月見月理解の探偵殺人 2 (GA文庫)

【月見月理解の探偵殺人 2】  明月千里/mebae GA文庫

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これって、殺人ゲームを主体として捉える作品だとしたら、構成が大胆なんですよね。なにしろ、前半はまるまる新キャラクター・イスカとの交流に当てられるんだから。
最近のこのタイプの話となると、電撃の土橋さん御影さんあたりが手がけているけれど、だいたいが巻の冒頭から登場人物たちをゲームに放り込み、日常パートは最小限に留めているのを思うと、このシリーズ、あくまで殺人ゲームは場面の一つと捉えた方がいいのかもしれない。
今回はルールがややこしかったので、最初から理解するのは放棄。と言っても、自分の場合はこの類の話の場合は大概、ルールを掌握しないまま読むのでややこしいも複雑もあったものじゃないのですが、今回は色々と力任せに押し切った感があるんですよね。ただ、それが意図的である気もしないでもない。
結局のところ、犯人のやり口にしても、理解とイスカの能力にしても、ルールを根底から無視した反則紛いのシロモノであり、最終的に理解が犯人を炙り出した方法からして、ルール破りの反則だったわけです。
それが別に悪いとも思わないのですけどね。所詮、ここで定められたルールなどというものは、犯人が勝手に押し付けてきた強制の代物にすぎず、それを逸脱したからと言って文句を言われる筋合いはない。まあ、大概の殺人ゲームはルール違反に対して逃れられない罰則があるからこそ、嫌々ながら参加者はルールに従わざるを得無いのですが、そこに抜け道を見出せたのなら生き残るためにルールを破るのは別に悪いこっちゃない。
ただ、殺人ゲームが主体となる作品なら、反則による終結というのはそれこそ読者に対する約束破りになってしまうんですよね。
その辺、この作品をどう捉えるかで感想は変わってくるんじゃないのかなあ。

この作品で一番興味深いのはやっぱり主人公、となるんでしょうか。正直、ゲームプレイ中は決して目立ってはいないんですけどね。というか一巻でもそうだったんだが、こいつって本編のあいだ中は息を潜めてるんですよね。彼が真価を発揮するのは、いつもエピローグ。
いや、真価を発揮すると言っても賢しらに答え合わせをしたり、隠していたキバを剥くような派手な真似をするわけじゃない。勝ち負けで言ったら、やや負け気味に負債を背負っていたりもする。でも、こいつって最小限の負担を追うだけで、本来ならば危険すぎて自分を含めて周りごと破滅しかねないような鬼札を、交渉によってちゃっかり味方として懐に入れちゃってるんですよね。
勿論、味方と言っても都合のイイように仕えるような便利な札じゃないんだけれど、理解にしても今回の彼女にしても、作中で言うところの探偵殺人ゲームの狂気の殺人包丁になりえて何らおかしくないような怪物なんですよね。それが敵に回らず、ある程度融通をきかしてくれる、こちら側の事情に気を配ってくれる、というのは存外大きい事のはず。
特に今回の理解なんか、相変わらず傍若無人ではあったんですが、ゲームの最中なんだかんだとれーくんに配慮してくれてるんですよね。彼のことを考えなかったら、もっと楽なやり方があったはずなのに。
全勝ちはしないけれど、肝心なところは逃さない。いつの間にか、小さな勝利を手にしている。往々にして最終勝者はこういうタイプが残るものなんですよね。作中ではその才知に際立ったものが見えず目立たない事に終始しているだけに、小さいものの確実な成果をものにしているこの主人公は面白いなあと思った次第。

1巻感想