真月譚月姫 8 (電撃コミックス)

【真月譚月姫 8】 佐々木少年 電撃コミックス

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「そして、彼女は死地に赴いた。あの一言が、千年に航る旅の報いだったと微笑みながら」


第63話、139ページのアルクェイドには、もう胸がギューーーーッと締め付けられた。
人間、幸せで幸せすぎて、もうこのまま死んでもいいと思うくらいに最高に幸せな瞬間が訪れる時がある。まさに、この時のアルクェイドはそれだったんじゃないだろうか。
千年、まさにこの瞬間の時に生きてきた。あの言葉をもらうために生きてきた。なんて幸せ、なんて幸福。
だからもう充分。他に何も要らない。
そんな気分。
今まで、佐々木少年さんの描くアルクェイドの笑顔は素晴らしいものばかりだったけれど、139ページのそれは、その中でも最高、今までで一番のギューーーッとなる笑顔だった。嬉しくて嬉しくて仕方なくて幸せで幸せで仕方なくて、我慢しても我慢してもこらえきれずに、あふれ出てくる幸せの笑顔。
そして、その下のコマ。静かな夜空に向かって両手を広げて、高々とスキップを踏むアルクェイドの後ろ姿。何もセリフが無いにも関わらず、表情すらも描かれていないにも関わらず、物凄い勢いで彼女の気持ちが伝わってくる。ぶわーーーーっ、と吹き出してくる歓喜に、思わずのけぞりそうなこの一コマ。物凄い一コマ。正直、次の見開きの清々しいアルクの御姿よりも、このシーンの方が凄まじかった。
この傑作シリーズの中でも、特に珠玉と言っていいシーンだと断言する。
悲愴でも絶望でも諦観でもなく、ただただ喜びを以て終焉の地へと赴くアルクェイド。彼女は本当に、幸せでたまらなかったんだろうけれど、でもだからこそ、志貴はそんなアルクを逝かせたくはなかったんだろうなあ。
ここはアルクの気持ちも、志貴の気持ちもとてもよくわかるので、高揚と切なさが綯交ぜになってテンションが変なことになってしまっている。
なんにせよ、クライマックスに相応しい盛り上がりだよ。

最初の、四季が志貴にコーヒー缶を投げてくるのは、もしかしてプラスディスクのオマージュか。原作では確かこんなシーンはなかったもんな。あの夢では夜の街でコーヒーを酌み交わしたこの二人。だけれど、ここでは投げられたコーヒー缶は受け取られることもなく、虚しく床に転がり跳ねる。
さり気なく、これは原作ゲームをやりこんだファンに対する至上のサービスだわなあ。

そして、アカデミー助演女優賞をブッチギリで受賞しそうな勢いのシエル先輩。とてもじゃないけど、サブヒロインとか脇役なんて言葉で言い表してしまうのが失礼に思えてくる、シエル先輩の絶大な存在感。この人なくしては、物語もラブストーリーも何も成立しないんだよなあ。彼女こそが何もかもを支えてる。可愛いんですよ? シエル先輩。

弱りきった身体でなおもロアと対決し、これを圧倒するアルクェイド。彼女がTYPEMOONの世界観のキャラクターの中でもその強さが群を抜いているというのもよくわかる。力を殆ど失った状態でこれって、万全ならどうなるんだ? 
ただ、その強さを以てしても、万全の体制で待ち構えていたロアを殺しきることは出来ない。
そして到着する志貴とシエル先輩。
物語は、ついに最終幕へ。最終巻は夏、か。今はただひたすらに待ち遠しい。

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