ひとひらアンコール (アクションコミックス)

【ひとひらアンコール】 桐原いづみ アクションコミックス

Amazon
 bk1

アンコールというタイトルは素晴らしいなあ。というわけで、ひとひら完結後に出された本巻は、個性豊かなサブキャラクターたちにスポットを当てた短編集。サブキャラはサブキャラでも、演劇研究会のメンツじゃなくて、演劇部の面々が主人公。

【ミケ先輩の交響曲】
ミケ先輩は川崎響が苦手である。
ミケ先輩、自分が響に嫌われてるんじゃないか、と悩んでいるんだけど、確かに響って本編でもミケ先輩に対してだけ、妙に嫌がらせしてるんですよね。ミケ先輩が悩むのも根拠が無いわけじゃないわけで。
でもねえ。6巻の裏表紙の四コマ見ちゃうとねえ(苦笑 それに、6巻の合宿での海の場面で、ミケ先輩に八つ当たりしてるのを見るとねえ(w
しかも、この短編でも、響が見せた笑顔にミケ先輩がトチ狂って思わずすきだー!!と叫んだ時も(曲の話と誤魔化し相成ったわけだが)、焦りまくるミケ先輩の見えないところで響も顔、真っ赤っかなんですよねー。なんででしょうねーー(笑


【生徒会長、頑張る】
考えてみると、それはおかしい話なのである。すでに実績も充分な演劇部があるにも関わらず、野乃の申請が通り、演劇研究会なる部活が成立してしまうのは。
そこで登場するのが、掛井生徒会長。そういえば、此の人一年生で生徒会長やってたんだよなあ。本編の時はそんなに気になるキャラクターでもなかったんだけど、まさか演劇部と演劇研究会の対立にここまで大きな役割を果たしていたとは。
野乃の病気が発覚し、演劇を辞めさせようとする美麗とあくまで演劇を続けようとする野乃の対立が決定的になったこの時期、二人の仲は本当にひどいことになってたんだなあ。
間に入ることになってしまった生徒会長が「重過ぎるーー!」と頭抱えて悶絶するのも無理ないわ。正直、これは逃げたくなるよ。でもこれ、生徒会長が演劇研究会の設立を認めて、文化祭で決着をつけるという道筋をつけなければ、野乃と美麗の仲は本当に壊れてしまっていたかもしれない、というのがこの話を読んでよく分かった。生徒会長が二人の間にルールを作ってくれたからこそ、二人が剥き出しのママぶつかり合うことが回避されたわけだし。
いわば恩人だよなあ。というか生徒会長、優秀すぎる。惚れるわー。


【副部長ちとせが参る】
「出来る出来ないじゃない! やるんだよ!!」
相変わらず漢すぎるぜ、オリナルさんよぉ(笑
うん、でもちとせは部長やらなくて正解だったんじゃないかなあ。この子、なんだかんだと色々と背負っちゃうからねえ。部長なんかやらせたら、一人で抱えちゃうだろう。副部長の立場ですら、背負い込んじゃってるんだから。やっぱり、他人の背中叩いているのが、一番似合っている気がする。その意味では、ややも面倒くさい性格をしている木野くんとの部長・副部長コンビは思ってた以上によく合ってるんじゃないだろうか。
脚本に煮詰まって部活に出てこない木野に対して、ちとせ怒り爆発。いい加減にしやがれ、自分が脚本書いてやるぜー! と意気込んだものの、まったく書けない事実に脚本を書くという事の難しさと、それをやってのける木野の凄さに今さらのように気づくちとせであった。
この子は、周りの人たちの凄さを思い知らされずにはいられないんだなあ。んでもって、めげないひがまないへこたれないのがこの子の一番素晴らしいところ。一番の長所。一番の素敵さ。
いい女じゃよ。


