零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係 (講談社ノベルス)

【零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係】 西尾維新/竹 講談社ノベルス

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ふむ。
実のところ零崎人識と無桐伊織の二人については、異性関係に発展する要素があるのかと勘ぐっていたのだが、これを読む限りでは純粋な意味で兄妹である。少なくとも、人識の方からは。伊織はよくワカラナイ。この子は素直でイイ子であるわりに、その心底に迷彩が掛かっているという、ある意味実に女の子らしい娘なので、人識に懐き、親しみ、頼りにし、翻って自分が付いてなきゃなー、と考えているのはわかるのだけれど、それがどういう感情と人間関係に基づいたものなのか、はてさて。
これまで、自分の家族は双識の兄貴だけだと明言してきた人識。ある一時期、もしくはある一瞬、とある少女を家族のように思っているのだと吐露したことはあったけれど、概ねこれまで人識にとって家族と呼ぶべき人はたった一人だったわけだ。
そしてそれから、人識が家族について言及することはなかったわけだけれど、唯一の家族だった双識と死に別れた後も、人識はどうやら天涯孤独、にはならなかったようだ。
双識が死んだ当初は、人識も自分が天涯孤独になったと思っていたようだったけれど、新しく出来た妹を放っておけなかった時点で、具体的には一度置き去りにしながらついつい心配になって戻ってきてしまった時点で、もう彼の中では伊織の存在は逃れられない妹だったわけだ。
両手を失い、慣れない義手で日常生活にも四苦八苦する伊織の面倒を甲斐甲斐しく見る人識の、伊織の立場が危うくなったとき、ごくごく自然に彼女を庇おうとした人識の、その態度ときたら面倒見のよいお兄ちゃんそのものである。見習ったわけでもないだろうし、変にちょっかいを掛けず、追い回さず、あくまで伊織を立てて無闇矢鱈とおせっかいをやかない点では全然似ていないのだけれど、それでもその面倒見の良さは不思議と双識と重なって見える。
同時に、この風来坊で自由人で寂しがり屋の殺人鬼を、気にかけ追いかけ付き纏い、それでも閉じ込めず縛らず在るが儘に受け入れる、という意味では伊織もまた、作中で語られるとおりに、零崎双識の後継者なのだろう。
亡くなり果てても、彼の魂はしっかりと二人の弟妹に受け継がれているわけだ。

一方でこれは、今は亡き石凪萌太と闇口崩子のもう一組の兄妹の物語でもある。
生前、萌太は幼い頃から闇口の殺し名の宿命から妹を庇い続け、さらには父親の存在から妹を守るために新しい世界に彼女を連れ出し、崩子に帰るべき家と大切な人達との出会いをもたらした。
今や彼女を愛してくれている人がどれだけいるか、崩子を無断で連れ出した哀川さんに対して、恐ろしい数の恐ろしいメンツから恐ろしいまでのバッシングが発せられた挙句に人類最終が送り込まれてきた、という事実を見れば明らか、自明である。
そして彼は、自分が死んだ後ですらもなお、崩子のことを守り続けた。自分がいなくなったあとも、彼女がしっかりと生きて行けるように。
その無辺の愛情はどこからくるのだろう。お兄ちゃんとは、これほどまでに年下の弟妹を愛してあげるのが普遍的なんだろうかね、この物語の世界は。
理澄に対する出夢にしても、玖渚友に対する直くんにしても、どのお兄ちゃんも、過保護なくらい過保護じゃないか。
そういえば、原作やってる漫画の「めだかボックス」にしても同様の傾向が(笑

思えばコレ、戯言シリーズの世界観の時系列では、最終巻以降の時代を描いた唯一のアフター作品なんじゃないだろうか(他、なんかあったっけ?)
思いがけないハッピーエンドで終わった件のシリーズ、その後のお話でもみんな、それなり以上にしっかりと、前向きに、幸せ的な方向性で生きているのを確認できて、何ともホッとさせてもらった。
人識の身に起こっていることは気がかりだけれど、彼が独りでないのなら、それはきっとたいしたことではないのだろう。

にしても、哀川さんと真心ちゃんは、二人して行き着くとこまでイッちゃってるなあ。人類ってなに? と深刻に疑問を覚えてしまう存在だ。なんか、今更にして今にして、ようやくこの二人が同一で、同系列で、きょうだいで、おやこ、なんだと得心できた。似てるよ、うん。

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