カンピオーネ! 6 (集英社スーパーダッシュ文庫 た 9-6)

【カンピオーネ! 6.神山飛鳳】 丈月城/シコルスキー スーパーダッシュ文庫

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うおおおお、お、面白い面白い、メチャクチャ面白い!! べらぼうに面白れえーーーーーーー!!
いやいやいやいや、毎回このシリーズったらメチャクチャ面白いけどさ、今回の出来栄えはもう屈指じゃないのか、というくらいに面白かった。
なんでこんなに面白かったんだろうと考えてみたんだが、やはりあれだ。護堂以外のカンピオーネたちが一斉に動き出したからなんだろう。まつろわぬ神との対決もそれはそれで面白いんだが、やっぱり一番面白いのは同じ人間であり同じ神殺しである他のカンピオーネたちと対峙した時なんですよね。
同じ人間とか言っちゃったけれど、カンピオーネというのは本当にどいつもこいつもとんでもない規格外だったんだなあ。今まで登場したカンピオーネは我らが草薙護堂に、サルバトーレ・ドニ。サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンの三人だけだったんだが、この巻ではついに今まで不明だった他の四名のうち三人、イギリスの黒王子にアメリカのジョン・プルートー・スミス、中国の羅濠教主の動向が明らかに。
現存する七人のうち、六人の人となりが明らかになったことで、カンピオーネという存在がどういうものか段々と見えてきたんだが……いやもう、こいつらおかしい!!(笑
在り方が根本的におかしい。普通に考えておかしい。なにからなにまでおかしい。
強さが最強とか、化け物とか超人とか、そういう視点や概念で語ってしまうとどうもカンピオーネという存在について正しい姿を捉えきれない気がする。
そもそも、そういう考え方で捉えられる範疇の存在なら、神を殺すなんて土台無理なんだよなあ。その辺は今回、羅濠教主の弟子である陸鷹化がうまいこと表現してくれていたので引用すると、
あの人たちにはキャリアなんて関係ないよ。神を殺し、その権能を簒奪した時点で彼らは埒外の存在なんだ。僕や姐さんはそこそこ上等な遣い手だと思うけど、最弱の『王』ですら僕らの遥か上を往く。
技とか術とか、策とか罠とか、そんなものを云々する相手じゃないんだ。僕は多分、七人いらっしゃる『王』たちの五人までは武芸で凌ぐと思うけど、まともに喧嘩を売る度胸は無いよ。あの人たちは、相手が誰であろうと必ず『勝ち方』を見つける。そんな才能も百年の修行も、そいつでチャラにしちまうんだ。だから王様なんだよ。
そりゃ年功序列とか身につけた技で勝敗が決まるなら、うちの師父が勝つだろうけどさ
そんな殊勝で扱いやすい人なら、そもそも神様と戦った時点で死んでるじゃないか。魔王の方々にそんな人間らしさを期待するほど、僕はバカじゃないぜ?
でたらめ、と表現するのが一番適しているのだろうか。だが繰り返すが、強さがでたらめとか最強とかというのとは違うのである。少しの違いのようで、決定的に違うのである。
じゃあ何がデタラメで規格外で常識外か、と言うと……もうその存在そのもの、としか言いようが無い。
あのサルバトーレ・ドニにしても、デヤンスタール・ヴォバンにしても、今回冒頭でロスでの活躍を見せてくれたジョン・プルートー・スミスにしても、護堂と戦うことになる羅濠教主にしても、あっけにとられるようなデタラメな人たちなんですよね。だから、こいつらおかしいんだって!(笑
実のところ、常識人を気取っている本編主人公であるところの護堂だって、一見マトモに見えるし、まあ概ねまともな常識人である所は否定しないんだが……それでも、やっぱりこいつもカンピオーネで王様で紛れもなく魔王なのである。読み込めば読み込むほど、つくづくそれを思い知らされる。
いや、常識人に見えて実は、というんじゃないんだ。彼が常識人なのは間違いない。非常にまともで健全な思考の持ち主なのである。それなのに、デタラメで規格外で異常でおかしい、という在り方が両立していることが、カンピオーネという存在の特異性を如実に示しているのではなかろうか。いくらここで力説しても、まるで伝わる気がしないや(苦笑
こればっかりは、読んで貰わないとわからないかもしれないね。

いや、なにより護堂の異常性はあれだろう。女性とのフラグ立て能力だろう。古今東西、フラグ一級建築士などと呼称される猛者たちが数多くいらっしゃいますが、この巻でリリアナが調査し暴露してくれた護堂の女性遍歴の凄まじさを見せつけられては、護堂さん(敢えてさんづけをさせていただくきたく)のそれはもう別格であると断言せざるを得ない。いやもう、ほんとにマジで凄いから!(笑 震撼させられた。次元が違うと言ってもいいかもしれない。
丁度、公式ページで件のシーンの一部が抜粋されているのでご覧になっていただきたい。
護堂さん、あんたって人は生まれてこの方、どれだけのフラグを立ててはブチ折ってきなすったんだ(笑
それに対するリリアナの見解が正鵠を射まくってて、吹くわ吹くわw 護堂って、そうなんだよなあ。まったくリリアナの言うとおりなんだ。
ぶっちゃけ、護堂のヒロインを努めるには、普遍的なヒロインの在り方ではまったく上手くいかないんだな、これが。リリアナのこれまでの対応は、他の作品ならまずもって正答だったはずなんだが、如何せんこのカンピオーネでは大間違い。護堂が女の子を無差別に惹きつけてしまうのは、もうどうしようもないんだ。いくら抵抗しても、こればっかりはどうしようもない。護堂の傍に侍るには、まずその事実を受け入れなければ始まらないわけだ。
それを見事に修正してきたあたり、伊達にエリカのライバルではなかったということか。エリカも、そんなリリアナを要警戒しだしたし。裕理も着実に距離を縮めてますしねえ。今のところまだエリカが本妻というのは揺るがないところでしょうけれど。
ただ、今後恐ろしい人材が投入されてくる可能性が出てきたからなあ(w
それはもう、反則だろうと言う領域。いくらエリカでもこの人達相手じゃあ今まで通りにはいかないぞ。まあまだ決定ではないんだろうけれど、護堂さんの力を考えるとまったく楽観できん!! あははははは、やべえ、これマジ楽しいんですけど!! うわぁ、どうなるんだこれ。どうなってしまうんだ!?

