メグとセロン〈5〉ラリー・ヘップバーンの罠 (電撃文庫 し 8-31)

【メグとセロン 5.ラリー・ヘップバーンの罠】 時雨沢恵一/黒星紅白 電撃文庫

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考えてみるとこれってけっこう酷い話なのだが、ラリーが最初から承知の上だったというのなら外野から文句を言うのも無粋な話なのだろう。
まさか、本当に最初からだった、というのは驚かされた。途中で気づくのと最初から承知の上で承諾するのは、その後の行動が一緒だったとしてもその意味や重みはかなり違ってくると思うのだ。
言われてみれば、ラブレターが届いてから(強制的に)皆に相談する羽目になったときにはどちらかというと戸惑い優先で、ラブレターを貰ったこと自体は嬉しそうでも実際に付き合うかと言うとあまり積極的ではなかったように見えたラリーが、直接彼女に対面して告白された後、あっさりとお付き合いを了承してしまったのには「あれ?」と思ったのは確か。ただ、ラリーの相手の女の子ステラとの会話がとても自然だったので、なんとなくその場の雰囲気でOKしちゃったのかな、とその時は違和感と言うほどではなかったのです。ラリー自体、完全にフリーだし、別に好意を抱いている女性も、意識している相手もいない。その上で、普通に女の子とお付き合いしてみたいなーと思っている年頃の男の子である以上、初対面であろうととりあえず付き合ってみよう、と考えることに奇妙なところはなかったので、それ以上は疑問は抱かなかったわけだ。
全部話が終わってから、この告白の場面を見直すと、ラリーがなんの気負いもなく軽く言っているような言葉がまったく軽重が異なっていることに驚かされる。
そもそも、まったく見ず知らずの事情も分から無い女の子に対して、まっすぐにあんな事を告げて、なおかつそれを貫き通してしまうのだから、なるほどラリー・ヘップバーンは騎士そのものだ。
終わってみると、とにかくひたすらにラリーがカッコイイ。これまでのエピソードでラリーのキャラクターというのはだいたい把握したつもりになっていたけれど、人間そうそう底まで覗き見れるほど浅いものではないと言うことか。
個人的には、ラリーが知らない女の子と付き合うことになって、ナータに何らかのリアクションを期待したんだけれど、この女、ケラケラと事態を楽しむばかりでことごとくスルーしてしまった。微妙に振られることを確信して疑ってなかったみたいな節があるけれど、本心からまったく気にしていなかったっぽいなあ、この様子だと。
ただこのシリーズ、【アリソン】のヴィルといい、【リリアとトレイズ】のリリアといい、ラブコメパートにおける片割れのスルー・スキルの凶悪さは目を覆わんばかりだからなあ。本心がどこにあるかというのは分かったものではないのである。ただの期待や希望で終わらないで欲しいところだが。個人的にはこのシリーズ、セロンとメグよりも、ラリーとナータの方が気になっているっちゃ気になっているので。
でも、ラストの展開みているとつぶさにラリーの言動や真意、決断を見守っていたジェニーの方にフラグが立ったんじゃないかと言う気配も無きにしもあらず。

ストーリー展開の方は、このシリーズにしてはかなりストレートでひねりなく進んだなあ、という印象である。伏線は最初からちりばめてありましたし、ある程度最初の方で予想は組み立てられるようにしてあったみたいだ。何気に予想よりニ、三歩思わぬ奥まで踏み込んだ結末が待っているケースがままあるシリーズだけに、予想通りに終わったと言うのはちょっとした安心感。変にスリルがあるからなあ(苦笑
まあ、メグとセロンは概ね学園内での事件にとどまっているので、それほどえらいことにはならないだろうというのはあるんですけど。

ちなみにこの表紙絵は、丁度クライマックスらへんのラリーたちを監視しているシーンだろうか。メグの仕草が、写真を取ってるジェニーに向けているものらしくて、お話の一場面を写真に収めたような妙な臨場感があって、楽しいなあこれ。