踊る星降るレネシクル (GA文庫)

【踊る星降るレネシクル】 裕時悠示/たかやKi GA文庫

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横も後ろも顧みず、急き立てられるように突っ走っていくヤツを追いかけるのは大変だ。ふと気を抜くと、徹底的に置いていかれてしまう。その突っ走る理由が明確な理由のない生来の強迫観念にまつわるものだったとしたら、なおさらだ。彼らは、理由もなく自分が存在する事を証明するかのように突っ走っていく。
それでも追いかけ、一緒に突っ走ろうとするのなら、そいつは追いかける対象以上に必死にならなきゃいけない。一心不乱に、そいつの事を見つめていなければならない。

だけれど、この物語の主人公レンヤは躓いてしまった。追いかけ、一緒に走るつもりで、肝心の彼女の脚を引っ張ってしまった。彼女の生きざまの邪魔をしてしまった。その後悔が、追いかける脚を止めてしまうことになる。
たとえ振り返らずとも、何も言わずとも、絶対に自分を追いかけてきてくれる、自分と同じ道を邁進してくれると疑いもせずに信じ抜いていた彼女を裏切る形で。
横も後ろも顧みず、ただひたすらに自分の望むものを追い続けた少女は、顧みないがゆえにレンヤのしでかしてしまったことなど、気にもしていなかったというのに。
ただ一緒に走ってくれていたことだけが、孤高を行く自分の生きざまに寄り添ってくれていただけで嬉しかったというのに。

常に上を向き、何一つ一顧だにせず、他の誰にもワカラナイ理由に突き動かされて、闘争に闘争を重ねて神へと至ろうとする少女沙良瑞貴。
これは自分自身から逃げ続けた逃亡者であるレンヤと、周囲の期待に敗北し続けた少女すまるが、仮初の師と弟子となり、お互いを導き高め合い、自分の中に凝った澱と向き合い、絶対勝者である瑞貴と胸を張って正対するまでの物語である。
ゆえに、この物語の主人公はレンヤであり、すまるである。もう一人のヒロインである瑞貴は、行ってしまえば向き合うべきトラウマであり理不尽なほどの壁であり、捉えるべき背中であった。それは目標であり到達点であり、ラスボスであったわけだが、むしろ私は彼女の方にこそ心惹かれてしまった。
同志であり半身であった男の挫折と裏切り。それが彼女に与えた絶望は、元々孤高だった彼女にどれほど孤独を与えてしまったのだろう。一層に闘いにのめり込みながら、隣に誰もいない独りだけの世界は、どれほど彼女に寂しさを浴びせていたのだろう。
すべてをかなぐり捨て、神への道へと邁進する彼女が、ただ一つ、レンヤが作ってくれたぬいぐるみだけを肌身離さず持ち歩き、大切に傍に置いていたのはなぜなのだろうと考えると、それは身代わりだったのだとしか思えなくなる。自分を裏切り、立ち止まってしまった一番大切だった男の身代わりだと。それは、動けなくなった彼に手をさしのべることもせず、一緒に立ち止まって待つことも出来ずにひたすらに前に進むしか生きられない自分への嘲弄であり、もう一度戻ってきてくれると信じる心を押し隠した淡い縁、捨てられなかった想い、というやつだ。
そう思うと、無骨で不器用で理不尽でしか無い彼女のことが、無性にカワイイとしか思えなくなってくる。
世は、すまるをヒロインとして扱うのだろうけれど、たとえ周りはどうあれ私は瑞貴を崇め応援したいと思う。
そんな私は幼馴染スト♪