と、人間関係の方だけでもえらいことになっているのに、バトルの方もリミッター完全オフ。前回わりとおとなしかった分を取り戻すように、もうやりたい放題のでたらめ劇場。
今回は完全に武侠モノのノリである。いや、冒頭のジョン・プルートー・スミスのパートは完全にアメコミのノリだっただけに、なにこのワールドワイドなお祭り騒ぎは。あとがきじゃあ「東映まんがまつり的クロスオーバー」とか言ってるし。全くそのとおりと言うか、それ以上じゃないか。
陸鷹化とリリアナ&エリカの激闘は、まさに武侠小説の超人と西洋魔術の異種格闘戦というノリ。とはいえ、上手いこと世界観のすり合わせがなされているんですよね。しっかりと武侠モノと西洋魔術、それぞれの設定を組み上げているにも関わらず、上手いこと噛み合うように練り上げている。神話の薀蓄に毎回感心させられるように、このシリーズ、魔術にしても今回はじめてお目見えの武侠系のネタにしても本当によく勉強して上っ面をさらっただけとは思えない識で、これらの設定群を扱っているんですよ。しかも、その設定の見せ方が非常に上手い。素晴らしいエンターテインメント性を有している。これについては、手放しですごいなあと毎回感心させられるわけです。
ひかりの歌っている呪文は、柿本人麻呂関連のものなんですよね。羅濠教主の呪文にしても、おそらくは道教系の実際のものから、漢詩の類。李商隱とかはよく知らないけど、李白や杜甫はさすがに知ってる。漢詩を呪文に引用するとは、ハッタリがきいてるじゃないですか。もう、しびれるなあ。というか、羅濠教主のセリフ、いちいち風雅でカッコイイんだよなあ。
カンピオーネは、みんなもうデタラメにデタラメを重ねたような無茶苦茶な人物なんだけれど、それ以上に物凄く魅力的な人たちなんですよね。あの凶人ヴォバンですら邪悪の魅力というのに満ち満ちていた。暴虐の魔王でありながら、どこか惹きつけられるものがある人だったんですよね。この羅濠教主もまた、デタラメで無茶苦茶なんだが、
わたくしのような身分の者が、民と直接交わるなどあってはならないこと。我が身を直視した者は己の両目を抉り、我が声を耳にした者は己の耳を削ぎ、償いとせねばなりません。
「わたくしは古今東西の皇帝、覇者、将帥を凌ぐ武の頂点。ゆえに、あらゆる支配者も及ばぬ崇敬を捧げられねばなりません。それが序列というものです」
「えーと、歴史上のどんな王様よりすごいって、何を根拠に?」
「それはもちろん、我が武芸と権能ゆえに。羅翠蓮が振るう拳脚は千の兵を屠り、刀槍は万の兵を薙ぎ払います。わたくしが武の真髄を絶技として示さば、百万の軍とて悉く屍山血河。全ての国は虚しく破れ、山河のみが残る結果となりましょう」
「いや! もっと政治とか経済とか文化のことも考えましょうよ!」

概ねこういう人物です。無茶苦茶です。でも、天上天下唯我独尊な人物にも関わらず、全然嫌味も憎たらしさもないんですよねえ。痛快で勇壮で美麗で風雅。いやあ、惚れるわー。なんか、無茶苦茶好きになってしまった。

もう、そんな羅濠教主との大決闘だけでお腹いっぱい、と言ってもなんら過言でないにも関わらず、彼女との闘争はある意味、前哨戦に過ぎないんですよね。【カンピオーネ!】シリーズ初めての前後編か。一巻で終わらなかったもんな。満足度は一巻どコロじゃなかったけれど、ここからさらにスケールアップとか、ドコまで行くんだ一体。
羅濠教主が対決を所望し、日光東照宮に封印されていたまつろわぬ神。その正体は一目瞭然で、神話だのの方面には何らの知識もない護堂でさえ知っている有名人物ならぬ神物。
それはそれとして、こいつが件の<鋼>の郎党を名乗っているのはどういう事なんだろう。この国に封印されていると言う<鋼の御子>というのは、もしかしてあの神様をすら郎党に数えてしまうような存在だということ? これは、ちょっと想像を絶するような大物という可能性が出てきたぞ。日本の神様じゃなくて、外来モノというのは間違いないみたいだし。
そう言えば、例のスサノオのところにいた二人の人外。僧侶の方はおそらくあの人というのが発覚したけど、もう一人の女性の方はまだわからんなあ。色々と正体を絞るための情報は出てきたけれど。

正直、今はもう続きが待ち遠しくて仕方ない。どこまで面白くなっていくんだ、このシリーズ♪
あーー、もう素晴らしく面白かった。最高だ!!

シリーズ感想