付喪堂骨董店〈7〉―“不思議”取り扱います (電撃文庫)

【“不思議”取り扱います 付喪堂骨董店 7】 御堂彰彦/タケシマサトシ 電撃文庫

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明らかにされた物語の根底に最初から仕込まれていた真実を目の前にして茫然自失。
マジかよ、これ。
その真実を踏まえて、前の6巻で自分が書いた感想を読み返してみると、自分がまったく咲についても、都和子についても、何もわかっていなかったのだと思い知らされる。
見当はずれじゃないけれど、この物語が秘めていた真実の重さ、闇の深さを完全に見誤っていたと言える。その意味では、読者である自分は刻也とまったくシンクロしていて、作者の手のひらの上で踊らされていたと言えるのかも知れない。
ようやく相手のことが分かったつもりになって、それなのに実は何も分かっていなかったと突き付けられて、その先に救いもなにも残されてなどいないのだと理解させられ、残ったものは想いだけ。
此処に至って、以前咲が刻也に告げた「優しいけれど、傲慢だ」という言葉が、次元の異なる痛みをもって貫いてくる。
あれは、そういうことだったのか。これほどまでに破滅的で、救いようのない真実だったとは……。
なんという悲恋なのだろう。なんという過酷な運命なんだろう。
真実が明らかになった途端、これまで二人が経験してきたアンティークにまつわる事件が、すべて土台から景色を変えてくる。あれらの事件の記憶が、経験が、痛みが、ここに結実していく。
あの「夢の香炉」の事件。刻也が選んだ選択は、ちょっと異色だと思っていたんだが、なるほどあの場面で彼女を夢のなかから救うことを止めた刻也の決断は、そのまま彼が当事者となるこの最終局面における選択へと直結していくのか。
都和子さんも語っているけれど、彼は真実を知る前から既に、身を滅ぼす事によってしか手に入れられない幸せ、という概念を持ち得ていたのか。もしかしたら、薄々自分に突きつけられる選択肢を予感していたのかも知れない。

彼が最後に見つけ出した手段は、決してすべてが丸く収まる大団円などではない。有り体にいって、煉獄そのものだ。彼らには、おそらく心安まる暇もなく運命が襲い来続けるのだろう。そして、それを乗り越える度に、彼らはすべてから置き去りにされていく。
世界から見放され、置き去りにされ、殺され続けることを煉獄と呼ばずして何というのだろう。それでも、彼らは愛した人のいない平穏よりも、二人で寄りそう煉獄を選んだのだ。
なんという壮絶な悲恋であり、想像を絶するハッピーエンドなんだろう。
彼らは「アンティーク」と呼ばれる不思議な道具によって身を滅ぼし、掛け替えのない大切なものを手に入れ、幸せになったのだ。恐らくは、その大切なもの以外の殆どすべてをかなぐり捨てて。

見届人を仰せつかった都和子さんは、本人嬉しそうだけれど、難儀な役目を負わされたものだと思う。刻也、何だかんだと結構恨みに思ってたんじゃないのか、これ(苦笑
都和子さんのことを、よっぽど好きで、恨みに思ってないと、幾ら同じ当事者で原因の一人であっても、ここまで巻き込めないだろうに。
あーあー、でも都和子さんは巻き込まれて本当に嬉しそうだから、これでいいのか。ラブラブカップルのイチャイチャを延々と間近で見続けなきゃならないという、ある意味拷問みたいな人生が待っているというのに。まあ、本人、自分はさておき、二人を見ているのが何よりも楽しそうだからいいのか。
そういえば、都和子さんともうひとつの付喪堂骨董店のオーナーの関係は、結局定かでないままだった。古い友人、と言っていたけれど、詳しい話は何もしてくれなかったし。そもそも、二人ともまともな人間だったのか。
まあ、今となっては気にするのも仕方ない。

凄絶なまでの、懇親の、ピュアラブストーリーでした。読み終えた今は、ただただ胸が、いっぱいです。素晴らしい作品に出会えたことに、感謝を。