神剣アオイ  2 幼なじみと黒猫メイド (集英社スーパーダッシュ文庫) (神剣アオイシリーズ)

【神剣アオイ 2.幼なじみと黒猫メイド】 八薙玉造/植田亮 スーパーダッシュ文庫

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猫踊りを御存知でしょうか? と、坂兎たばねは誰彼かまわず尋ねたくなった。その日、彼女は飼い猫のクロが踊っているのを目撃した。しかも、その直後クロはメイド姿にその身を変える。彼女の飼い猫は、異世界からの力を取り込み、異形の能力を得たもの、すなわち『賓』だったのだ。
一方、名嘉田幸人はその『賓』と刺し違えるために生まれた『神剣』の少女、アオイとデートをすることになっていた。初めてのデートに幸人は苦労し、アオイは新たに生まれた感情に戸惑う。
少し不思議な日常は、それでも穏やかに過ぎていくように思えたが、『神剣』の使命は、過酷な選択を幸人に迫る!
これ、一巻の感想は書いていませんでしたね。わりとフォーマットな伝奇バトルファンタジーで、特に書きたい事も見当たらなかったというのもあるんですが、あの【鉄球姫エミリー】を書いた人にしては大人しい内容だと拍子抜けした部分もあったんですよね。
なので、今回もあの処構わず身も心も血みどろに引き裂くような牙を収めたフォーマルな内容になるのかなあ、と思いながら読んでたら……ぐああ!! しまった、この作者、ド派手なイメージが強くて隠れガチになっていたけれど、人間関係をグチャグチャの泥沼に叩き落すも上等、というタイプの人でもあったんだ。しかも、今回のこれは後々にじわじわと亀裂が広がっていくタイプの遅延性の神経毒じゃないか。しまったしまった、油断していたら蛇のように舌なめずりしているところに頭から突っ込んでしまった気分だ。
思えばこの人は、元々理想に対する甘く楽観的な姿勢に対して、否定はせずとも恐ろしく冷徹にその甘さが通じない非情で容赦苛責のない現実を突きつけて、希望を踏みにじり、絶望を露呈させ、「おら、どうするよ?」と問いかけてくるタイプの作者だったのを思い出さされた。
この【神剣アオイ】でも、主人公の名嘉田幸人はその甘い理想論の信奉者として、自身の思想に愚直に準じている。その真っ直ぐな姿勢は、確かに一巻で神剣として滅びる運命だったアオイを救い、またこの巻ではクロやたばねを救っているんですよね。その結果は認めなければならない。ただ、結果が良ければすべてよし、と行かないのが現実というもの。たまたま今回うまく行ったからといって、反省もなく同じことを続けていたら破綻はすぐさま襲いかかってくる。
幸人は愚か者ではあるのだけれど、自分が愚かであるという自覚はあるし、自分のやり方が決して上手いものではなかった、それどころか綱渡り的に失敗しなかっただけでむしろ拙く危険で最善とは程遠いやり方だったという事もちゃんと分かっていて、落ち込み悩むだけの聡明さは持っているんですよね。その点はまだ芽があると言えるのかもしれないけれど、でも幸人は自分に悪い部分、いけない部分がある事は理解しているけれども、肝心の何が悪いのか、という所にまでは思考が辿り着けずにいるのである。
それは、彼の鈍感さであり無神経さであり、他人の在り方を自分の想像の範疇でしか規定できない了見の狭さであるわけだ。本来なら、主人公のそういう部分はヒロインたちの妥協や受容、寛大さやフォロー、ご都合主義的な流れによって処理されてしまうものなのだけれど、本来なら人間のそういう他人と分かり合えない部分こそが、人間関係を破綻させてしまうもののはずなんですよね。それをご都合主義に逃げずに冷徹に作用させたケースがこの二巻の顛末に現れている。
テンプレならば、ここは幸人の幼馴染であるたばねが、話の中盤で実際に実行していたようにアオイへの気配りや、気心の知れた幼馴染との以心伝心によって上手くバランスをとり、和やかな方向で人間関係を纏めてくれるはずなのだが、彼女自身がこれまでただの幼馴染という以上の関係を考える事を停止してきた幸人への気持ちに目覚め、飼猫であり賓(まろうど)となったクロとの絆を深めることで、結果的にバランサーとしての役割を放棄してしまったのである。
アオイはというと、生まれてまだ数カ月で人間の感情の機微というものを未だ理解できずにいる純真無垢な幼子であるがゆえに、自分の内から湧き出してくる生々しい感情を制御も理解も出来ずにいる状態。人間という枠に縛られないが故に、常識も平然と逸脱する危険性を内包した彼女が自分の感情を持て余しているのである。まるで火種に放り込まれた爆弾みたいなものだ。

私は、幸人が幾多の主人公くんたちに比べて、それほど鈍感だとは思わないし、彼は彼なりに一生懸命アオイを大切にしようとしているのも分かっている。自分の至らなさを自覚し、苦悩しているのも確かだ。でも、現実として彼はどうしようもなく無神経であり、想像力が欠如している事実は否めない。それが、まさに状況を最悪なものへと転げ落としつつあるんですよね。
つまるところ、幾ら頑張っていようと自覚も努力も、現実の状況を前にしては意味をなさないわけです。
もっとも、今のところはまだ毒が植え込まれた状態であり、亀裂が生じ始めている段階であり、致命的な所には至っていない取り返しのつく所のはずなんですが……でも幸人の問題とされる部分が、他人がどう指摘しようと、自分で直そうとしてもなかなかどうにもならない部分である以上、この後の破綻は避けられないのかもしれないなあ。その根源は若さであり、ある意味一度痛い目を見ない以上なかなか捉えきれないところでもあるわけだし、しっとりとした絶望感がじわーっと広がってくる。
こりゃあ、血を見ずにはいられないか。修羅場確定か。


と、重苦しいところはとてつもなく重苦しいのだけれど、ハチャメチャにコメディしている部分は徹底的にハッチャケてて、これがやたらと面白かったですよ!? 一巻ではその方面でもおとなしかったと言わざるを得ない。たばねの暴力系幼馴染としての傍若無人さは、他の追随を許さない凄まじさ。もう、普段の幸人へのムチャぶりがすごすぎる(爆笑 会話の内容からしてぶっとんでるもんなあ。気心が知れているにも限度があるだろうw
とりあえず斬華さんがドジっ娘というのは大いにアリだ、アリだ!
って、嵯峨先生って、金華さんに養われ、斬華さんに侍られて、スニーカーの娘は滅多に人化しないそうだけど、それでもこの人の生活って、ハーレムだよな、あれw