零崎人識の人間関係 零崎双識との関係 (講談社ノベルス)

【零崎人識の人間関係 零崎双識との関係】 西尾維新/竹 講談社ノベルス

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戯言ワールドのキャラクターたちの多くが自己規定と言う檻に縛られて生きていた中で、肝心の零崎人識くんはどうだったのかというと、彼は逆に確固とした自己規定というモノが無い人間と言っていいかもしれない。つまり、彼は自己の中に拠り所となるものをモテなかったわけだ。
それが良しだったか悪しだったかは、何とも言えない。だが、ある一定の時期までは、彼はその在り方のまま、自分という存在に対して真の意味で自由となろうとしていた。
自分の存在以外に、拠り所となるものを持とうとしていたというべきか。
中学生の彼は、殺人鬼たる零崎人識である自分と一般人である汀目俊希を使い分けて生きていたわけだが、その状態は同じく殺し屋・匂宮出夢と探偵・匂宮理澄という兄妹の人格を使い分けていた出夢とは決定的に異なっている。
中学の頃の彼は、殺人鬼と一般人、本来両立し難い両方の自分が混在する事に戸惑いながらも、手探りでそんな自分を受け入れようとしていた。
その拠り所となっていたのが、曖昧で正体の判然としない人識をワカラナイままそのまま受け入れてくれる兄・双識の存在であり、この中学時代、人識の中で最も大きな存在としてリソースを傾けつつあった、匂宮出夢との人間関係だったわけだ。
ところが、匂宮出夢との関係は最悪の形で破綻してしまう。彼女は最悪の裏切りを以て、構築されつつあった人識のパーソナリティを完膚なきまでに粉砕してしまったのだ。一般人・汀目俊希としての彼は完全に滅却され、内にも外にも拠り所を失った不安定な零崎人識という殺人鬼みたいなモノだけが置き去りにされ、路傍に晒されてしまったわけだ。
この時期の人識がもっとも自由で全盛期であり、すなわち自暴自棄だった、と言われる所以である。
そしてこの巻は、糸の切れた凧のように自暴自棄に漂流する零崎人識が、唯一残された絆であり拠り所である兄・零崎双識との関係に基づいて、裏切同盟――呪い名6名による連合軍との死闘に勤しみ、肉体的にボロボロになりながら、逆にボロボロだった精神を立て直していく物語である。
同時に、失われた出夢との関係が、人識の中で大切なものだったと認め、受け入れるための物語であり、繋がりが絶たれてしまった今もなお大切なものであり続けるのだと理解する物語でもあったのだろう。

殺人鬼・零崎人識の、少年時代の終りである。


匂宮出夢との関係 無桐伊織との関係