蒼海ガールズ!3 (GA文庫)

【蒼海ガールズ! 3】 白鳥士郎/やすゆき GA文庫

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すっっさまじいな、これは!

これまではフリゲート艦ビシャスホース一隻による海洋冒険小説でしたけれど、さすがはラストのクライマックス。
戦列艦百隻前後が入り乱れ、大小千を超える大砲群が砲火を交える

――大海戦である!!

言っちゃあなんだが、やっぱりフリゲート艦同士のドンパチと、戦列艦同士のどつきあいとでは、迫力が違う! 火力が違う! 鉄量が違う! 
敵も味方も死ぬわ死ぬわ! その死に方も人体の形が残らないようなとてもじゃないが、人間の死に方じゃない死に様。甲板は血の池とかし、肉片があらゆるところにこびりつく。
仮にも女の子だらけの少女艦隊で、これだけ凄惨なシーンを量産していいのか、と思うくらいにぐっちゃぐっちゃのずんばらりん。
それだけならば、血生臭いグロい話になってしまうのだけれど、これは血の匂いよりまず硝煙の匂い。目の前に広がるのは血の赤ではなく、立ち込める砲煙の白。
疾駆する戦列艦の勇壮さに響き渡る砲火の激音。

くあああ、燃える燃える!! 

あー、やっぱり。作者も【ナポレオン〜獅子の時代〜】は読んでましたか。そりゃあ読んでるよなあ。帆船モノの資料のウチ、フィクション系統を浚っていけば、これは間違いなく外せないだろうし。
作中で登場した<樽の中の鉄人>エリョセーラ・フォン・バートシェイル提督。ラバル沖海戦で両手両足を吹き飛ばされながら、樽の中に入って指揮を続け、アラミス海軍と戦い退けたと言う猛将。この人は明らかにナイル沖海戦でネルソン提督率いるイギリス艦隊に立ち向かい、両足を吹き飛ばされながら部下に命じて椅子を用意させ、それに座って指揮を続けたと言うフランソワ=ポール・ブリュイ提督がモデルだろうし、ファムの姉で少女艦隊司令長官のホレイシア・ミゼーヌ・アラミスはまんまホレイショー・ネルソン提督その人だし。

敵がいるのなら殺せばよいではないか。
それこそが、我がアラミス海軍をして世界最強たらしめた唯一にして無二の理由。刃向かう者を悉く殺し尽くした結果が世界最強であるならば、目の前の敵もまた殺すまで。撃沈、焼き討ち、拿捕その他ありとあらゆる手段を用いて、一隻残らず殲滅してくれん

すなわちそれ、見敵必殺!

ヘルシングで有名になった言葉だけれど、そもそも元祖は英国海軍。トラファルガー以来の英国海軍の伝統でありモットーですからね。
しかし、まさかライトノベルでリアル<ネルソン・タッチ>をお目にかかる日が来るとは。感動ものだ。
このド迫力には痺れまくった。
確かにこの戦術は出たとこ勝負といえばそれまでなのだけれど、敵の単縦陣を分断し、両舷に配置した大砲群によって敵船の艦首と艦尾をメッタ打ちにすることで、のちに乱戦になだれ込むにしても完全にイニシアティブを奪える先制攻撃なんですよね。艦首艦尾に配置している大砲と、両舷に配置してある大砲の数には決定的な差があり、火力で圧倒的優勢というのもあるし。
海軍戦術史において、日本海海戦の連合艦隊によるトウゴウターンとトラファルガー海戦におけるイギリス艦隊のネルソン・タッチは伝説の領域ですからね。

正直、男の娘部隊とか、そういうのはわりとどうでも良かったかなあ。いや、それ単体で見たら面白かったんだけれど、後半の艦隊戦、大海戦が凄まじすぎたんで、印象ぜんぶそっちに持っていかれた感じ。
大嵐の中、必死に難破を免れるために奮闘し、国籍偽装に反逆、軍船乗っ取りと前半も海洋小説としての要素をこれでもかと惜しげもなく叩き込んでて、ブッチギリに面白かったんですよ。

チアアアアアアアアアアアアア!!

あー、この記事書くためにパラパラともう一度本をめくっただけでまた興奮してきた。

残念ながら、このシリーズはこれにておしまいらしい。作者も、書きたいことはあらかた書き倒したんだろうなあ。やってやったぜ、という作者の満足なため息が聞こえてきそうなほど、これでもかこれでもかと海のお話が詰め込まれてたもんなあ。
私も、大変満足させていただきました。満腹満腹♪
次の新シリーズにも期待させていただきます。

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