【海辺ノスタルジア】
野乃や美麗たちが卒業した後の演劇部を背負って立った先輩たち四人組、そのうちの女トリオ三人の、卒業後の思い出。
山口先輩、幸枝含めてみんなが受験でヒーヒー言ってる時に、えらい暢気に構えてるなー、と思ってたら、実家の花屋に就職かよ。そりゃあ良いご身分で。とはいえ、社会人になった以上はゆっくりとはしてられなさそうだけど。
結局、タマ先輩は美大。幸枝先輩は大学行けなくて専門学校かー(苦笑
でも、進路はバラバラ。こうしてたまに会って遊びに行くことは出来ても、高校時代の演劇部の時みたいに同じ方向を向いて一生懸命走ることはできなくなる。回想で入る、野乃が桂木と理咲を連れて演劇部を出て行った時の、この子たちの想いや決意が、懐かしくもまぶしい。そうなんだよなあ、演劇部のメンツがはっきりしたときちょっとびっくりしたんだけど、野乃たちが出て行ったあと、演劇部の三年って美麗だけだったんだよね。この時の野乃って必死だったのはわかるんだけど、みんなが言うとおり確かに酷いんだよなあ(汗
そんなひとり取り残され、野乃と戦い、野乃のためにも彼女の立ち上げた演劇研究会を打ち破ることを誓っている美麗を支えたのは、このお馬鹿三人とミケ先輩だったわけだ。そりゃあ個性的でないとやってけないわ。んでもって、タマ先輩が部長引き継いだのも納得。この時の彼女の意志こそが、この年代の四人をまとめたわけだし。
そんなこんなで、道が別れて寂しいと言っている中でポツンと話題にのぼる、美麗たちが劇団を立ち上げるという話。それに対して興味が有るようなないような曖昧な態度をとってる三人だけど……。同じ道をもう少し歩いていきたいと思っているのなら、ねえ。
んでもって、ラストのオチに盛大に笑った。やっぱ、こいつらバカだーw


【きょーちゃんの夏】
武田のきょーちゃんについては、もうちょっと見ていたかったなあ。麦と似ているタイプだけあって、内面の複雑さがハンパないし。あくまで脇役だから、今までちゃんとスポットが当たらないまま終わっちゃったけどさ。でも、面白いキャラだと思うんだよねえ。
そんな面白い部分を、理咲に突っ込まれる話……あれ? 理咲とフラグ立った!?
逆に、理咲の今まで見たことの無い面が見れたのも良かったなあ。この女、同世代相手には当たりが強すぎたけど、後輩の、特に男の子とか相手にはこんななんだ。柔らかいじゃないか。


【ずっと一緒に】
引っ込み思案で内気で弱虫な麦を、小さい頃から、幼い頃からずっと守ってきてくれた親友の佳代ちゃんのお話。彼女が留学を決意し、留学先で何を見、戻ってきた後どんな心持でいたのかが、ぎゅっと凝縮されて詰まってる、短編らしい良い短編でした。
支えているつもりで、守っているつもりで、その実支えられ守られているっていうのはよくある話だけど、佳代ちゃんにとって前に進んでいく麦の姿は、あんなに眩しそうに見えてたんだなあ。
胸を張ってすっくと立ち、めげても落ち込んでも頑張って進んで行く佳代ちゃんは、ちとせとはまた別の意味でかっこいいですわ。
おばあちゃんになってもずっと友達でいようね、にはなんか胸が熱くなった。

んでもって、終りの方の雑誌連載分以外のさら短い短編集を読んでニヤニヤしたり、四コマで笑ったり。ついにページが尽きて、あとがきの作者の語りを読みながら、しみじみと名作の終りを噛みしめ、このキャラたちともう会えない寂しさに胸を締め付けられながら、本を閉じようとして……ん? 次回予告漫画? どういう意味? どれどれ……。

………。

………。

どえええええええええええええ!?

まっ、まじ!? まじなのこれ!? ちょっ、ちょっ、ちょっ!? うええええ!? うっそお。

なんてこったい!(嬉しい悲鳴