、…世界大戦と言うほどのシロモノじゃないなあこれ。戦略ミサイルが飛び交っている割に、どう考えても低烈度紛争規模、粘って中烈度くらい? 戦闘はしていても戦争というほどの内容のある行動は政治面でも外交面でも諜報面でも戦略面でもなされていないっぽいし。
しかし、これ。初期から学園都市は外の世界より科学技術が2、30年ほど進んでいる、と説明されてきたけれど、コレ見てると2,30年レベルじゃないですよね。2、300年レベルじゃないの、これ?

三大主人公がロシアに集結して、さあクライマックスかと思っていたら、どうやらまだスタートの号砲が鳴らされただけだったらしい。巻末にかけて、恐ろしい勢いでとんでもないメンツがロシアに集まってきているわけで、こりゃほんとにどうなるんだか。かつてなくごちゃまぜだぞ、おい。
そういえば、美琴は本格的にお話に絡んでくるのってこれがはじめてになるんじゃないだろうか。彼女が小説で敵と明確に相対する場面、戦場に立つ場面と言うのは殆どなかったように思うし。
前の巻の感想でまたぞろ部外者だねー、という話をしたらとたんに飛び込んできやがって(笑